第82話 神里カナン。−4

「冗談は通じないよ…。それくらいは自分でやってもいいじゃん」

「分かんない…。お兄ちゃんが拭いて…」

「……っ、この恥知らず…」


 自分が言ったくせになんで照れてるんだ…?

 いくらお兄ちゃんだとしても…これはさすがにちょっと…、恥ずかしかった。妹の背中を拭いてあげるのはなんとなくできるけど、前は…拭いてもいいのか…?女の子の体なんて触ったことないからな…。どうしてカナンがそんな話をしたのか…よく分からなかった。このまま放置するのもできないし、どうしたらいいのか考えている俺にカナンが急かしていた。


「拭いて…」

「やっぱり…、妹の体を触るのはダメだと思う…」

「なんで…?血も繋がってないのに?」

「だからできないって…」


 何があっても…、俺にそんなことをするのは無理だった。


「お兄ちゃん…」

「うん?」

「こっち見て…」

「何?」


 俯いていた俺がカナンの方を見た時、何か俺の唇を…カナンの顔がすぐ目の前にいた。抵抗する暇もなく、カナンと唇を重ねてしまう。あっという間に起きてしまったこの状況、俺はぼーっとしてカナンとキスをしていた。


 そのままカナンが俺の体を抱きしめて動けなかった…。何これ…?

 カナンの方から一方的に襲ってきて…、気づいた時はもう床に倒れている二人だった。そして唇の柔らかい感触とカナンの裸が丸見えになって、どうしようもない状況になってしまった…。俺は今、妹と何をしたんだ…?家族と何を…。


「はぁ…、あれ…やっちゃった」


 唇が離れる時の唾液が…、とてもエロく見えていた。


「な、何を…こんなのよくないよ…!」

「何が…?それより…、気持ちよかった…?」

「……知らない、聞くな!」


 耳元で囁くカナンはとても気持ちいい顔をしていた。

 俺はその顔に怯えていて、知らないうちに息まで止めていた。それより一番恥ずかしかったのは、女の子と初めてそんな行為をして、俺のモノがカナンに反応していることだった。カナンの前でどんどん硬くなるような気がした俺が、早くその場から逃げようとしたけど、それに気づいたカナンがすぐ俺のモノを握り締める。


「ねえ…、お兄ちゃん。私のキスに発情したの?」

「いや…してない。してない…!」

「じゃあ…、これ何…?お兄ちゃん、ムラムラしてる…?」

「痛い…、力入れないで…」

「どうしようかな…?お兄ちゃんは…妹をそんな目で見てたの…?」


 とても怖かった…。俺は…妹にどんな感情を抱いてるんだ…?

 これはいけないこと、いけないこと、いけない…ことだ。柊、お前は何をしてるんだ…?裸のカナンにキスをされて、今は俺のモノを握られている。逃げたい…、でもカナンから逃げられない…。こっちを見つめているカナンにどんな抵抗もできなかった俺はじっとして、モノを握り締めるカナンの話を聞いていた。


「まだ拭いてくれなかったよね…?早く拭いて…体冷えちゃうよ?」

「……俺は妹を触りたくない」

「キスして、私に発情したくせに…。ねえ、私のことどう思うの…?」

「妹だよ…。ただの妹…」

「じゃあ…、今日のことは誰にも言わないから…。お兄ちゃんはずっと私のそばにいてくれる?」

「本当…?」

「私とお兄ちゃん、二人の秘密だよ…?誰にも言わない…、二人っきりの秘密」

「うん…」

「じゃあ…、拭いて」


 もう言えることもなかったから、俺はタオルでカナンの体を拭いてあげた。

 目を閉じて、女の子の胸と恥ずかしいところまでちゃんと拭いてあげた。とても恥ずかしくて自分が何をしているのかすら分からなくなるほど、頭がおかしくなっていた。俺にもたれかかって、耳元に口を近づけるカナンはわざとらしく「気持ちいい…」って話していた…。少しエロい声で喘ぐのも含めて、俺を刺激している…。


 何も知らなかった幼い頃の俺は、カナンの話を信じて彼女が言う通りそのそばにくっついていた。部活を辞めて、学校が終わったらすぐ家に帰ってカナンの看病をする。そしてお母さんには、もう俺がカナンのことを看病するから心配しないでって言い放った。


「嬉しい…、お兄ちゃんがそばにいてくれるのが嬉しいよ…」


 学校が終わった時間から夜の8時まで、この家には誰も来ない。

 俺はいつの間にかカナンの操り人形になっていた。


「お兄ちゃん…、この前に触った私の体は気持ちよかった…?」

「そんなこと聞かなくてもいいじゃん…」

「なんで…?触ったから分かるんでしょう?どう?気持ちよかった…?」

「分からない…」

「じゃあ…、また触ってみて…。服脱がして…お兄ちゃん」

「嫌よ…」

「私の話に…嫌って答えたの…?今…」

「ごめん…。そんなつもりじゃ…、でもダメだよ。そんなのよくないから」


 まるで…深淵に落ちるような気がした。

 どれだけ足掻いても、ここからは逃げられなかった…。お父さんもようやく余裕ができて、家庭のために頑張っているから…俺もそんな家のためにカナンのことを看病しないと…、いけないのに…。カナンは俺に何を望んでいるのか、こんないやらしいことはやめたかった…。やりたくない…、もうカナンと関わりたくない…。


「はい。脱がして」

「うん…」


 それでも俺は…またカナンにこんなことをやってあげるしかなかった。


「ううん…、私ね…。お兄ちゃんのこと大好きだよ…。触って、優しく触って…」

「……」

「うん…。そこ、そこ…!気持ちいい…お兄ちゃん…、おに…いちゃ…あぁん」

「……」

「キスして…、お兄ちゃん…」

「……」

「気持ちいいよ…。はぁ…、舐めて…体の隅々まで…お兄ちゃんの感触を残して…」


 声すら出せないほど、君の犬になっていた。

 それから中学二年生になるまで、俺はカナンの性欲を処理する。そして本物の恐怖が俺を待っていたことを…、当時の俺はまだ知らなかった。


 カナンと一緒に過ごす時間が増えれば増えるほど、俺の体にはカナンが残した奴隷の証がどんどん増えていた。キスマークをつけたり、わざと肌を噛んで傷を残したりして、そこからカナンは満足感を得る。


 ずっと…、そんなエロい行為を俺たちは続けていた。

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