第45話 彼氏のことばかり。

 朝から湧き上がるこの気持ちが収まらない…。目が覚めた時に見えるお兄ちゃんの姿が…なんか…、なんか…、恥ずかしいけど、すごくカッコいい…。熱くなる顔が感じられるほど、そばで寝ているお兄ちゃんのことが好きだった。ドキドキする気持ちとともに、ちょっとエッチなこの状況が一線を越えたように見える。


「お兄ちゃん…、体…硬い…」


 抱きしめた時に感じられる上半身の筋肉が好みで少し触っていた。


 こっちを向いて寝ている寝顔も私を抱きしめてくれたことも、夢のような一時だった。彼氏ってすごい…、一緒にいるだけでドキドキする。最初は私のことを思い出せなくてお兄ちゃんに食べられるのかと思っていたけど、昔のように私と一緒に寝てくれた。こうやって見ると、本当に大きくなったよね…。昔は私と同じだったのに…。


「……寝てるうちにチューしてみよっか…」


 見えないところでこんなことをするのが好き、お兄ちゃんの唇も…私のもの…!


「……フフッ」


 私はお兄ちゃんだから一緒に寝たいんだよ…。

 知ってる?幼い頃は毎日お兄ちゃんの家に遊びに行ってたよ…。仲が良くて一緒にゲームしたり漫画を読んだりして、二人っきりの時間を過ごしてたのに…。から、お兄ちゃんは私を捨てたのよ…。一緒にいてくれるって…、好きとか言ったくせに…お兄ちゃんは私を捨てた…捨てた…。そんなお兄ちゃんが憎い…。


 でも、これでいいと思うよ。私は思い出して欲しいけど、今はお兄ちゃんの彼女になったから…昔のことなんか、どうでもいい。今のこの時間が続いてほしい…。


「はくしょ…!」


 やはり下着姿で寝るのは寒い…、お兄ちゃんとくっついた時は暖かったのに。

 まだ…時間あるからもうちょっとだけお兄ちゃんとくっつきたい…。そういえば…、私もキスとか、上手くなりたいのに…それが難しくていつも獣みたいなキスをするお兄ちゃんにリードされている。嫌じゃないけど、たまには私もお兄ちゃんを襲ってみたいから…。


「……あれ?膝に何か触れてる…」


 寝る時、お兄ちゃんの体に足を乗せるのが好き…、大きい抱き枕みたいですごく気持ちいい。いつも重いと言うけど、もう癖になってしまった私に気づいて今は許してくれるんだ…。それより、膝に触れてるこれは…もしかして…!も、もしかして…!


 お兄ちゃんの…お兄ちゃんのモノなの…?


「……はっ…」


 へ、変な声を出しちゃった…。

 ま、まだ寝てるから…、それ前に彼氏だから…ちょっとだけ見てもいいよね…?


 女の子の好奇心を刺激する感触に、茜の顔と耳が赤くなる。


「……うう」


 やっぱりダメ…、昨日そう言ってたから…こんなことをやっちゃうと変態になるかもしれない。私は…健全に、でも健全とは距離がありそうな格好してるよね…。私。じっとしてお兄ちゃんのことを見つめると、なんか私たち夫婦みたい…!新婚って感じ…!


「へへへ…」

「朝から何がそんなに嬉しいのかな…?」

「えっ…!起きた!」

「おはよう、茜…」

「おはよう!柊くん…!」


 起きてたの…?今起きたの…?


「学校…、はあ…眠い…」

「まだ時間あるから…ゆっくりしていいよ!」

「いや、なんか今寝たら茜に変なことされるかもしれないから…やめとく」

「わ、私別に何もしていないけど!」

「布団の中で何をしてた…?」


 びくっ。


「何って…、別に何もしていないよ!」

「顔に出てるよ…」

「……バレちゃったの?」

「ウッソだよ…。朝から元気だよね。学校行こう」

「うん!」


 ……


 学校に来てもやっぱりお兄ちゃんのことを忘れないよね…。すごく気持ちいい時間だったから、後で会いに行く…。そして会長もお兄ちゃんと一緒に来ていいって言うからね…。そして生徒会の花岡先輩といろいろ話してみたい、すごく優しい人だったから。楽しみだよ…。


「茜ちゃん、おはよう」

「美穂ちゃんー。おはよう」

「今日、なんかテンション高いね?」

「フフッ、そう?」

「彼氏と何かあった?」

「別に…ちょっと…、抱きしめてくれただけ…」


 全部は言えないから…ちょっとだけ話してあげた。


「へえ…、羨ましい…!」

「そして生徒会室にも行ってみた!そこにすごく優しい先輩がいたの」

「あ!知ってる。確かに花岡先輩だったよね?」

「そそ!」


 いろんな人を知ってなんか嬉しい…、生徒会長もいい人だったし。

 加藤先輩はちょっとエロい人だけど、お兄ちゃんのことをよく考えてくれるから…悪い人じゃない。今の学校生活は楽しいかも…、早く休み時間になって欲しい…。


「あの、雨宮」


 授業が終わってからすぐ教室を出ようとしたけど、ある男が私に声をかけた。


「うん?」

「今、忙しい?」

「あ、うん。そうだけど?」

「もしかして、神里先輩に会いに行くのか…?」

「へえ…、知ってるんだ」

「あの人マジやばいって…、なんで雨宮があんな人と付き合うんだ…?それは嘘じゃなかったのか…?」

「嘘なんかじゃないよ?付き合ってるけど、問題ある…?」

「今、あの先輩やばいって…三年生に呼び出されたんだよ。加藤先輩と一緒に」

「え…?」


 お兄ちゃんと加藤先輩が三年の先輩たちに…?そんな…、まだ私にL○NE来てないのに、何かあったらお兄ちゃんが必ずL○NE送るって約束したじゃん…。


「どこ…?柊くんどこ?」

「多分、屋上じゃないのかと思うけど…」


 変な予感がして、私はすぐ屋上に向かった。


「茜ちゃん…!待って私も行くから」

「来なくていいよ。美穂ちゃん…」

「でも、心配になるから…」

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