第34話 女の子とデートって。−3
「何…?恥ずかしいから…小さい声で頼む。L○NEでもいいから…」
「じゃあ…、柊くん!パープルとホワイトとレッドとヌード、四つの色の中でどっちが好き?」
「……」
今、試着室の中から俺に聞くのか…?色、色を聞いたのは多分…、下着の色だろう…。普通のデートはこんなもんか、後輩の下着色まで選んであげる優しい先輩にならないといけない。てか、下着の色なんか考えたこともないけど…?
「ねえー。聞いてる?」
「うん、ここにいる。それより、雨宮の好きなやつでいいんじゃない?」
「ううん…、柊くんはどっちが好み?」
言い回したけど、雨宮には通じなかった。
試着室の中にいるけど…カーテン越しに見えるそのシルエットから目を逸らしてしまう。こっちを向いて、何も着ていないそのエロいシルエットが四つの下着を持っていた。朝の雨宮とは全然違うけどな…、これはもしかして宣戦布告か、それなのか。
「……ヌ、ヌード…かな?」
「フン…、柊くんはヌードが好きなんだ…」
「二度言うな…」
「ねえ、柊くん。私今ヌードの下着はいてる…見てみない?」
「……俺、出るぞ」
「ご、ごめん…!冗談だよ…!今すぐ出るから待ってて…」
そして赤くなったこの顔をどうにかするために、席に戻ってきた。
結局俺も男ってことか、雨宮をそんな目で見てはいけないのに…。その一瞬、目に入ってくる雨宮のボディーラインを忘れられなかった。今までチビだと思ってたけど、雨宮ってけっこう大きかったんだ…。とか変なことを思い出しながら、雨宮が出るまで待っていた。
「ごめん…!柊くん!」
なんでそんなに買ったんだ…。
しかも、ヌードばかりじゃん…。
「お会計お願いします…!」
「はいー」
いよいよここから出られるんだ…。つらかった…、ここから他の女性に見られるのも…、雨宮に恥ずかしいことを言われるのも…、今この会計が終わったらすぐ出られるんだ…。さっさとこんな店から逃げたい…!
「あー、お客様!今週はですね。3万円分の商品を購入したお客様に良いイベントが用意されておりますー。先の決済額は4万1320円なので、いかがでしょうか?」
「イベントですか…?」
「はい!しかも、ちょうどいいタイミングに彼氏も一緒ですね。この紙の中にある下着を一つ、お選びください!」
彼氏か…。
「は、はい!」
店員さんが見せてくれた紙には「夏のカップル」って書いていて、そこには男女二人が下着をはいている写真が載せていた。ちょっと嫌な予感がするけど、もしかしてこのイベントって…。
「柊くん、何が好み?」
「好みなんてないから…、適当にいいよ…」
「へえ…、だってこれペア下着だもん…」
雨宮はいい子で、雨宮はいい子で…、いけない…。頭が壊れてしまう…。
「柊くん?」
照れてる柊の姿を見て微笑む店員が、向こうの店員に合図を送る。
「俺、2番…2番でいいから…!そ、外で待つ…!」
と、言ってからすぐその店から逃げてしまった。
時には臆病で、時には大胆で…雨宮のことをよく分からなくなってきた。まさか、俺がそんなことに照れるなんて…、下着なら美香さんがはいているのを飽きるほど見たはずなのに、人が違うとまた一から慣れないといけないのか…?
「フフフッ、彼氏可愛いですね?」
「あ…、はい!へへ…可愛いですよね…」
柊がいなくなった店内で話している茜と店員。
「あ、それよりサイズを教えてくれなかったので…電話でも…?」
「大丈夫です!サイズなら私が知っていますから…!これでお願いします!」
「あら…、知っていましたか…。仲がいいカップルですね。先からずっとうちの店員がお客様の彼氏から目を離さなかったので困っていました…」
「……柊くんはカッコいいですよね?へへ」
「はい!これで!ありがとうございました!」
「ありがとうございます!」
そう言ってから笑みを浮かべる茜が、外で待っていた柊のそばに座る。
「お待たせー!」
「いっぱい買ったよな…」
「うん!せっかく来たからね?いっぱい買わないともったいないじゃん!こんなチャンス滅多にないから…」
「また一緒に行こう…、チャンスなんて…。行きたいって言えば俺も付き合うから、いつでも言え」
「……ほ、本当に?」
「うん」
「やったー!ねね、柊くん。一緒にご飯食べよう!私、美味しいもの食べたい!」
「それは確かに地下にあったっけ?」
「うん!」
「よっし、行こうか!」
「はーい!」
テンションが高い雨宮、やはり心配しなくてもいいことだった。
再び、エスカレーターに乗った俺たちは話しながら地下に向かう。今日は雨宮がゆっくり楽しんで欲しかったから、買った服と下着は俺が持つことにした。そして狭いエスカレーターから触れ合う俺と雨宮の手に、彼女は少し震えている声で俺に聞いた。
「……つ、…繋いでいい?」
「雨宮はそうしたい…?」
こくりと頷く雨宮にこっちから手を握った。
外でこうするのが恥ずかしかったのか、遠いところを眺めている雨宮の耳が赤くなっていた。
「恥ずかしい?雨宮…?」
「……」
俺は照れている雨宮と指を絡ませて、ゆっくり地下まで歩いて行く。
すると、そばから小さい声で話す雨宮。
「……好き」
「うん…、そっか」
「好き…」
茜にはなんとも言えないほど幸せな時間だった。
「あれ?神里先輩と雨宮?」
「え?ウッソ、ハニーモールに二人がいるの?どこどこ?」
「あっち!しゃ、写真を撮らないと!」
「早く早く!」
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