第32話 女の子とデートって。
俺はよく分からないけど、年頃の女の子ってこんなに積極的なのか…?
前にもこんなことあったよな。さりげなく「一緒に寝よう」って言う雨宮に俺が何気なく「そうしよう」って答えて、二人きりの夜を過ごした日が。雨宮のことなら特に意識していないからいいと思うけど、女の子ってそばに男がいると不安を感じるんじゃないのかに対して考えてしまう。森岡のこともあったし、なぜ俺のそばで寝ようとするのか分からない。
「……もう…ケーキ食べられません…」
朝6時1分、目が覚めたら寝言を言っている雨宮が俺の袖を掴んでいた。
季節はもはや夏、どんどん暑くなるこの天気に俺は一人で汗をかいていた。それより冷房をつけてなかったのか、そばにいる雨宮も暑そうに見えたからかけていた布団を床に落とす。
「……あれ?パジャマのズボン?」
布団とともに床に置いているパジャマのズボンを見て、俺はびくっとしてしまう。もしかしてこれは雨宮に貸してあげたパジャマの…ズボンじゃないのかって、後ろにいる雨宮に視線を移した。すると、パジャマのボタンを半分くらい外して生足が丸見えになっている雨宮がそばで寝ていた。やはり、暑かったのか…なんかごめんね。
「雨宮、朝だよ」
「……いちご、チーズ…柊くん、へへへへ…美味しい」
「起きて?」
「……あ、朝?」
ぼーっとしてベッドに座る雨宮があくびをした。両腕を伸ばしてこっちを見つめるこの子と今日デートをするんだ…。てか、座ったまま寝ちゃったけど…?もしかして昨日、寝られなかったのか…?夜の11時に眠った姿を確認したのに…、夢から覚めない雨宮がいまだにうとうとしていた。
「……」
ちょっとからかってみようか…?
雨宮の後ろに座って、彼女の耳に小さい声で囁く。
「朝から、服を脱いで何がしたいんですか…?」
「……ひっ…!」
ぼーっとしていた雨宮が俺の声を聞いてから振り向く。そして大きいパジャマから見られる彼女の下着と照れてる顔がとても可愛くてさりげなく頭を撫でてあげた。
「起きた?おはよう、雨宮」
「……」
俺の顔を見てから自分の格好を見る雨宮が、顔を赤めて何かを考えるようにじっとしている。ちょっとやり過ぎたかな…、パンツが見えないようにパジャマを引っ張る雨宮が慌てていた。この子はやっぱりよく分からないな…。それでも俺にくっつくなんて…普通は逆だと思うけど、雨宮は俺の体を抱きしめていた。
「なんで…私半裸になってる…?柊くんが脱がしたの…?」
力が入らない指で俺の背中をつねる雨宮が小さい声で話した。
「そんなわけないだろう?部屋が暑かったから、寝てるうちに脱いだかも?」
「……そうだったような、そうでもないような…」
「それより暑いから、離れてくれない…?」
「……変態」
「え…、何もやってないけど…?」
「あー!知らない、先輩は変態です!」
「……」
それで俺は朝から雨宮にめちゃくちゃ怒られてから家を出た。
何もやってないのに、後輩に怒られる先輩になってしまった。そう言ってから「フンフンー」と鼻歌を歌いながら歩く雨宮に、次は床に投げ出してやるって考えてしまう。そしてなんか少しずつ…、雨宮が俺の中に入ってくるような気がして…、それもそれなりに警戒しないといけないことだった。
「柊くんとハニーモール!楽しみ!」
「そんなに行きたかった?でも、男とのショッピングより友達の方がもっと楽しいと思うけどね…?」
「私は柊くんがそばにいるだけで楽しいよ!」
「へえ…、雨宮は俺の前でよくそんな顔をしてる…」
「どんな顔?」
「可愛い顔って言うか…、雨宮がよく見せてくれる表情があるよ」
「……見てた…?」
バスの中でこっちを見つめる雨宮に、俺はさりげなく答えてあげた。
「うん。いつもこっちを見てるから…?」
「……やはり先輩はマナーがないんです」
「え…、また言われた…」
「いつも私のことをジロジロ見てるんじゃないですか…!」
「じゃあ…、他の女の子を見てみようか…今日は」
「えー!それは嫌だよ…」
「ウッソ、今日は雨宮と一緒にデートするんだから…そんなことするわけないでしょう?」
「……からからないでください!」
雨宮は確かに可愛い女の子だ。
知っていたけど、どうやら雨宮は俺のことが気に入ったらしい。でも、俺は雨宮のことを美香さんの代わりにしたくなかった。それだけはしたくなかった…。
本当にいい子で俺をよく考えてくれるのもすごく嬉しい、それでも俺は美香さんのことを忘れられなかった。知っている、知っているよ…。馬鹿馬鹿しいけど、はっきり言えない何かが俺と雨宮の間に壁を建てていた。
俺はあなたのことを忘れられますか…?美香さん…。
デートなのに、こんなことを考えるなんて本当俺ってやつはまだまだだな…。
「あっち!ハニーモールだって!」
「うわ…、でかい…」
そんなことは後で考えてもいいから、今日は雨宮と一緒に遊ぼう。
彼女を楽しませるために、頑張るんだ。柊。
「ここから歩いて行こう!ワクワクする!」
「急がなくてもいいよ。今日は時間多いから…」
「柊くん!こっちだよー!」
先に走って行く雨宮が横断歩道の前で手を上げていた。
———私がいなくなっても、お兄ちゃんは私のことを忘れられない…。だって、どんな時にもお兄ちゃんは私を思い出すからね…?でしょう…?私はお兄ちゃんのことをずっと見ているから…。
……無視して、今日は明るい姿で…雨宮とデートするんだ。
「早く!柊くん…!」
「分かった。今行くから…!」
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