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「デートで何するかなんて二人で話し合えてないのかよ。」


弓弦が言う。


「話し合おうとすると、好きな所でいいよって言われる。」


咲真は困ったように言った。

そういう事なのね……。

好きな所でいいよって言われるって、好きな所が思いつかないと地獄だなって思ってしまうけど。


「弓弦は、デートって何するんだよ?」


「理想を言えばいいの?」


「うん。」


弓弦の理想って何だろう?


「ホテルに行く。」


「え?」


「ラブホ。」


「え?」


「ゲームもあるって書いてあるし、楽しそうじゃん?」


「あぁ……書いてあるね。」


確かに書いてあるのは知ってる。


「でも、お前、ゲームは家ですれば良いだろ?」


「うん。

でもさ、緊張がほぐれそうじゃない?」


「まぁ……それはね?」


「まぁ、行ったら、する事は決まってるよ。」


「……。」


「どうした?」


「いや、そういう事、彼女に聞いた方がいいのかな?」


「え?」


「したいのか、したくないのかって。

いやいや、聞く勇気無いけど。」


「咲真はしたいのか?」


「分からない。

だって、やった事無いから。」


「俺だって、無いよ。」


「でも手も握ってないし。」


「え?

手ぐらい繋いだら?」


「暑いし……。」


「暑くても繋ぎたいって思うけどな、俺は。」


「マジか……。

そこから話すべきか。」


咲真が頭を抱えている。


「こんなんじゃ、キスもいつになるやら。」


「キ、キス!?」


「キスするだろ?」


「いつかは……。」


「した方がいいよ?」


「え?

お前、キスした事あるのかよ?」


「あるよ。」


「え?」


ちょっと待って……。

弓弦、私とキスしたのバラしちゃうの?


「小さい頃ね。」


「誰と?」


「咲ちゃん。」


「え?」


「向こうからされたんだよ。」


「え?」


「あぁ……嬉しくないって気付いた。」


「……。」


「したい人としたら、もう理性ぶっ飛ぶだろうね。」


「え?」


「いや、抑えるか。」


「ん?」


「両思いじゃないと嬉しくないからね。」


「それはそうだろうよ。」


「要するに一方的じゃダメだって事よ?

二人の仲なんだから。」


「そうだよな……。」


「兄貴の置いてった、エッチなDVDなら貸してあげるよ?

何なら、観に来てもいいし。」


「弓弦、お前、沙希の前で言うなよ。

困ってるだろ?」


「俺はそういう事をしたいって思われてもいいから。

だって、高校生だよ?」


「そうだけどさ……。」


冷静な弓弦と挙動不審な咲真。

私は二人の会話をただ聞くしか出来なかった。

でも……ファーストキスが私じゃないって、それがショックなのは何故だろう?




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