なし崩しに会いました


 さて、この話の後、王妃様がクロエさんに、

「悪いけど娘たちを呼んできてくれない?」

 そしてエマさんに、

「出来たら本当の姿を、娘たちに見せてくれないかしら?娘たち、口外はしないわ」


「でも、お若いですから……女の子はおしゃべりが好きで、『ここだけの話』が出かねませんが?」

「大丈夫、本人たちに了承させて、軽い『拘束』魔法をかけているから」


「あの……つかぬことをききますが、『拘束』魔法って、自由を拘束されている方にしか、かけられないかと……」

「エマさんには後出しで悪いけど、娘たちは貴族の娘、国の為に身を差し出すのは当然なのよ、娘たちは奴隷状態も覚悟させて連れてきているの」


「王妃様!」


「エマさん、北方軍が崩壊すれば、ベネットは蹂躙される、敗戦国の状況は、フレイヤさんがよく知っているでしょう」


 ……


 娘さんたち、10歳から13歳ぐらいまで……こんな幼い子供が人身御供を了承している……貴族の教育って、恐ろしいわ……


「王妃様、うちのマリアンヌ、負けませんからね、事これに関しては身分は関係ございません!」

「ジョスリーヌ、分かっているわよ、とにかくエマさんの正妻は8人の娘たちから出します、誰になるかは、文句なしの恋愛戦争よ♪」

「皆さんもわかっているわよね♪」


 残りのやんごとなきご婦人方も頷いておられます。


「とにかく娘たちが来る前に、本来の姿にね、お願い♪」


 やれやれ……『認識偽装』を解除……


「王妃様、皆様、来られました」


「皆さん、こちらの方が本来のエマさん、お願いして魔法を解いていただいたのよ、お綺麗でしょう♪」 

「これから見ることは喋ったらいけないわよ、それからこちらのエマさんに、皆の覚悟をしめしてくれないかしら」


 代表して王族のネレーアさんが、


「エマ様、お国が大変危険な状態で、エマ様にはこれを防ぐことが出来ると、王妃様にお聞きしました」

「その対価は膨大な額と推測できるそうです、いまお国は北に軍を派遣、その戦費を調達するために、国庫は危機的な状況との事です」

「そのため、私たちがエマ様に身を差し出し、国庫への負担を少なくしようと決めました」

「奴隷堕ちも覚悟の上です!処女も差し上げます!」


 大変な決意のようですが、なにか『媚び』が見えるような……悲壮感がないのですね…… 


「どうやら、娘たちはエマさんを気に入ったようです、ネレーアなんて、メラメラとマリアンヌにライバル意識を燃やしていたようだしね」

「一途ですからね、エマさんに首ったけのように見えるわ」


「そうでしょう?ネレーア」

「こんなにも綺麗な方にお仕え出来るなんて、早く大人になりたいです♪」

「抱かれたいの?」


 王妃様、なにをたわけたことを言うのですか!


「勿論です♪生理も始まりましたし♪10歳ですが、良く閨は勉強いたします♪」


 ……


「分かりました、とにかく娘さんたちの『拘束』魔法がステータスに表示されては皆様が困るでしょう?」

「私なら、ステータスに表示されない状態にできます」


「大聖女様のお力なのね……」

「まあ、そういう事です」


「王妃様、娘たちは移転してきた王立女学院の女生徒、寄宿舎に入る予定でしたが、どうでしょう、このシルミ居館に8家のコテージを建てて、そこから通学という事にしては?」

「いいわね♪各家で付き人をつければいい話、ジョスリーヌ・サロンは必ず毎週開く決まり、娘たちには会えますものね♪」


「エマ様、別にジョスリーヌ・サロンが開かれない時でも、肉親に会いに来るのには、ダメとは云わないでしょう?」


 あぁ……これは、図られたのでは……


「プリンセス・ベーカリーが終わった午後なら……」

「そうしてもらえる♪ランチはいらないわ、でもそこの喫茶コーナー、使ってもいいでしょう?セルフと聞いているから、私たちも娘と一緒にお茶ぐらい淹れてみるわ」


「王妃様、その時はこのネレーアが、教えて差し上げます♪」

「お願いね♪」


 この日も皆様はしっかりと温泉にお入りで、温泉グッズとそのオプションをお使いになり、しっかりと増加分だけ、93ランド72セントをお払いになりました。

 

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