お菓子のオマケ
雪音さんと三ケ田さん、そしてミィコ、3人の会話が途切れた――そのタイミングを見計らって、藍里は普段と変わらない様子でそれとなくミィコに声をかける――
「あの、ミコちゃん、明日、お暇? もしよければ、私たちと遊園地に行きませんか?」
私たち? 私たちということは、もしかして……僕も数に入っているのだろうか? それとも、別の人?
「え、アイリ、もちろんです。明日は大丈夫です。嬉しいです」
「よかった! ミコちゃん、さとりくん、私、3人で遊園地に行きましょう! さとりくんも、明日、大丈夫ですよね?」
「あ、うん、大丈夫。一緒に行こう」
やっぱり僕も入っていたようだ。なんとなく、僕は藍里のペースに上手く丸め込まれてしまっているような、そんな印象を抱かないでもない――まさかとは思うけど、愛唯に僕が近づかないため? いや、そんな、まさか……。
「サトリはお菓子のオマケみたいなものですよね。それでも、ありがとうございます」
ミィコは僕のことをお菓子のオマケ扱いしている。
「神子ちゃん、お菓子のオマケは、実は主役みたいなものなのだぞ」
三ケ田さんナイス! とても的を射た表現だ! そうだぞ、ミィコ、お菓子のオマケはお菓子そのものよりも価値があるんだ! 僕は心の中で勝ち誇った。
「そ、そうですね、リッカさん。それならば、サトリはお菓子のオマケについているお菓子です!」
「もう、わけがわからないよ」
僕はミィコの発言に、もうお手上げといった表情を見せながら、ついつい思ったことを呟いてしまっていた。
「では、アイリ、サトリ、明日の予定はメールでお知らせください」
「うん、ミコちゃんに後でメールするね」
「雪音お姉さんも行きたいな~! 遊園地!」
唐突に、雪音さんも“遊園地行きたい”アピールをしてきた。
「あ、雪音さんも一緒に行きますか?」
藍里が雪音さんを誘うと、三ケ田さんがその話に割り込んできた。
「ちょっと、待ってくれ、雪音。実は、明日、協力してほしいことがあるのだ。カルト教団について、貴女の知恵をお借りしたい。それと、教団の信者を一人確保する予定なのだが、その信者が能力者らしい。だから、雪音の能力が必要になると思うのだ」
「え、ちょっと待って、それって、
「ま、まあ、拷問とまではいかないが、我々の聴取に協力して情報を引き出してもらえると助かる。布津さんには私から話を通しておくので……雪音、よろしく頼む」
「ふーん、そう。ま、色々と内情なんかを探ったりもできそうだし、それなら私にとっても好都合よね」
雪音さんは何かを企んでいるようだ。三ケ田さんもそれについてはお見通しなのだろう。
「では、雪音、明日はよろしく頼む」
「かしこまりました~。うん……そんなわけで――遊園地には私も行きたかったけど……藍里ちゃん、ごめんね」
雪音さんは、三ケ田さんに気のない返事をして、藍里には一緒に行けなくなった旨を謝罪していた。残念、雪音さんの遊園地行きは実現することがなかった。
「雪音さん、お手伝い、頑張ってくださいね」
藍里は雪音にそう言って、軽く微笑んだ。
――こうして、僕らは駅まで一緒に行き、そこで、ミィコ、雪音さん、三ケ田さんの3人と別れた。
ホームで電車を待っている間、僕は今日の出来事を振り返ってみる。
今日は、本当に色々なことがあった――
ミィコ、雪音さんとの出会い……これはもう、ずっと前のことのように感じられる。二人とは、ずいぶんと長い付き合いだったような、そんな錯覚を起こす。
海風博士との会話……衝撃的だった。藍里のブレスレットに埋め込まれた宝石が、この宇宙のループを引き起こしている原因、キューブと呼ばれるアーティファクトに組み込まれていたコアだったなんて。そんなものを娘に渡してしまうのだから、海風博士はかなりぶっ飛んでいる。
だけど、考え方を変えてみれば別の解釈もできる。コネクション――と言っていたっけ……僕らの魂を、この現実世界からそっくりそのまま並行世界にコネクションし直す……ような、そんなイメージなのだ。
そう考えると、
――いや、その発想、もしかすると……世界の
だが、たとえ創造神が存在するとしても、
――そうこうしているうちに、ホームに電車が到着する。
僕の憶測なんて何の根拠もない。雪音さんの言うとおり、
あれ、ゴースト世界? あれ? それって、空っぽの並行世界みたいなもの? 僕は頭が混乱した。 考えるだけ無駄な気がする。
あれこれ考えながら、僕は電車に乗る。
この時間は満席で座れない。藍里と隣り合って、目の前のつり革に手を伸ばした。
ふと、マナーモードにしていた僕の携帯電話が、絶え間なく震え続けていることに気が付いた。
愛唯からの電話着信。しかも、ずっと鳴り続けて、しばらくしてから留守番電話サービスに繋がった。
――と思ったら、留守番電話を切られて、また愛唯から着信だ。
それが何回か繰り返された後に、愛唯からのメールを受信した。
『さとりん、なんで電話に出ないの!?』
これが愛唯からのメールの内容だ。間違いなく、愛唯は、怒っている!
僕は慌ててメールを返そうとすると、また愛唯から電話着信だ。
これではメールで返事が出来ない!
藍里が不思議そうに僕のことを見つめている。
「さとりくん、次の駅で、いったん電車を降りましょうか?」
藍里がこちらの様子を察して、僕のことを気遣ってくれた。
「あ、うん、そうしてもらえるとありがたい。ごめん」
そんな藍里に対して、なんだか申し訳ないという気持ちを抱きながら、僕はそう答えた。
次の駅に着くと、僕は急いで下車して、ひっきりなしにかかってくる愛唯からの着信に応答した。
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