聖剣だったのですね!
つまり、ミィコの能力は『エクスカリバー』と同じで、隕石は剣、神隠しはその鞘ということか。つまり、本体は鞘である、と。要するにそういうことなのだろう……多分。
『ミコちゃんの召喚していた隕石は、あの聖剣【エクスカリバー】だったのですね!』
藍里は僕よりもっとひどい解釈をしていた。まあ、藍里だもんな……うんうん。
『え、いえ、藍里ちゃん、違うから! 【エクスカリバー】は単なる例え話だから! ほら、あの剣は鞘に特殊な力があったっていうお話でしょ』
『なるほど! そういうことだったんですね! 隕石は剣、神隠しが盾!』
『藍里ちゃん、盾じゃない! 鞘!』
『そう、鞘! 神隠しは鞘!』
藍里は雪音さんになんとか説明され、ちゃんと理解して、ちゃんと納得した様子?
『つまり、ユキネ、隕石召喚はおまけみたいなもの、だとでも言いたいのですか?』
ミィコは雪音さんの突拍子もない発言に驚きを隠せないでいる。
『おそらく、ね。神隠しを単体で使われたりしたら色々と困るから、扱いにくい隕石召喚もセットになっているのでしょう――っていう憶測。何の根拠もないけど、あり得なくもないでしょう?』
『確かに……ユキネの言う通りなのかもしれません――』
ミィコはしっかりと理解しているようだ。
――考えても見れば、ミィコの能力はあまりにも強力すぎるゆえ、むやみやたらに使うことのできない諸刃の剣。
仮に、これがミィコの能力ではなく、もっと危険な人物がこの能力を持っていたとしたら……? おそらく、人類はあっという間に滅亡の危機を迎えることだろう――適格者……そんな言葉が僕の頭を過った。 僕の考えすぎか?
『ほら、ミィコ、雪音お姉様のおかげでこうして新たな発見もあったわけでしょ? 私と
唐突な、雪音さんの誇らしげな発言……これが、ミィコにとっては逆効果だったようで――
『感謝、ですか? ユキネはそのような情報収集を目的としてミコたちをこの世界に送り込み、無断で能力の解析をしていたというわけですね。ユキネ、最低ですね』
『なるほど……雪音さん、最低ですね』
『そうだったのですね……雪音さん、最低ですね』
ミィコに続いて、僕と藍里は雪音さんにブーイングを飛ばした。
『ちょ、ちょっと待って、それも順を追ってちゃんと説明するつもりだったから! だから、それにも理由があるの!』
雪音さんは、僕らからのブーイングの嵐によって、少々たじろいでいる。
『どんな理由なんですか? ユキネ』
『まず、私たちは、他の能力者たちからの脅威にさらされている、ということを前提として――そのような脅威から身を守るために必要なこと、それは自らの能力を深く知ることだと思うの。だから、
『まあ、確かに、ユキネの言うとおり、サトリの能力には大きな変化がありました、けど……』
ミィコの言うとおりだ。ここでの訓練がなければ、僕は能力の使い方を知らないままだった。
『うん、僕も自分の能力を使いこなせていて驚いた』
僕も、僕のあの能力には正直驚いていた。なんだか、自分が、別人になってしまったような、そんな感覚……。
『でしょ、これは、みんなのためなの!』
雪音さんは勝ち誇った。
『ちょっと、待ってください、ユキネ! 漆黒のドラゴンについて、ミコたちはまだ聞けていません!』
そうだ、漆黒のドラゴンだ。あの異常ともいえる能力……あれはいったい?
『さっき――ええと、君たちにとっては、今日の朝、かな? あの時の会話、覚えてる?』
雪音さんは、僕たちにそう問いかける。
『キャッシュがどうとか……
僕は全容を思い出せないため、断片的に思い出せた部分だけ雪音さんに伝えた。
『そう、サトリちゃん、それ! それこそが答え!』
なるほど、答え! それがどのような答えになっているのか、僕にはさっぱり分からない。
『ユキネ、どういうことですか? それが答えって』
ミィコも当然分からないらしい。
『いい? この世界、
雪音さんの解説によると、この世界はループする前の世界からなんらかのデータを取り込んで、それを僕たちに気付かせないようにこの世界で経験させることで、ループを阻止するヒントを無意識のうちに得られる、ということなのだろう。
だが、待て! その直後に雪音さんが愛唯の名を出している。どういうことだ?
『雪音さん、卯月さんについて、何か特別な情報をお持ちなのですか?』
藍里が僕よりも先に、愛唯のことを雪音さんに尋ねた。
『う、うん、愛唯ちゃんとは昨日、ちょっとだけ挨拶しただけでそんなには知らないの。ごめんなさいね。それなのに、私――』
雪音さんは
雪音さんのそれは、メメント・デブリとはまた別物なのだろうか? 僕のように、何かがきっかけとなって、記憶の片隅に眠っているメメント・デブリが呼び覚まされた、とかではないのだろうか?
いずれにしても、こうして僕らは度重なる世界のループを経験しながら、少しずつ正解に近づいてきた――それは間違いないのだろう。
『雪音さんも……そうですね。あれはループ前の卯月さん――なるほど、あのドラゴン、卯月さんのクローンだったとしたら、納得です』
『え、藍里? それってどういう――』
僕は、藍里がとても意味深な発言をしていたことに驚いてしまった。
『いえ、“アンリ&マユ“繋がりであれば、ループ前に雪音さんと卯月さんに何らかの接点があったとしても不思議ではない、ということですよね』
『そうですね、アイリ』
そう、なのだろうか? 藍里はやっぱり、僕と同じように、藍里にもメメント・デブリによる、はっきりとした記憶が残っている可能性がある。
であれば、藍里にはなんらかの目的があって僕と行動を共にしている? ――考えればすぎだろうか? 単純に、世界がループし続ける現象を、藍里も阻止するために行動している、と考えればそれも納得のいく話だ……。
――なんであれ、僕は、藍里に疑いの眼差しを向けるようなことをしたくない。
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