第24話 黄鱗きいろ
「はぁ………」
クソデカためいきをついたのは喪符松さんでした。
「そういうことだったのね。だったら私も話すわ。どうせ私がしたことなんて犯罪でもなんでもないんだもの」
やれやれと喪符松さんは首を横に振りました。なんでそんなに偉そうなんですか。この温厚な蜂蜜ちゃんでも苛立つ状況ですからね。鼻に指を突っ込んで口まで貫通させてあげましょうか?
「鼻と口は元々繋がってますよ……?」
「キューティ蜂蜜ビンタ」
「みぎゃーーーー!」
どうやら呪詛として口にしていたらしく、魚囃子さんがツッコミを入れてきました。
軽く小突いたら黙ってくれたので、素直な方ですね。よしよし。
「で? あなたは何をしたって言うんですか、喪符松さん」
「簡単なことよ。私は、バラバラ死体をあちこちに置いただけ」
「はあ、なんでそんなことを……」
「理由はそうね……犯人をあぶり出すためかしら」
急に黒幕のような雰囲気を醸してきましたね。
むかつくのでこの人に全ての責任を押しつけて帰ってもいいでしょうか。
「実はあなたたちが来る前にもう一人、このペンションにはお客さんが来ててね」
「初耳ですが!?」
「言ってないもの」
しれっと喪符松さんは言います。やっぱりこの人のせいにしたろかな……。
でもああ、なるほど。台帳の筆跡はこのせいですか。最初に来たお客を隠すためにオーナーか喪符松さんがあとでまとめて書き直したのでしょう。
「で、そのお客様は今はどこに?」
「殺されたわ。オーナーに」
「は?」
「証拠はないのだけどね。オーナーは一人で泊まりに来た客を殺しては食べる食人鬼だったの」
「へ、へえ……」
「このペンションにはあちこちにホウ酸団子があったでしょ。あれ、きっと隠している死体にネズミが寄ってこないように仕掛けていたんだと思うの」
「そう……」
「だから私は死体の隠し場所と思われるホウ酸団子の仕掛けられた場所に死体を置いて回ったのよ。そうすれば、オーナーを殺した犯人には意図が伝わると思ってね」
急展開すぎて頭がついていきません。
ですが、邪気さんの馬鹿っぷりよりはよっぽど理が通っているように見えるのが不思議ですね。不思議なのはこいつらの頭ですね。クソが。
「ぼ、僕も告白します!」
それまで縮こまっていた魚囃子さんがびしっと手を挙げてきました。
「なんですか。くだらない告白ならしばき倒しますよ」
「ぴぃ……」
しおしおと魚囃子さんは萎れていきました。
「実は……死体をひとつ多く拾ってきたのは僕なんです」
「はあ。一応聞きますが、理由は?」
「それは……最初に死体の腕を見つけた場所がその……どう考えてもご主人たまが疑われる場所で……つい……」
「……ご主人たま?」
「あっ、ちが、今のはなし! なしで!」
ばたばたと大慌てでごまかしながら魚囃子さんは私から距離を取りました。ちっ、射程範囲外か。
しかしこれで全員の秘密があばかれたことになります。
じゃあオーナーを殺したのは一体――?
その時、背後の至近距離から馬鹿の声がしました。
「あのねー。僕が殺したの!」
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