第12話 黄鱗きいろ
いやいやいやまさかぁ~。
そんなバカがそう何人もいてたまるかってんです。こちらはモキョでバカは手一杯なんですからね。
しかしその可能性が確かにあるのも事実。
私は容疑者の皆さんを見据えました。
「もう一度整理しましょう。まず、音猫さんの首が発見されたのは一日目の夜のことです」
「ええ。私が発見したわ」
「その後、私たちはこの大広間に集まり、音猫さんの体部分を探そうということになりました」
その時はまさかここまで小分けにされているとは思ってもみなかったわけですが……。
というか。というかですよ。
「私、喪符松さんにはここで頭部を見張っててほしいと言いませんでしたっけ?」
「言われたわね」
「どうしてずっと見張ってなかったんですか?」
「なんでってトイレに行きたかったからだけど?」
一切悪びれずに喪符松さんが言います。頭痛がしてきました。
「捜査とトイレどっちが大切なんですか……」
「トイレに決まってるじゃない。人体には我慢の限界があるのよ」
「それはそうでしょうけど」
「何よ。私にここで漏らせばよかったっていうの!?」
「……そのほうがマシだったのでは?」
げふんげふん。
見えかけた本音を飲み込んで私は話を続けます。
「その後、バラバラになった音猫さんを持ち寄ってきたわけですが……順番は最初に邪気さんと等々等期さん、トイレから戻ってきた喪符松さん、私とモキョ先生、魚囃子さんでしたね」
全員、異論はないようでした。
「そうして嵐で外に出られないまま一日を過ごした後、二日目の今日、深夜にモキョ先生が死体で発見されました」
現在時刻は深夜の零時過ぎ。
先ほどモキョ先生は不幸な死を迎えたので、次の蘇生は六時間後。
すなわち私は明日の早朝六時までにはすべてを解決してモキョ先生の死体とともにここから逃げなければならないのです。
さて、これからどうするか。
現状を整理してみましたが、喪符松さんが馬鹿だったという収穫しかありませんでしたね。収穫か?
私はいくつかのクーラーボックスで冷やしてある音猫さんの死体に歩み寄りました。
何か有益な手掛かりはないでしょうか……このままいくと全滅ルートまっしぐらなのですが……。
クーラーボックスを開け、死体の右腕をつかみ上げます。
そしてそれを矯めつ眇めつするうちに、私はあることに気が付きました。
「これは……」
「どうしたんですかハニーさん」
「そろそろぶちのめしますよ。……この腕、しっかりと血抜きが済んでいます」
私はジビエ料理もできるスーパー助手なので詳しいのです。修行でイノシシを解体したこともあるので間違いありません。
つまり――この腕は体内から血が外に流れきった後に切り取られた?
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