第四十八夜『スマートなI-personal computer-』
2022/06/27「炎」「橋の下」「業務用の山田くん」ジャンルは「SF」
本作はSFである。SFであるのだからして、円盤状だか葉巻状の未確認飛行物体に宇宙人が乗っていて、家畜を人知れずバラバラにしたり、或いは人を篝火の如き灯りを使って人知れず連れ去るのである。
つまり、これは一種のミューティレーションやアブダクションにまつわる話だ。こう言うと、キャトルミューティレーションとアブダクションは全く別の物であって混同してはいけないと指摘する人が居るかも知れないが、これはまさしくミューティレーションやアブダクションにまつわる話なのだ。
円盤状の宇宙船から宇宙人らしき存在が二人(便宜上二人とする)降りて来た。宇宙人と言うのはつまりは地球の外の人であって、なるほど外見も地球人と異なり無機質的で宇宙服的だ。背丈は両者共十二フィートあろうかと言う長身で、顔はまるでタコの様、その外見も含めて、見る者の背筋を凍てつかせそうな怪物さすら感じさせる。
深夜の港の暗い倉庫の中で彼ら(これもまた、便宜上彼とする)は世紀の大発見と言わんばかりに興奮していた。倉庫の中ではいかにもSF映画の怪物にしか見えない宇宙人がぐにゃりぐにゃりと騒いでいても、人通りは全く無いと言ってもよく、人と言えば近くの高速道路を貨物車が通る位か。
「素晴らしい演算装置じゃないか、これは! このサイズでこれだけの性能を成すとは!」
「しかもこの演算装置、この星の人間はほぼほぼ全員が持っているらしい。なんと小型化の進んだ星なのだろうか? わざわざこの星へ調査に来た甲斐があると言う物だ」
「我々の星にもこれだけの物はあるが、個人個人が携帯していると言うのは信じられん! 問題点を上げるとすれば、個人が必ずと言っていい程携帯しているのだから、窃盗してもすぐ気づかれそうと言う所か」
「ふむ、どうやらくっついているレンズを通して画像処理を行なう機能もあるようだ。これだけ小さい記憶装置にも関わらず、映像は数十年経っても残る設計と見てとれる」
「しかも小型化しているだけの事はある、不要な情報を勝手に整理したり、必要になった時に取り戻す機能まで備わっているぞ!」
「なるほど信じがたい機能だ。それよりも私は、情報をインストールする度に実質的な性能が上がる事も、単純だが報告するべきだと断言しよう。先述の情報の整理や最適化と併せて小型装置の理想的な機能だと言えよう」
「調査すれば調査する程欲しくなってくるな! さて、これを一つ持ち返ってやろう、基地まで戻れば有機培養で増やす事も可能だろう!」
「どれどれ、まずはこの不要な皮や殻の様な物を外すとするか。」
そう言うと二人の宇宙人は、たまたま倉庫に一人で居た不運なガードマンの手にある携帯端末を叩き落とし、ガードマンの頭部に手を伸ばした。
「誰か助けてくれ! 宇宙人に頭をもがれる!」
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