323.当たり〜ミランダリンダside
「っぶね」
ヘイン様は尻もちをつきながら、元いた場所にいきなり突進してきた白い兎を見やる。
頭に角の生えた一角兎で、もし美女が彼のお尻を蹴っていなければ、あの角で間違いなく刺されていたに違いない。
「ヴァルァ!
ヴァルァ!
ヴァルァ!」
「「「グォン!
グォン!
グォン!」」」
__ヴォン!
__ヴォン!
__ヴォン!
魔獣達の攻撃は尚も続いている。
けれど、とふと疑問が浮かぶ。
どうしてこんなにも最初から攻撃的なの?
こちらから何かしたならわかるけれど、ここは郊外とはいえ、人が行き来する場所。
あのバシリクスもそうだし、種族の違う複数の魔獣が同時に襲うだなんて、あり得ない。
それに音波狼も兎熊も、1度狙いを定めると、他を全く気にしない集中ぶりに、異常さを感じる。
「やっだー!
兎熊じゃない!」
そんな中、嬉々として叫んだ美女の声で我に返る。
美女は角で刺そうとする兎に、狙いを定められている。
この兎も、もうヘイン様には目もくれない。
けれど突進する兎を余裕の表情でヒラリ、ヒラリと躱しつつ、スカートのスリットの中に手をやる。
チラリと現れる細く、引き締まった足が、大人の色気を醸し出しているわ。
そこから取り出した短刀を鞘から引き抜くと、兎熊の方へと素早く投げた。
「ヴァルァ?!」
兎熊の長い耳にサクッと刺さる。
「ヴルルル……ヴァルァ!
ヴァルァ!
ヴァルァ!」
「……いや、私ではないだろう」
何を思ったのか、公子を見て
しかし流石四公の公子。
相変わらず何かを思案しているけれど、余裕で防いでつっこんでいるわ。
「チッ、コレじゃなかったか」
そんな舌打ちする美女に、内心、だったらどれ、とつっこんでしまったのは秘密。
「ちょっと、いつまで転がってるのよ!」
「うわ?!」
跳んできた兎の角を鷲掴みにした美女は、ヘイン様に……兎を投げた?!
驚いたヘイン様だけれど、魔法で水球を出して兎をキャッチ。
そのまま、その中に沈める。
その中で苦しそうにもがくのは可哀想だけれど、襲われたのは彼の方だもの。
「ほら、さっさと囮になんなさい!」
「ゲッ?!
マジかよ?!
クソッ」
美女に捲し立てられ、悪態を吐きつつも、慌てて立ち上がる。
そんな、危ないじゃない、なんて、これまた内心で美女を批難。
「まて、下手な攻撃をするな!」
すると、何かを考えていたような素振りだった公子がハッとした顔になる。
やっぱり何かを考えていたのね。
「肉を損ねる!」
……ん?
でも、え、肉?!
何を言ってるの?!
でもあの魔獣の肉は硬いし美味しくないって……。
「あら、わかってるじゃない。
ほら、さっさと注意そらしなさいよ!」
「ひでぇ?!」
せっかく立ち上がったヘイン様のお尻が、また美女に蹴られた。
でもその絵面が……何かの琴線に触れて、そんな自分に内心驚く。
けれどこちらに集中していたはずの音波狼の1体が、ヘイン様の方向へと飛び立とうとした?!
さっきまで、一点集中していたのに?!
結界横の低木が弾け飛んだ時に舞った、土埃を風と土属性の魔法で巻き上げつつ、集めてピンポイントに3対の赤い目を同時に狙う。
良かった!
結界の中からでも、攻撃できるのね!
「「「ギャウ?!」」」
目潰しまではいかないけど、痛みは与えられたみたい。
バサバサと羽を動かし、空中で体をくねらせてのたうつ。
「「「グオオオオン!
グォン!
グォン!
グォン!」」」
__ヴォン!
__ヴォン!
__ヴォン!
けれどそれも少しの間の事。
兎熊と同じく再びこちらの結界への攻撃が激しくなる。
もちろん成り行きに任せているかのように、終始無言でいる王子の張った結界は、揺らがないから、これで良いのよ。
__バシャバシャバシャ!
突然の水音に、公子の方を見やる。
ずぶ濡れの兎熊の近くには、ヘイン様?!
一角兎は……水球の中でビクビクと体を痙攣させていた。
「ヴルルル……」
__ヒュッ。
「ヴァ……」
ヘイン様の方へと向き直り、唸り声を上げて新たな獲物へと襲いかかろうとした、その時……。
__ボン!
短刀が兎熊の頭に刺さり……頭が弾け飛んだ?!
「そうそう、これこれ。
当たりみたいね」
「「…………その短刀……」」
当たりって爆破するの?!
驚いていると公子と王子の、どこか引いたような声が重なった。
※※後書き※※
いつもご覧いただきありがとうございます。
フォロー、レビュー、応援、コメントに励まされています。
ギフトいただいた方には限定記事にて、昨日SSその1を公開しております。
近々その2も公開しますので、ご覧下さい。
庭のジャングルと汚ベランダは何とか片がつきました。
大小のムカデが、放置した植木鉢からウジャウジャ出てきた時は、リアル蠱毒の鉢植えかとツッコむ事態でした。
台風の前に片づいて良かった。
予想通り体力も腰もやられるし、腕が筋肉
が、まだ腕痛いので、同時進行中の小説共々ボチボチ更新しつつ、来週くらいからはまたほぼ毎日投稿に戻ると思いますm(_ _)m
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