318.【夜王〜追い堕とす金の鷹】
「相変わらずのようだな、ロブール公爵夫人」
「……で、殿下が何故……」
お母様の背後には急勾配な坂道。
ここからだとまるで転移魔法でも使ったのかと思う出現に、そこと向こうの女子2人は目を白黒させているわ。
それにしてもレジルス第1王子は、なんだかとっても不機嫌そうね?
凍える声音で顔を顰めていても、キリッと綺麗なお顔で素敵。
後ろを振り返ったお母様は、呆然とした様子で呟きながら、後退り。
「あなたは…そんなにまでしてラビアンジェを……」
「……ミハイル!」
お兄様は何だかほの暗いお顔。
どうしたの?
でもこれって何だか……そう、リアルなヤンデレっぽい!
次の小説にヤンデレモードを搭載しろと、何かが囁く!
そして歪んだお顔でグワッと叫ぶお母様……いいえ、女城主に抜擢よ!
次は西洋の捕虜となって女城主の作り出す監獄に囲われた男が、色々な意味での快楽も、苦難も受け入れて夜王と呼ばれるまでの……。
「ファルタン伯爵令嬢が何故ここにいるのか、それも含めて2人の話を聞こう」
「あ……そんな……」
「何故殿下に?!
それよりも私は娘と話をしているのです!
何の権限をもって、母娘の間に割入り、そう仰るのかしら?!」
第1王子は相変わらずのお顔で、苛立ちを隠そうともしない。
こちらの令嬢がぷるぷる震えて……これはこれで、庇護欲をそそる可愛らしさね。
お母様は、誰であっても強気の姿勢。
さすがよ。
なんて感心しても、この光景に私の関心はインスピレーションと共に、監獄イリュージョンの世界にドハマり!
お母様も、王子も黒髪だもの。
背景は懐かしの大奥風で、女城主は他にもお気に入り達を侍らしている。
そんな設定がいいわ!
そして母親の所業を知った、王子扮する女城主の息子!
息子は捕虜の世話を買って出つつ、逃がすタイミングを見ていた!
そうしている内にも、息子の心にBとLなトキメキ・ズッキュン!
それでも愛しい彼の為に、逃がそうとした時、母親の手に……そう、ここで鞭!
「ヒッ」
あら、興奮してグリップをギュッと握って手元を見たから、また使うと思われたみたい。
未だにへたりこんでいるこの子を、驚かせてしまったわ。
今は身代わりの術を発動させるタイミングじゃないから、安心してちょうだい。
男子2人は……どうしてドン引きしたお顔をしているのかしら?
まあいいわ。
着物が裂かれ、血の滲むような怪我をした息子。
それでも逃げろと健気に説得する姿。
そして裂けた衣からのぞく……血と、汗ばむ素肌。
ここで2人はBとLなフォーリン・ラブ!
鼻息もフンフンと荒く、ニヤニヤが止まらない!
「公女……」
「ラビアンジェ……」
外野が煩いわ。
王子はどことなく諦観した様子だし、お兄様は……何だか頭が痛そう?
偏頭痛ならこめかみを、ハチマキやネクタイなんかで縛ると、一時的に楽になるわ。
前世情報だけれど、今度教えてあげなくちゃ。
でもあと一歩で脳内の一章完結だから、今は駄目。
さあ、ここでヤンデレが開花よ!
愛で胸いっぱいの捕虜は最恐な、いわゆるゾーンてやつに突入!
ご都合主義展開とも言うけれど、そこは気にしない!
破竹の勢いで女城主一派を物理的に撃退!
息子を表向きの城主に据え、あの手この手で自分に縛りつけ、昼は影の帝王、夜は愛する男だけの夜王となる!
__一章・完。
「できたわ!」
興奮し過ぎて、うっかり叫んでしまう。
「「…………そうか」」
「は?!
何がよ?!」
「弾ける笑顔……可愛い」
男子達は無の状態で、諦めたような声ね。
お母様は心底わからないといった様子で、私を睨む。
けれど最後の令嬢の言葉はどういう意味?
潤んだ空色の瞳と目が合うと、また茹でダコ仕様に。
……放っておきましょう。
面倒臭い感じのお母様は、頼りになる男子達が来たんだもの。
私には元々あったやる事に加えて、この情熱を文字に起こす使命があるの。
お任せして、帰っちゃえ。
お互い暫くは大忙しね、きっと。
「それでは皆様ご機嫌よう!
お兄様達、後はよろしくお願いしましてよ!」
「「「「え?!」」」」
言いながら魔法で身体強化をかけ、令嬢が通せんぼうしていた方の道を駆け抜ける。
こういうのは、最初の猛ダッシュが勝負。
後ろから追ってくる金切り声やら、悲鳴やら、静止の声やらは無視!
それとなく高まった個々の魔力を感じても、完全無視!
索敵魔法で誰もいない場所に来て、そのまま転移。
ログハウスもふもふ天国へ、お婆ちゃんは直行よ!
※※後書き※※
いつもご覧いただきありがとうございます。
フォローやレビュー、応援、感想にやる気スイッチ押されてます。
すみません、途中から私の妄想が炸裂してノリノリでBL展開を書いてしまいましたm(_ _)m
いつか【夜王〜追い堕とす金の鷹】とかタイトルつけて書くかもしれない。
さてさて、お知らせ記事やSSで報告したように、書籍化となり7/10発売予定です。
皆様のお陰です。
心よりお礼申し上げます。
書籍化に伴い、タイトルを変更致します。
急に変更すると戸惑われる方もいるかと思うので、鬱陶しいかもしれませんが、1週間程後書きを設けてお知らせを続けてから、今週末に変更したいと思いますので、お付き合い下さいm(_ _)m
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