第37話大物を駆除完了!

 四腕サブアームにビームガン展開、索敵完了、周囲のゾンビ共を駆逐しろ。


 モニターに表示される膨大な赤い点に次々と無慈悲な光線が打ち出される。ゾンビも感染者も一緒に蒸発していく。

 

 住民にとっては銀の悪魔も、がしゃ髑髏も同じ死神なのかもしれない。

 






 西部防壁都市の半径二十キロ圏内に住む人口はおおよそ百万人超。

 一部防壁が崩れたとしても全滅など時間がかかるはず、それなのに――だ。


 がしゃ髑髏の体組織がボトボトと剥がれ落ち、人間の手のような部分から次々と分裂していく。子供のサイズの奇形ゾンビが都市中に広がり、非戦闘民を襲い感染させていく。

 黒い霧が周囲を圧壊させ、極太のビームが人間諸共薙ぎ払う。すでに人口の三分の一の住民が虐殺されている。


 港に停泊されていた軍船に外国籍の軍人や政府関係者が乗り込んでいく。幼子を押し飛ばし踏みつぶしてでも我先にと助かろうとする。出港する船に無理やり民間人がしがみ付くも銃を発砲し射殺していく。

 軍船が岸から離れ安堵したのも束の間空から四本の光が船体を貫く。確実に仕留める為だろう、さらに雨のような光が降り注ぐ。

 

 外国籍の軍人は光雨の空を見つめ天罰を予感した。


「神よ…………死が救いであらんことを」


 船体はグズグズに溶け燃料に引火すると爆発的に燃え上がり沈んでいく、のちの軍船も全て同じ運命を辿ることになる。







 ハザマの試運転をしていると凄い勢いでZPとSPが溜まっていく。ZPは二十万を越え、SPは八千程度だ。防衛行動をとらず民間人を射殺している軍船と逃げる為に待機している連隊規模の軍人がわらわらと逃げ惑っていたので殲滅しておいた。


 なんで俺が、がしゃ髑髏と連携して軍人を殲滅しているのか分からない。助けた民間人はみな防壁に逃げるよう伝えていたのである程度助かるとは思うのだが。


 果敢にも新型兵器であるレールキャノンらしきもので対抗している軍人がいた、もちろん援護射撃をしている。牽制程度だがマシだろう。

 ゾンビの殲滅と避難誘導が終わるまでにハザマの慣熟訓練を終わらせなきゃな。


 索敵範囲拡大、射殺対象、逃亡兵、略奪犯、ゾンビ。各々の判断で殺せ。







 バギーに乗り、娘と嫁を連れ防壁の方へ避難をしている。ゾンビが走って追いかけて来るが後ろを振り向くことすら時間がもったいない。

 油断をして大きな瓦礫をぶつかりバギーが横転する、急いで、娘と嫁をバギーから引きずり出そうとするもゾンビが駆け寄って来る。


「もう、終わりだ……誰か助けてくれ……誰でもいい」


 空から恵みの光筋が降り注ぐ。眼前までに近づいていたゾンビは蒸発し消滅する。


「助かったの……か?」


 空を見上げると銀の神が六腕の指先全てから赤光を地上へ降り注いでいる。


「おとーさん、あれ綺麗だねーありがとー神様」


「ああ。ありがとう神よ。ほら逃げるぞ」


 救われるものもいれば報われないものいる。ひたすら死を与えるだけだ。




 



 避難経路を確保しているのだがゾンビの増加速度に追いつかなくなってきている。そろそろ戦闘の余波を気にしなくてもいいぐらい避難民はいなくなっているようだ。

 

「ハザマ、どうだ身体の具合は? そろそろ行けそうか?」


『……問題ない。父上にいいとこ見せる』


『私ももんだいないですぅ~、指からびーむも楽しかったですよぅ~』

 

「俺が格闘戦、ハザマが機体制御、ミコトは射撃管制を頼む。では行くぞ」


 がしゃ髑髏は分裂して手駒を増やしている。首を切り落としても再生する可能性が高い、心臓部にあると思われる核石の破壊を最優先事項とする。


 ランスモードに武装展開、高高度より最大加速のち、落下の衝撃を攻撃力に転換し背面の甲羅の中心へ向け吶喊とっかん。同化浸食し位置を特定、核石を破壊だ。

 

 ステルスモードで高度を上昇させていく、目標が米粒ほどのサイズに見える。

 ランスモードに移行、破壊力を高める為にすべての腕を纏め自身が一本のランスとなる。

 目標をロックオン、ズームして狙いを定める。


『リアクター最大出力、安定、全ブースター出力問題なし』


『……姿勢制御問題なし、ランスモード状態維持、射突機構展開』


「スリーカウント行け」


『3.2.1.吶喊とっかん!!』


ステルスが解け上空より音速の壁をぶち破り、ソニックブームが巻き起こる。

破裂音を都市中に響かせながら空気の膜をランスが貫く。

数瞬後モニターは甲羅の表面で一杯になり、強高度の外殻にランスが突き刺さる。

高高度からの位置エネルギーと運動エネルギーが合わさり地面に甲羅がめり込み周囲一帯に巨大なクレーターができあがる。砂煙が舞い衝撃が広がっていく。


 激しい雄たけびをがしゃ髑髏が叫ぶも、残念ながらランスは半ば程しか刺さっていない。


「パイルッ!! バンカァアアッ!!」


『ブースターオーバードライブ』


 機体背面に起こる爆発的な勢いでブースター過剰運転させる。その衝撃でがしゃ髑髏の内部までランスが突き刺さる。


「同化浸食、解析急げッ!」


『浸食開始、抵抗強、継続、継続、位置特定』


『副腕制御、ランスモード、射突機構起動、核石の破壊を確認』


 核石の破壊に成功する、一息付こうとするも束の間。


『頭部より核石の反応有り、生命活動継続、核石の吸収に成功、再生遅延効果有り』


『各部位、肉壁の圧縮により破損、離脱推奨』


「離脱するッ! ブースター吹かせッ」


 ランスモードを解除し素早く上昇離脱する。眼窩の底を光らせこちらを狙っている。


「バレルロールで回避、首を狙うぞ」


了解ラジャー


『わかった……』


 ブレイドモードを展開し刀身を太くする、その見た目はギロチンように幅が広く肉厚でできている。刃先には赤い粒子が舞い目標を超高熱で焼き切る。

 

 収束されたビームを紙一重で回避し高速接近する、二つの眼窩では捉え切れていない。すれ違いざまに一閃、抵抗が強くとも強引に――振り抜くッ!!


 通り過ぎた後には頭蓋が宙を舞い。デタラメに眼窩のビームを振りまいている。周囲の建物は壊滅的に崩壊し地獄と化す。


「クッソしつこいッ!」


『目標の胴体、生命反応低下』


『ランスモード展開、トッツキ行けるよ……?』


「任せたッ! 最大加速、目標の眼窩を貫け!」


 再び加速、至近距離迄近づくもビームを浴びる。


『装甲融解、限界までカウント2』


「間に合うッ!」


『――射突』


 長大なランスが眼窩がんかから後頭骨こうとうこつまでを貫く、核石の反応も消失。


『目標沈黙しましたぁ~三人での共同作業おっつかれぇさまでぇす』


『……父上、我、頑張った』


「ああ、二人ともよく頑張った。回収作業に入るぞ」


 目標の残骸を全てハンガーにブチ込む、素材などがハザマの強化につながるからだ。もちろん核石も回収、再生能力と重力要素がある為楽しみだな。



[超大型指定特殊個体ゾンビの討伐を確認]

[おめでとうございやがれ]

[特別報酬が進呈されやがります]

[ハザマボティをお部屋に生成します]

[新しい武装がアンロックされます]

[新しい技能がアンロックされます]



 ログを流し読みしながら、回収作業が終わると残党の掃討に移る。簡単に都市と言ってもその広さは長大だ、ロックオンする度に始末していく、降り注ぐ光雨は避難民にとっては恐怖だろうな。







 ZPのカウントがストップウォッチのようにピコピコ上がっていくのは嬉しいが恐ろしい数になっている、なんだよ四十万オーバーって。ハザマを生成する際にZPSPどちらも空になったハズなのに。


残424723ZP 残13745SP


 略奪犯やレイプ犯などが横行していた為こちらの判断でドンドン殺していった。これで世の中が少しは綺麗になったと思う。

 これで目標の阿岸を蘇生する為のZPとSPが溜まった。姉妹の前で実行することにしよう。



 避難民の大移動が起こっている比較的善良なギルドが周囲を警護し、廃墟に弾っているようだ。少しは阿岸復活の幸せのお裾分けをするか。


 ハザマを大量の避難民の前に着地させる。警戒してるギルド員が銃口を向けて居るも撃っては来ないようだ。ハッチから出ると面倒が起きそうなので。音声を変更し声を掛ける。


『都市内の掃討は終了した信ずるも信じないも各々勝手だ。施しを与える』


 ミコトちゃんに確認したところハザマの機体は俺の身体の延長線扱いできるらしく機体の手をかざし次々と、食料、衣料品、医薬品を出していく。神のような現象に土下座している人もいる。

 頑張っているギルド員にも声を掛ける。


『善行を歩むものよ。汝らはそのまま真っすぐ生きて欲しい。生きる為の武器を与える』


 アサルトライフルにガトリング、バギー、大型トラックなどを出していく。あまりの出来事に停止してしまっている。


『汝らは助け合い、励まし合い、大切なものを守るために戦うといい。ではな』


 ブースターを吹かし離脱する。この後、集団で移動している避難民全てに物資を配っていく。中には機体に取りつこうとしたものは恐怖を味合わせてやったがな。




 



 時間は夕暮れに差し掛かり、拠点の周囲には機体が全て出て警戒してるようだ。すぐさま通信を入れ状況を報告する。


「状況終了、目標殲滅、都市内部のゾンビも掃討が完了している。避難民が大量に出ているが物資を確認できるすべての集団に支援もしてある。一先ずは一息を付いてもいいと思うが、どうかな?」


 通信先から一斉に安堵の息と共にありがとう、と。お疲れ様と言われる。そうだな、確かに疲れたな。

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