第143話 どう言う事!?
「あー話は後だ。とりあえずは、この戦いを終わらすのが先だ」
「「「は?」」」
状況が全く呑み込めず呆けるラーナーたち。
そして、戦いを終わらすと豪語するトールに、更なる混迷が渦巻きうねり出す。
そんな中、トールは上空を見上げ、飛行する何やらに向け手を上げる。
それがファンタジー幻獣種グリフォンなどとは、露知らずの面々は放って置き、ボディアーマーの左胸、
「あー、ウルフリーダーよりイーグル1。仲間の発見に感謝する。他にまともな人種の姿は見られるか?」
『どう致しましてフィー、ウルフリーダー 。みんな変な奴なだけで、他にはいないよフィー』
「オーケイ、イーグル1お疲れさん」
エレは誇らしげに一鳴き。他のグリフォン『イーグル2 セレ』。
ヒッポグリフの『イーグル3 エメ』『イーグル4 ネメ』がそれに呼応。
「なんか、上空のアレらと通信しているみたいっすけど、哨戒機すかね……」
「もう、何をどうツッコんでいいか分かんねーよ……」
一切ボケ無し、ガチに対してはツッコミスキル不発のダフィ。
だが、これはまだ序の口。ツッコめないツッコミどころ満載の幕内取組みはここからが本場所。
「あー、ウルフリーダーよりガルム1‶マリーンワン〟と無事合流。作戦状況はどうだ」
『了解、ウルフリーダー。こちらは特に問題は無く、
現在作戦部隊、陣頭指揮を執っているのは、忍狼の長であり
「マリーンワン? 俺たちのコールサイン…か。 要救助者扱いのようだな……」
「ああ……この状況じゃ正にその通りだが、特殊部隊としては立つ瀬が無いよな……」
そう、しみじみと語るラーナーとブルース。精鋭部隊とは言え、人間には余りにも苛烈な環境。この世界の食物連鎖ピラミッド上では地球人は底辺格付け。
作戦実行能力が
「あー了解。周辺建物被害を極力抑えてもらったが、もう遠慮手加減は無用。
では‶
『『『ワオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』』』
この地下空間、全てを揺るがす大唱和。いずれも相貌に
「滅せ」
静かながらも、重厚な断罪の一言。同時に、両手の
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!
大轟音と共に、全てを解き放つオーラの光彩。幾多の色彩が幾重と織り成す、
それら一体と成った巨大な波動は、逆巻き聳え立つ大波、極彩色の巨龍の
──
百鬼獣が放つ全開放オーラによる咆哮の大津波。
その波動は、全属性エネルギーが混ざり合い融合し調和。倍々相乗効果で極限を超えたエクセルギー波動へと昇華。
それは聖痕を通じ、トールとの思念リンクから齎された神々の恩寵波動波。
【
これに、宿主である
それを植え付けたパラシアも同様。卵弾を放ち胞子を飛ばすも、瞬時に掻き消され、周辺建物と共に儚く塵と化していく。
「「「………」」」
人には決して踏み入る事のできない、この異次元戦場の在り様。人智を超えた壮大壮絶たる事象。その圧巻の光景に茫然自失、唯々絶句する兵士たち。
精鋭部隊と称されたのも今や過去の欠片。許されるのは、唯その目に焼き付けることのみ。
だが、クロエだけは目を爛々と輝かせ、これまで見せなかった満面ワクワクの表情。童心に帰ったかのように興奮気味の様子。
それを横目にリディは「落ち着きなさい」と、諫めている。
理解不能だらけ。混迷続く状況で一つだけ理解した事は、この魔軍を魔王然とし統括総指揮をしているのは──。
トールだ。
何を以ってそう至ったか、経緯過程は推論すら思考及ばず。だが、その一点だけは確実明白。
この地下大空間にて隔絶された町、旧セントラリア中心大通りは、大きく様変わり。遠く先に
ラフレイダーの大群は全て一掃された。
かと思えたが、旅団総力で放った極滅波動波に耐え凌いだ存在が二体。
『烏合の群衆かと思われたが、手練れが紛れ込んでいたでございますな』
「うむ。烏合の衆とて、あれだけの数を成せば、
完全殲滅とはならず、双眸を細め呟く朔夜にそう語るは、
ヒュィイイイイイイイン……
黒煙立ち込める中、何かの回転音が響き渡る。
ヴォン!ヴォン!ヴォン!ヴォン!ヴォン!
特異種の一体が旅団に向け、手に持つ‶何か〟から赤光弾を連射。
『防御壁展開!!』
朔夜の瞬時の号令により、地面から
その赤光弾の威力は艦砲射撃レベル。何層もの岩壁を貫通し爆発を繰り返す。
『
「なんじゃあ、あがー!ぶち強力じゃけぇのう!」
「コノママデハ、壁ガ全テ破壊サレルゾ!」
朔夜の驚きの問いに続くは、
怒涛の爆発が続き、最後の防壁が破壊されたところで、上空からエレたち航空部隊支援による風属性魔術にて、赤光弾の砲撃が止まる。
同時に立ち込める黒煙が取り除かれ、ご挨拶とばかりにその二体が悠々と歩み姿を現した。
「むう……これまで見てきたラフレイダーとは画する、面妖な様相であるな」
「じゃけぇのう……」
二体共に人型だが、タイプが全く異なる様相。
一体は細身の黒い筋肉質、且つ硬質の身体。俊敏そうな獣脚。背中からは幾つもの触手。全身至る所に細い植物の根のような、赤い菌根を纏っている。
別惑星人を思わせる歪な形状の頭部に、赤く光る相貌。口部は
いかつい突起だらけの腕。右手には‶銃器〟のようなものを携えている。
SF的な棍棒のようにも見えるが、それは地球には無い銃兵器。
『パルスバルカン』。その銃身部が、熱せられて赤々と発光。
『これまでの攻撃は、アレからか……。団長とリディ殿が持っていた銃器なるものの様であるが、別物でございますな』
もう一体は、ゴリゴリの赤い筋肉質に黒い鎧型の外殻。背中からは太い触手が複数生えており、その先には鋭い爪や棘がついている。
いかついヘルムを思わせる頭部に白く光る相貌。狂暴な口部から、長く伸びる極太の触手舌がうねうね。戦槌の様な剛腕に鋭利な鉤爪。打撃破壊力と鋭利な斬撃殺傷力、尚且つ鉄壁の防御力も兼ね備えた
WARNING WARNING WARNING WARNING WARNING WARNING
WARNING WARNING WARNING WARNING WARNING WARNING
トールの危機感知が大反応。圧倒的な蹂躙劇を見せていた旅団の前に現れた、想定以上の強力な
「あー、なんかクソヤベーのが出てきたな」
ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ
「あれは、とてもとてもヤバイね」
「確かに、見るからにエグイっすねー!」
「ったく、何なんだここは!? ヤベーのだらけだな!」
ダドリーの鼻危機感知もがっつり反応。シリアスキラートリオも、キリングできずに慌てふためく。
「リディ、弥宵、ここは任せた。ちと、行ってくる。黒鉄行くぞー!」
『『御意!』』
「分かったわ。気を付けて!」
『おとたま、アタシもー!』
『ボクもついていくよー』
のんびり高みの見物のつもりだったが、これには団長トールも動かざるを得ない。
それを察した、カレンとトアも動き出す。
「おい、クレイン!まさかあの化け──」
ドオン!!
『『「「「!!!」」」』』
急展開ここに極まる。トールが黒鉄に
WARNING WARNING WARNING WARNING WARNING WARNING
WARNING WARNING WARNING WARNING WARNING WARNING
ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ
ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ ムズ
「「「ハ=ゴス!!」」」
厄災菌類種 魔王ここに降臨。
圧倒的な
ドオン!!ドオン!!
ハ=ゴスの背後に二つの轟音。この厄災大輪花に狂夢の彩りが加わえらる。
『‶ソ=ドム〟ト‶ゴ=モラ〟カ。コレハ重畳。貴様ラモ目覚メタデアルナ』
「ハッ。お久しゅうございます 我が君よ。主上の再誕より、虚無に漂いし我ら魂が導かれ、再びの流転に至ったのであろうかと」
「永劫たる幾星霜の果てか、こうして再び高貴なる主上の御姿の拝謁。万感万上の想いや極み入るぞ!」
永らくぶりの王の帰還と自らの復活を、恭しく跪き称える二体。共に背中から幾つもの触手。
それは、旅団と対峙していたはずの特異種二体。ここまで一瞬にして跳躍してきたのだ。
パルスバルカンを携えた特異ラフレイダーが『ソ=ドム』。
赤い剛筋肉に黒鎧が『ゴ=モラ』。
その特異たる所以は、体内に潜む寄生蟲パラネスの支配を跳ね除け、完全制御。
宿主たる己が自我を保ち続けている事。どちらも別惑星の超人種。
『なっ!? 奴らめ、団長たちの方へと!!』
「ちぃっ!‶頭〟を狙いに行ったか!!急ぎ、我々も支援に向かおうぞ!!」
標的を大将首狙いに切り替えたのかと、旅団総出でトールたちの方へと動き出す。
『『『グルグルグルグルグルグルグルグルグルグル』』』
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
この厄災三体に、黒鉄、朔夜、カレン、トアも極大オーラを放ち、ガル顔で重く響く唸声で負けじと応じる。周囲一帯の大気と大地が鳴動、草木が大きくざわめく。
そこに、旅団陣営も合流し、ハ=ゴスらを完全包囲。
「ヤバイヤバイヤバイヤバイっすよ、これ!」
「クソっ!どんだけの状況だよ!」
「鼻が、鼻が、鼻がもげるね!」
「おいラーナー!ここは、拙いぞ!」
「ああ、分かっているが落ち着け、お前たち!!」
観戦モードのつもりが、いきなり主戦場最前線ド真ん中に転じて、てんやわんやの面々を尻目に、トールは平然自然体。それはリディ、クロエも同様。
人外三柱は、一切怯むこと無く黄金、翡翠、蒼紫色の高圧縮された三者三様のオーラを纏い、四狼たちと共に臨戦態勢。
『なんやねん、このイキったクソ蟲どもは? いけしゃあしゃあと、ナメ腐っとるんとちゃうんかハゲカス』
そこに、神獣
『GYHAHAHAHAHA!!何トモ
愉快気に、トールに何やら語り掛けるハ=ゴス。
「魔王? 誰がだよ。指揮してんのは間違い無いが、勝手に妙な呼び名を増やすな、クソボケ」
【勇者】の次は真逆存在の【魔王】。これまでの各々の各解釈で呼び名の変容にうんざりのトール。
『ソウ逸ルナ。今ハ、コレ以上貴様ラト事ヲ荒ゲル気モ、利モ無イ。
改メテ正式ニ名乗ロウ。我ガ名ハ‶クトゥラスルス・ハスター・ゴス第八世〟
通称ノ呼バレハ『ハ=ゴス』。互イニ【王】同士。名乗レル気概ガ在ルナラ、貴様モ応ジヨ』
「見掛けによらない」と言う言葉があるが、これは究極とも言えるギャップ差。
問答無用の開戦かと思えたが、ハ=ゴスは、トールを自らと同格‶魔王〟と判断し、対話の姿勢。ソ=ドムとゴ=モラも、王の意向に準じ平伏したまま沈黙している。
「どう云うつもりだよ…まぁいい。俺はこの『幻浪旅団』を取り仕切っている
‶トオル・クガ・クレイン〟。呼び名は『トール』でいい。王のつもりは無い。皆同格の仲間であり‶家族〟だ」
不本意ながらも、礼儀を重んずる地球人として名乗りに応じる。
『皆家族』との言葉に、旅団一同誇らしげに士気が爆上がりするも、不可解極まるハ=ゴスの言動。事情を知らぬ米兵士たちは益々、総じての困惑。
『『『「「「どう言う事!?」」」』』』
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ここまで拝読ありがとうございます<m(__)m>
ラフレイダー特異種ソ=ドムとゴ=モラの画像です。
ぶっちゃけハ=ゴス画像作成時に、偶然できたやつです(;´∀`)
お蔵入りも勿体無いと思い、側近キャラに致しました。
ソ=ドムはこちら↓↓↓
https://kakuyomu.jp/users/mobheishix3/news/16817330668860265075
ゴ=モラはこちら↓↓↓
https://kakuyomu.jp/users/mobheishix3/news/16817330668860271241
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