第115話 ヒーハーサッサー!
その
かの外なる所以の存在が、この地下
この狭間世界への門である‶霧の壁〟。それはゲートカラーグレー カテゴリー
──【
門の先は決して満たされること無き、無窮に飢えと渇きに苛まれる饗宴世界。
その名は──。
──絶界 トラファルガー
奇しくも【ナポレオン戦争】にて1805年最大の海戦場と同名の地。
18世紀 実質の世界大戦【七年戦争】に続く二度目の世界大戦の大海戦場。
ナポレオン戦争の交戦勢力は28か国と2勢力。戦場は欧州大陸に海、世界各地の(中南米、アジア、アフリカ)植民地に広がり、海上交易問題で米英戦争まで勃発している。
尚、日本鎖国期に長崎港イギリス軍艦侵入「フェートン号事件」は、ナポレオン戦争の余波によるものとされる。これらを鑑みれば、瞭然明らかな世界大戦。
一般的に周知される「第二次世界大戦」とは、実質的に‶第四次の世界大戦〟と言えよう。
──Mission3 Final battle stage 【Trafalgar of the abyss】.
War mission 【Operation Red of red 】Final phase.
血肉片、
ドオオオン!!ドオオオン!!ドオオオン!!ドオオオン!!ドオオオオン!!
⦅⦅⦅⦅⦅GURUAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!⦆⦆⦆⦆⦆⦆
未だ鳴りやまぬ戦火の咆哮。殺意に血塗られたキメラたちの怒号、断末魔の悍ましき不協和音。
だが、その不協和音は時の流れと共に刻々と鳴りを減らし、同時に物言わぬ躯の数を増やしていく。
激戦禍の濁流も衰え始め、燦々と照り付けていた業火の斜陽は一方に傾き、緩やかに黄昏時を迎えようとしていた。
「ふむ。反乱軍の勢いも大分落ち込みましたね。敵上空兵力も底をつき、制空権も我らが手中、後はただ
「……しかし」
「 どうかしましたか ヤキソベン。 何か気になる事でも?」
この戦の
これに意気揚々と語り散らすガリ夫であったが、通信担当で補佐官でもあるヤキソベンは訝し気な様子を浮かべる。
「あ、お待ちください。前線から通信が入りました──うむ、それで?……何だと!? それは真か!? どういう事だ!?」
「何か変化がありましたか ヤキソベン?」
「そ……それが……」
一方、旅団たちは象型キメラを下乗。黒煙に紛れてキメラ軍同士の激しい戦の様子をただ静観していた。
すでに陣形は崩壊し、両軍共に乱れに乱れた乱戦模様であるが友軍陣営の劣勢は明らか。
「やはり、この敵陣は主力本隊だけあって、個体レベルの戦力に差が出たようね……」
『敵はまだ1万数千は健在している模様、我ら陣営は約3千位でございますかね……』
『このままでは、某ら陣営キメラの全滅も時間の問題と思われるでござる』
『途中から待機状態で、戦況を暗黙視のご様子でござりまするが、何か新たな策でもご考案では? 団長?」
指揮棒を振るのを止め、徐々に消耗していく戦力に何を思ってか沈黙を続ける
「あー、敵も気づき始めただろうし、そろそろ頃合いか。舞台見物は終わりだ 十分休めただろ?」
『『『『『『!!!!』』』』』』
『おお! それでは、ついに我々真打の出番でございますな!!』
「フフ、それは自分自身に言っているのかしら? 団長殿」
「うっせ!」
作戦フェイズ1中、無傷で最小限の魔力消費にてクリア。以後のフェイズは使役したキメラたちに任せていたお陰で、多少あった疲労も完全回復していた大狼たち。
しかし、トールに於いては大規模スキル発動も含め、常時管制イーグルアイ&各情報処理にて脳が忙しくフル稼働状態。
今日を振り返れば、地下宿泊施設を出発し、ここまでの道程で常時フル管制モードの状態。戦闘に次ぐ戦闘に大除霊と超大忙しの一日。
そこから極めつけの、この
これはさすがに不味いと思い、危機への対応は他に任せ戦闘各システムを一旦機能停止。クールダウンに勤しんでいたと言うわけだ。
リディはその様子を察しながらも、この状況ではどうする事もできず歯がゆく感じていた。
いざとなれば、指揮権を受け継ぐ覚悟もしていたが、そうなれば、士気高揚強化が失われ、戦力低下は確実。だがそれも杞憂に終わったようで一安心。
「おーし、ここから加減は要らねー。思う存分全開で暴れていいぞー!
──全て狩り尽くせ」
待てはお終い、ついにその手綱が外される時が来た。生粋狩人としての狩猟本能と、純粋戦士たる闘争心に烈火の焔がくべられる。
『『『『『『『
「それで、
『ヒーハーサッサー!! ボクにできる事なら任せて! ウルたま団長 1!! 』
「いや、なんか色々と混じってるよ! 落ち着け!あー、 お前にやってもらいたいのは──」
これまで仔狼たちのチームリーダーとして指揮 支援に徹し、作戦内容からその神狼の力を最低限に抑制していたトア。
何やら沖縄民謡の
「何? 反乱首謀ヒゲ太どころか指揮系統、通信、全てのホムンクルス種が唯一体も姿が見えないですと!? それはあり得ない!どういう事ですか!?」
「はぁ、それは私も理解不明の状況でして、指揮系統を排除しキメラたちが独自で暴走していたとしか……。しかし、軍統制の動きも見られましたし、何が何やら皆目見当がつきません」
指揮を執るホムンクルスらを潰し、反乱キメラたちの指揮権を奪い、軍統制の回復を見計らった攻勢であったが、一体も存在が確認ができない。
キメラへの命令はドゥルナス以外では、ホムンクルス種のみに施された鉄壁の管理システム。外部からの干渉は、一切受けつけないプログラムであったはずが。
「………あれらは、どうなりましたか? ヤキソベン」
「は? あれらとは?」
「雑種犬どもの事に決まっているでしょうが!! あれらの処分もですが、その姿は確認できているのでしょうか?」
「い、いえ…。その報告はまだ挙がっていません。直ちに確認を執らせます!!」
ようやくガリ夫は、ウルフ旅団たちを忘却の遥か彼方から引きずり出し、その所在確認をするが。
「この混乱に加え、火の手と黒煙に覆われ視界不良が故に、上空部隊からも確認が執れておりません」
「うむ…ホムンクルス種が全て消失。キメラたちの統制された確固たる反逆の動向。この戦場にいながら行方知れずの当初の標的。このパズルピースを嵌めていけば事の全容が浮彫りになってきましたね……これは雑種どもの仕業か!!」
「な!? そんなバカな……キメラたちの支配権が、あれらに奪われたと言う事ですか!?」
「ええ、それが最も妥当な
ようやく気付くも、時すでに遅し。圧倒的な戦力差は覆され、甚大な被害を被ったドゥルナス軍。
ボン!! ボン!! ボン!! ボン!! ボン!! ボン!! ボン!! ボン!!
「む? これは…上空部隊が!? どこからの砲撃ですか!?」
断続的な鈍い爆砕音。上空キメラ部隊が次々と炸裂し爆ぜ、その血肉片は氷結し
氷属性の魔術砲撃であるのは確かだが、どこから放たれているのか、射線も見えず発現場所の特定ができない。だが、それは直ぐ判明した。
「上からか!! あれは何ですか!?」
遥か上空に雲のように漂う浮遊岩の陰から何かが急降下し、敵飛翔型キメラたちを次々と
──
それは、トアの【メタリカ】による
サイズも倍加し約5m程。実際の戦闘機と比較すれば小型であるもの、機動力は遥かに陵駕する。
因みに、航空自衛隊でも運用されている戦闘機「F15 イーグル」は約20m。数値で見ると結構なサイズで、何気に初代ガンなんちゃら(約18m)よりでかい。
ロックオン!ロックオン!ロックオン!ロックオン!ロックオン!ロックオン!
トア機は主翼下部に幾つもの雪結晶型魔法陣を展開。そこから錐もみ回転で続々と発射する、獄氷
「ええい、何をしていますか!! 上空キメラ全隊にて即刻あれを撃ち墜とすのです!!」
トアを迎撃すべく砲撃魔法陣を向けるが、すでに下方に降下し機体は平行位置。
そこからアフターアイスバーナー点氷噴射、ドォン!!と音速の壁を突き抜ける。
大気を切り裂き主翼からは
その際、
余りの速度にキメラたちは、トアを捉えることはできず翻弄され、無残に散り落ちていく。この戦場の制空権は、新たに君臨する空の統治者に支配されていった。
「ガ…ガリ夫様、あれはいったい何なのでしょうか?まさか、この
「そんな存在などの話は聞いた事がありません!いたとすればヴェルハ──」
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
絶対的であった空の支配権を、成すすべも無く奪い取られる光景に、愕然とするガリ夫とヤキソベンの背後から虚を衝く爆轟音。
「後陣側からだと!? 今度は何ですか!?」
──
それは、大狼たち仔狼らも交え楔型陣形(/\)。火属性と風属性が交互に並び、烈火と烈風を纏った高速縦回転、大車輪の群撃。
風と炎の相乗効果。より熱く、より激しい逆巻く劫火の大波。敵キメラたちとホムンクルスらを背後から燃やし、轢き潰し薙ぎ払っていく。
「犬どもか!! いつの間に本陣営の背後に!?」
「雑種どもが小賢しいですね。この混乱に乗じてこそこそと後陣側へと回り込み、挟み撃ちのつもりですか。防衛隊、本陣背面にギアバリアを──」
『それは させぬ』
そう言い放ったのは、防衛隊である
『──冥遁
ここで大忍術発動。朔夜の身体が闇と化し急速に広がり、巨大な漆黒の半球体ドームとなり異形海亀キメラたちと、それら指揮系統のホムンクルスらを包み込んだ。
「何の魔術ですかこれは!?」
ガリ夫が困惑する中、漆黒ドーム内では、一切光の無い暗黒の中で狼狽えるキメラとホムンクルスたち。
『──ここは私の支配領域。個にして全、全にして個、冥界の深淵世界。この闇に住まう暗黒獣の供物として、その身全てを捧げよ』
⦅⦅⦅⦅⦅⦅GYARUGURUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!⦆⦆⦆⦆⦆⦆
バリバキバリボリグチャバキボキボキバリボリバリボリバリバリボリボリバキボキグチャグチャバリバキバリボリグチャバキボキボキバリバキバリボリグチャバ……
断末魔の叫びと悍ましい無数の咀嚼音。そして、漆黒ドームが集束し元の朔夜の姿に戻ると、血の一滴たりとも残らず、術範囲内の敵対存在は全て消滅していた。
「な!? 本陣防衛隊が!! ガリ夫様、不味いですよこれは!!」
「……あの黒犬、そのような力を持ち得ていたとは……ククク、これは素晴らしいですね。他にも──」
──
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
ドォン!!ドォン!!ドォン!!ドォン!!ドォン!!ドォン!!ドォン!!
ドォン!!ドォン!!ドォン!!ドォン!!ドォン!!ドォン!!ドォン!!
カレンの魔紋より飛び立つ黒き桜蝶たち。喝采の如く火花を弾けさせ鮮やかに舞う桜吹雪は、周囲のキメラたちを絨毯爆撃。華やかながらも無残に散らしていく。
「あの紅犬もか、なるほど……そして空で節操無く飛び回っているあれも、雑種犬の一匹のようですね。これは実に重畳ククク……」
当初は想定外の状況に混乱したものの、各情報を統合し粗方であるが納得の答えを導き出し、不敵に嗤うガリ夫。
「これはいい素体になりそうですね。ドゥルナス様には、良き手土産になるかと──」
「あー、手土産? それはてめー自身のクソか?」
「!!」
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