第1話 8
あー、すっきりすっきり!
わたしは伸びをして、背後のアンを振り返る。
視界の隅でビクビクってしてるグレイブは見ないようにする。
気持ち悪いもん。
アンもまた、あいつを見ないようにしてるみたいだね。
気持ち悪いもんね。
「アン、見た? これがわたしの――果ての魔女の力だよ」
わたしが両手を広げてそう告げると。
「……ええ。
トランスポーターって言ったかしら?
転移陣なしで、最果ての森から王都のそばまで転移できたのもすごいけど……
……あの威力は本当に凄まじいわね……」
アンは崩れ落ちた騎士団隊舎を見つめながら呟く。
それからわたしに視線を向けて、その手を振り上げる。
「え?
――あいたぁっ!?」
ぶたれた!
アンに頭ぶたれたぁっ!
「――クレア!
あんな派手なマネするなんて、わたくし聞いてないわよ!」
「ええっ? あんなの全然だよ?
アンはわかってないなぁ。
魔女――貴属が本気なら、王都だって一瞬で壊滅させられるんだよ?
アンが望んでなさそうだったから、それはやらなかったけど……」
「当たり前でしょうっ!?
――良いこと?
今度からなにかやる時は、やる前にわたくしに説明なさいっ!」
アンが言うには、滅ぼした後の事を考えて動く必要があるんだって。
おばあちゃんから教わったのは、いかに恐怖をもたらすかだけだったもんねぇ。
政治に関わる部分は、アンに従った方が良さそう。
「……わかったよぅ」
わたしも平民まで巻き込んで、すべてを滅ぼしたいわけじゃないからね。
「――おまたせ~」
鴉になったイフューが帰ってきて。
わたしの肩に停まり、猫に戻ってくたびれたように垂れ下がる。
その様子にアンは目を細めて。
「それじゃあ、改めてよろしく頼むわ。
――国を滅ぼす果ての善き魔女」
そう言って右手を差し出してくる。
わたしはその手を握り返し。
「こちらこそ。国を想う悪いお姫様」
そうしてわたし達は笑い合う。
ここから、わたし達の『約束』は始まったんだよね。
――あらゆる理不尽をねじ伏せて。
理不尽に嘆く人達を救う為の約束がさ……
★――――――――――――――――――――――――――――――――――――★
ここまでが1話となります。
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