Case.1 探偵なのに盗むんだゆ ⑥

 そうこうするうちに廊下ろうかの突き当たりに辿り着く。

 その先に広がるのは幅がさほど変わらない、妙に長細い造りの部屋だった。

 ぴた、と停止した二人を見ていなかった俺は、そのまま一歩をみ出そうとして、


「止まるゆ」


 やま田にうでつかまれ、そのまま後方に軽々と投げられる。


「うおおおお?!」


 硬い床に背中をぶつけ、一瞬呼吸が出来なくなる。


「っ、何すんだ!」

「ここは、危険ゆ」


 大クレームを入れようとした俺だが、その目を見て急に冷静になる。

 やけに澄んだ目をしている時のやま田は、大真面目なのだ。

 ヨーグルが前の空間に向けて、大容量缶のスプレーを吹きかける、と。


「これは……」


 妙にけむたいスプレーガスが立ち上がり、それによって、あみの目のように空間に張りめぐらされた赤いセンサー線が浮かび上がる。

 

「ふむ。これに触れると、警報が鳴るか、何かトラップが出てくるか、もしレーザーであれば普通に切断もあり得ますな」

「ひえ……」

「ヨシナリ、ボクに感謝するゆ」

「あ、ああ、ありがとうやま田」


 こいつにお礼を言うのは、妙にくすぐったい気持ちになる。

 やま田はそんな俺の気持ちを知らず、ヨーグルの背負っていた小さいリュックを下ろさせると、中からあるものを取り出した。

 それは、どう見ても。


「あの刺突剣フルーレじゃん!」


 というか相変わらずこのリュック、サイズに対して出てくるものの大きさが間違っている。

 いつぞやはロケットランチャーとかバイクを取り出していたし。

 やま田はそれを左手に持つと、すう、と一呼吸置き、

 勢いよく、前へと飛び出した。

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