12.　思い知りなさい　～王宮side～

　あの屈辱の一件から１日がたった。なぜあんな平民出身の宮廷魔法士を自分たちが探さないといけない？そしてなぜ自分たちが解雇され、同じく国を追放されないといけない？そんな事を貴族出身の宮廷魔法士エレイナとアストンは思いながら街道を歩いていた。

「気に入らない。なんであんなやつ探さないといけないのよ！」

「エレイナ落ち着けよ。そんな事言ってもあの王女は許してくれないぜ？とにかくあのアイリーンを探そうぜ？魔物がでてきたら面倒だしさ」

「魔物？そんなの私たちの魔法なら問題はないわよ！それにアイリーンを見つけてどうするの？おとなしく頭を下げろと言うのアイリーンに！？私は嫌。だいたいあの王女も王女よ。ただ親友ってだけで私たちまで追放して。」

　エレイナがここまで怒るのにも一応理由はある。それは彼女も優秀だからだ。王立学院の首席はアイリーン。次席がエレイナだからだ。だからアイリーンが邪魔であった。そして地位も身分も低いアイリーンを妬んでいたのも事実。その事に一番怒りを覚えているのはエレイナ本人だった。

　そして自分たちの家からも勘当同然の扱いを受けた。王国追放、エレイナとアストンは自分の家に泥を塗った存在になる。なので勘当された。そして貴族としてのプライドは傷ついたままだ。

　だからこそ仕方なくアイリーンを探すために街を出た。誰も助けてくれない、何もない、あるのは身一つだけ。あの時のアイリーンと同じ。

「でもこのままだとオレたち死んじゃうな・・・」

「えぇ、本当に最悪ね。私はまだ死にたくないわ。まだ若いのに！もうこんな人生嫌！！あのクソ王女！！」

「おいっ！声が大きいぞ！」

「知ったことですか！文句くらい自由に言わせなさいよ！あーあ！どうして私がこんな目にあうのよ！」

「オレだってそうだ！くそっ！こうなったらどこかの街でギルド冒険者とかになって活躍するしかないか。」

　そんな話をしていると森に差し掛かったところで突然魔物に襲われた。それはゴブリンと呼ばれる低級のモンスターだった。

「この魔物はゴブリンかしら？楽勝よね。アストンいくわよ！軽く魔法で蹴散らしてあげるわ！」

「ああ。問題ないぜ！こんなの余裕！」

　そんな余裕な２人だったが、いざ戦ってみると初めての魔物討伐に２人の連携は全く取れず、お互いに攻撃しあって怪我をしただけだった。

　そしてさらに運が悪いことに血の匂いに誘われたのかオークという豚の顔を持つ人型の化け物が現れた。しかも３体もいた。

　そして戦闘経験がない２人はなすすべなく逃げ出すしかなかったのだ。

　魔物討伐。いくら魔法の才能があり、使えても戦闘は訓練しなければできるものではない。それを訓練なしで初めてアイリーンがこなせたのは彼女が天才であるから。強力な魔法が使え、そしていつでも冷静な彼女の性格も相まってだ。もちろん前衛として一緒にいたレイダーの存在も大きいが。

「もう何なのよ！痛いし苦しいし！」

「ちくしょう！とにかく走るしかないだろう！」

　２人は逃げる。それしか今は出来ない。ここにあのクリスティーナ王女がいたなら彼女はこういうだろう。

『思い知りなさい。あなたたちは弱いのよ。力がなければ何もできない。アイリーンは天才。それが現実ですわ。』

　そう言って笑っていたであろう。そんな言葉が自分たちの頭の中に聞こえてくる。本当に腹立たしい。だが今の自分たちにはどうしようもない。エレイナとアストンは魔物の恐怖からただ逃げ続けるしかなかったのだった。

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