第二十話 目的
「う、ぐ、ぐあああああ」
なんだ！？ 急にバーラが苦しみだした。目は血走り、髪の色が茶髪から灰色へと変わっていく。彼女の体に明らかに異常が起きている。
「ぐ、ハァ……。さあ始めようか」
バーラの手が前に出た次の瞬間、衝撃波が飛んでくる。
「下がれ！」
仮面の男性に抱えられ退避する。
おれたちがさっきまでいた地面は跡形もなく粉々になっている。
「なんて威力……。
「動けるか？」
「なんとか」
仮面の男性の問いかけに答えはするが、はっきり言っておれの体はほとんど限界、仮面の二人組も疲れを隠しきれてきない。どうする、ここまできて万事休すなのか……？
「どうした？ よっぽど
ドガッ！ ドガッ！ ドガッ！
衝撃波が地面を
「てめえ、俺様に勝っといて俺よりボロボロっつうのはどうなんだ？ あぁ？」
後ろからカツカツと大胆な足音を立てて一人の男が歩いてくる。……まじかよ。
「
「
仮面の二人組が同時に警戒する。挟まれた。ここまで……なのか？
「嬢ちゃんを助けるんじゃねえのか？ おれが前衛を張る。てめえらはその辺で援護でもしてろ」
「なっ！？」
「どうゆうことだ！」
「るせえ。助けるのか助けないのかはっきりしやがれ」
何を考えている？ こいつの言うことを信じられるのか？ 分からない。･･･だが今は考えている時間も策も無いのは事実。
「信じて、良いのか？」
「はっ、俺様が知るかよ。やるのかやらねえのかって聞いてんだこっちは」
「……任せよう」
おれがそう言うと仮面の二人組は驚き互いに顔を見合わせる。一瞬の硬直の後、意を決したのか、覚悟を決めたのか、呼吸を合わせて力強く頷く。
「信用したからな？」
「ガキはそこでおねんねしてろ」
どうゆう風の吹き回しかは分からない。だが今はこれしかない。
「……なにをしている？」
「俺の目的は
「ほざくな。殺されたいのか？」
「俺の強さを知らないわけじゃねえだろ？ やってみな」
バーラもこの裏切りは予想外のようだ。
そうゆう作戦かよ。……やられた。
死を覚悟したおれは目を
ここまでか……ってあれ、死んでない？
「そんなもの！」
バーラが壁ごとおれに衝撃波を放とうとするが、
「おっといいのか？ 大事な
「ちぃっ！」
◇◇◇
激しい戦闘が続く。
その上あいつは魔法を使えない。それはおれのせいであって、こんなことになるのならと今になって少し後悔する。だがそれは今考えるべきではない。おれに何か出来ることはないか？
「ええ、わかったわ」
おれも動く。仮面の女性に二人の援護に回るようお願いし、おれは力を溜め始める。あと一発、あと一発でいいんだ。頼む、もってくれおれの体。
「貴様らぁぁぁぁぁ！！」
バーラの挙動が激しくなるにつれて、彼女の容体は明らかに変わっていく。体は肥大化し肌の色もすでに人のそれではない。だが、それに比例するように破壊力は増す一方だ。もたもたしていればこの施設ごと崩壊しかねない。
「まだか！ くそガキ！」
「いける！」
「おせえ！」
そう言いながらも
めちゃくちゃ過ぎるだろ！ だがそうも言ってられない、やるしかない！
「くっ！」
バーラはおれに傷が付くことを恐れたのか一瞬攻撃を
この魔法の本質は攻撃ではなく、調和。
暴走し変わり果てたバーラの体はその炎によって調和され、徐々に浄化されていく。そしてその炎はやがて、バーラを包み綺麗な橙の炎となって輝く。
「なん、だ……この、炎……は…………」
そう言い残してバーラはその場に静かに倒れた。見た目は現れたときと同じ髪、人の肌の色に戻っている。
「セネカ」
最後の力を振り絞ってセネカを幽閉する物を壊し、手足を固定する鎖をほどく。
「フレイ、お前という奴は」
涙を浮かべながらぎゅっと、強く抱きしめられる。実際は何日間かだけなのに、もう何年も会えなかったかのような、そんな不思議な感じがする。
「おかえり」
そう言うと彼女は
「ああ、ただいま」
と笑顔で返してくれた。
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