第十九話 とっておき
「とっておきを見せてやる」
(まだ何か
(だがまあ、なんつーか
両者が再びぶつかり合う。が、正面からではやはりフレイは力負けする。
「そろそろ終わりにしねえか? てめえとやるのはもう飽きちまった」
その口調とは裏腹に、火・氷・雷・水と、その一撃一撃が全て重い
「ぐっ……」
だがフレイはまだ諦めていない。
(まだだ)
「結局てめえもつまんねえ奴だってことか。ならもういい、消えな」
(冷静に機を窺え)
壁際、すでに逃げ場のないフレイに最後の一発のつもりで
「あ?」
低位神権術 <召喚魔法>“低位召喚”
フレイは自らを
「ちっ、こざかしいことしやがって!」
さらに“低位召喚”の連続使用で瞬間移動を重ね、
<重力魔法>“グラビティゾーン”
「こんなもん、足を上げりゃあ――」
(隙あり!)
フレイが
「なんていうと思ったか? バレバレだ――」
ぼよん!
「あぁ?」
<圧力魔法>“透明結界”
「! しまっ――」
ドゴッ!!
<強化魔法>“筋力増強”により強化されたフレイの拳が炸裂した。その勢いのまま
★
なんとかまずは一発。
この戦略、完全なるただの思い付きだったがそれが運良く功を奏した。「物事にはそれぞれ絶対に意味がある。今はわからなくてもそれがきっと役に立つ時は来る」、父テオスの教えだ。まさかこんな大事な場面で、全く使い道が分からなかった特殊系統が役立つとはな。
「ふっ、やってくれんじゃねえか。少し見直したぜ。それがてめえのとっておきってやつか?」
ガラガラとめり込んだ壁から起き上がる音を立てて
「まさか」
「さっきのは撤回するぜ。やっぱてめえは
「もちろんわかっているさ。まだまだこっからだ」
「それがはったりじゃなけりゃあいいが、な!」
態勢を立て直した
「あぁ? この前と同じ構えか? それはおれには通用しなかっただろうが!」
「いいや」
そうだ、今から放つのは初めてこいつと
中位神権術、攻撃系統の
「うおおおおおお!!」
だが放つ瞬間、前に通用しなかった事が頭を
また止められるんじゃないかのか?
魔法が崩れかける。
――大丈夫、自分を信じて――
! この声・・・初めて魔法を使った時の声。誰かは分からない。でも、聞いているだけで安心する。おれの右手にそっと手を添えられたような感覚、これなら。
心が安らぐ。その落ち着きと共に崩れかけた魔法は、完成した。
くらえ。
中位神権術 <
★
フレイから放たれた
(何が起きた?)
だが、フレイが放った魔法は
ここで初めて
(前回までとは明らかに違え)
「何をした」
「お前はもう魔法を使えない」
「あ?」
そう言ってフレイが
(わけわかんねーこと言ってんじゃ――、!?)
フレイが<凍結魔法>“
(ばかな! 確かに今<火炎魔法>で打ち消したはずだが……まさか、まじなのか?)
(はっガキが、生意気な)
「魔法の使えないお前に負けはしない」
(一応手が動かせるか。ならやりようはまだある……いや)
(こいつなら止めてくれるのかもな)
フレイが身動きの取れない
「楽しかったぜ」
「セネカは返してもらう」
フレイが魔法を放つ。
放ったのは<火炎魔法>“
★
うまくいった……のか。大魔法を連続して放った疲れと、極度の緊張状態から解放された反動でおれはその場にへたり込む。
あの勝負を決定づけた魔法。あれは
中位神権術による攻撃系統のすべての魔法を等しく同時に放つことにより、“全てを調和する力を持った魔法”が生まれる。その魔法を受けた者は自身の炎を使役する際、自然に炎が調和されてしまうことにより、一時的に魔法を使うことが出来なくなる。
ゴリゴリの肉弾戦車のような相手にはそこまで有用性は無いが、対魔法師においては
だがそうだ、こうしちゃいられない。
でも……あれ? 体が動かない。くっ、さすがに体力を使い過ぎたか? 一刻も早くセネカのところにいかなければならないのに!
「大丈夫か!」
この声は……仮面の男性か! 助かった。黒ローブ集団を倒してきたのか、さすがだ。
ほとんど動かない体を抱きかかえられながら向かうべき方向を指す。
「あっちにセネカが」
「わかった、とにかく回復薬を!」
仮面の男性にかかえられ、仮面の女性には回復薬を施してもらいながら
◇◇◇
「セネカ!!」
「フレイか!?」
大きく透明な筒状の物の中に幽閉されているセネカを見つけて叫ぶ。
「こっちにくるな!」
え? セネカのその発言に戸惑う。
「遅かったじゃないか、フレイツェルト君」
「だれだ」
向こうから一人の肩に傷を負った茶髪の女が姿を現す。
「私は
「何をする気だ?」
「それは言えない。我らは目的のために動くのみ。来る気が無いのならば力づくでも構わないぞ?」
「言われなくてもそのつもりだ!」
「そうか、いいだろう」
そう言うとその女は天井からぶら下がった一本の管を自らの首に差す。
「お楽しみといこうか」
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