理想の家族

連喜

第1話 兄の一家

 俺は50代に差し掛かったばかりの中年男。

 寂しい一人暮らしだ。

 親族は兄のみ。


 兄の一家というのは絵に描いたような理想の家族だ。

 兄は東大卒のエリート公務員。

 姉は専業主婦で美人。俺のタイプ。

 子供2人で女と男。

 上は中2、下は今小6で受験を控えている。


 兄は俺よりちょっと上だが50代半ば。

 それにしては、子供が小さいと思うだろう。

 計算してみると、40くらいの時の子供だ。

 東大卒のエリートがなぜそんなに結婚が遅かったのかというと、兄は実は×2なのだ。

 前妻との間にも子供がいて、実は子供が5人もいる。


 兄はかっとなりやすくて、口が悪い。

 いつも偉そうで、上から目線。

 すべての人を見下している。


 奥さんはよく耐えているなと思う。

 彼女は都内の有名女子大を出ていて、お嬢様っぽい人。

 年はまだ40歳くらいだ。

 お勉強はすごくできるが、親の希望で女子大に行ったような人だ。

 都市銀行に勤めてて、なぜか兄と出会ってしまった。

 出産後は、子供二人を立派に育てて、転勤にも同行して、苦労したんじゃないかと思ってる。


 兄嫁は、以前はよく俺に連絡をくれていた。

 でも、実母が生きていた頃までだ。


 俺は調子に乗ってしまい「あんな男のどこがいいの?2回も離婚してるんだよ」とか「本当は大変なんじゃない?」と言ったりしていた。奥さんは笑って「でも、いい所があるの」とか「もう慣れたから」と言っていた。

 俺はずっとその人が好きだった。控えめで苦労を顔に出さなくて、何でもそつなく完璧にやってくれる理想の奥さん・・・。しかも、いつもきれいにしてる。全然劣化しない。


 家だっていつ行ってもピカピカだった。子供たちは、地方に住んでてもZ会をやってるから、都内で塾通いしてる子たちに引けを取らない・・・最難関を普通に狙えるレベルだ。


 兄嫁は俺がずっと独身なので、いつも気にかけてくれていて、友達を紹介してくれようとしていた。もちろん、断った・・・。付き合い始めたら別れづらいからだ。

 俺は本気で「兄貴と別れたら俺と結婚して」と言ったことがある。その場では笑っていたけど、それからはあまり連絡が来なくなった。気持ち悪いと思われたんだろう。


 兄とはほとんど連絡を取っていなくて、全く会っていない。

 特に母が亡くなってからは音信普通といっていいくらいだ。


 甥っ子、姪っ子に会ったのは、母の葬式が最後だ。


 姪は顔がかわいくて、生意気な感じ。

 俺のことがずっと好きで、物心ついてすぐ、絵を描いて贈ってくれたり、バレンタインデーにチョコレートをくれていた・・・。

 家では俺の話ばかりしていると兄嫁から聞いていた。

 幼稚園の頃には、俺と結婚したいと言っていたし、俺宛に電話がかかって来ていた。

 

 羨ましいと思う人もいるかもしれないが・・・姪だから、つき合えない。


 習い事はバレエ、ピアノ、英語。

 勉強がすごくできて、数年前に中学受験して御三家に進学。


 甥っ子はそつない感じで、頭がいい。

 勉強だけでなく、習い事はスポーツとピアノもやっていた。

 将来、絶対エリートになるタイプだ。

 すでに、私大卒の俺を小馬鹿にしている。

 顔もよかった。


 家は都内の高級住宅街にあるマンション。


 こんな感じで、見えない部分では瑕疵はあるけど、兄の家庭は理想的だった。









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