第17話 お買い物代行
テントに戻り、
コットに座り、リクエストされた品をリストを見ながらカートに放り込んでいく。
「まずはハルからだな。予想通り、食い物ばっかりか」
調味料事情がよほど切実なのか。塩胡椒、醤油、マヨネーズに各種ソース類、ドレッシングもしっかりリストに載っている。
だが、その他は殆どが菓子類だった。カロリーバーとスポーツ飲料が各十本のリクエスト以降は、ポテチなどのスナック菓子類が殆どを占めている。
「アイツ、他の道具は揃っているのか? テントと寝袋は持ってきたみたいだけど」
心配ではあるが、国や神殿がフォローしてくれるのだろう。ストレス発散に慣れ親しんだ菓子を食べたくなるのも、まあ理解できる。
日本円で約一万円の価値があるらしい銀貨を貰ったのだ。せいぜい代行業者として働こう。
リクエストされたのは全て百円の品だったので、百個分をまとめてハルのアイテムボックス送りにする。
「さて、次はナツだな。脳筋な兄貴よりはマシなリストなことを祈ろう」
ざっと目を通した。調味料はほぼ
そこに、砂糖や蜂蜜を各十個の追加があった。
「甘い食べ物が少ないのか? それにしても量が多いな」
やはりナツは兄と違い、それなりに考えていたようだ。まずは300円ショップのTシャツ一枚とタオルを二枚。100円ショップの
「さすがだな、ナツ。ペットボトルのお茶を買うより自分で作った方がお得だもんな」
たかが100P、されど100Pなのだ。
神殿から貰える給料がどのくらいかは分からないが、倹約するに越したことはない。
「後は銀マット? ああ、寝袋の下に敷くのか。厚さがある物は五百円だから却下だけど、百円のアルミシートがあるな。折り畳んで敷き込めば少しはマシか」
それにしても、さっそく野営をしているのだろうか? ハルは頑丈だから何ともなかったのかもしれないが、キャンプ慣れしていない女子にいきなり寝袋はキツかっただろうに。
「背中が痛くて眠れなかったとか? よし、ここは頼りになる従兄の奢りでクッションを十個送ってやろう」
マット代わりに使えば、多少は楽に眠れるはずだ。1つ二百円の商品なので、しっかりと厚みがあるし、縫い付ければ敷布団感覚で使えるだろう。
「あとは、カトラリーセットと割れないコップね。ちょうどステンレスのセットで良いのがあるな。ナイフ、フォーク、スプーンに箸まで付いてケース入り。三百円だけど買いだ。ステンレスマグカップの蓋付き二百円の品も良さそう……」
ポチポチとカートに追加していく。
かなり残金が減ってしまったが、残りはチョコレート、カロリーバーを多めに。ジャム、飴、スポーツ飲料、カップ麺を買えるだけとのリクエストだ。
バランスよくカートに突っ込んでいけば、すぐに残高はゼロになった。
「よし、さっさと送ってやろう」
クッションはおまけだと、メール文も追加しておいた。アイテムボックスに送るや否や、感謝のメールが送られてくる。
「はや! それだけ心待ちにしていたんだろうな……。じゃあ、アキにも急いで送ってやらないと」
アキのリストも調味料類のリクエストはしっかりとある。ナツと違い、彼は胡椒を十本ほど多くリクエストしていた。
アキは合宿でも
周到に準備するタイプなので、キャンプ道具も不自由がない程度には揃っていたようだ。
「さすがだな、アキ。ナツと同じく冷茶用のボトルのリクエストか。二個あるのは、麦茶とスポーツ飲料用なんだな」
ちゃんと麦茶のティーパックとパウダータイプのスポーツ飲料セットをリクエストしている。
その他にも紅茶のティーパックと砂糖も多めに注文していた。
他の二人と違う点は、サラダ油が五本と片栗粉、小麦粉、天ぷら粉にタルタルソースもリストに入っていたことか。
「あー…揚げ物系の料理、なさそうだもんなぁ……。ないなら自分たちで作るつもりだな。さすが、アキ」
すらりとした体型のイケメンだが、彼もハルやナツと同じく体育会系。どんぶり飯を涼しい顔でおかわりする大食らいなのだ。
特に揚げ物料理をこよなく愛しているので、このラインナップも大いに頷ける。
「見ていたら、俺も食いたくなってきたな。ホーンラビットの唐揚げ、明日試してみよう」
残りのリストにはチョコレートバーとカロリーバーが各十本ずつ。それとは別に板チョコも五枚ほど。飴、ラムネ、ジュースは低血糖対策か。
残りはカップ麺やカップ焼きそば、菓子パンを買えるだけ、とのリクエストだった。
「とりあえず全種類を送ってやろう。好みの物があれば次回リクエストしてくるだろうし。菓子パンは結構種類があるなぁ……。カロリーが多そうなのから選んでいくか」
空腹はしんどいからな。特に魔法をたくさん使った後は辛い。MPって満腹度の略か? って創造神に詰め寄りたくなるほどには、腹が空くのだ。
「メロンパン、アップルパイ、クリームパン、ソーセージパン…。お、ピザパンもいいな。フレンチトースト甘そうだな、買いっと」
銀貨一枚分の買い物を終えたので、アキのアイテムボックスに送ってやった。
ポロン、とメールの着信音。三人からだ。
「なになに? ハルとアキから、クッションを自分達も欲しいって? ナツはお礼とついでにソーイングセットの希望?」
どういうことだ、と詳しくアキのメールを読む。どうやら彼らを召喚して受け入れたシラン国、地球との文化レベルにかなりの差があったらしい。
「木製の箱型ベッドにマットの代わりの
国としては最大の敬意を払った、立派な客室を用意してくれたのだろうけれど、現代日本の高校生にはキツい環境だ。
仕方なく、三人とも持参したテントと寝袋で眠っているらしい。
さすがに気の毒になって、ふかふかのクッションをそれぞれ十個ずつ送っておいた。縫い付けて使うとのことなので、ソーイングセットも忘れずに。
ファブリック系が信用ならなかったので、追加でタオルやブランケットも送っておく。三百円の品しか買えないが、品質はなかなか侮れない。
ふわふわの手触りなので、今夜はきっと良く眠れることだろう。
代表でアキから銀貨一枚が追加で送られてきた。奢るつもりだったのだが、ありがたく気持ちとして貰っておいた。
また追加で良さそうな品を送っておこう。
「それにしても辛いな、その環境。ベッドがそれなら、トイレなんて悲惨な予感しかないぞ……」
転生前に創造神に色々と掛け合っておいて良かったと真剣に思う。召喚魔法もネット通販にして貰えたのは、グッジョブ過ぎる。
「あー…でも、これで人里に出向く気力がまた減ったかも」
大切な客人をもてなす国がそのレベルなら、村や街の宿の状態も想像がつく。
「うん、創造神が便利な魔道具を作らせるって話だったし。しばらくは大森林でスローライフを楽しむか」
せめて従弟たちがもう少し快適に過ごせるように、レベルアップして
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