[書籍化]悪徳貴族の生存戦略~領地を荒らしていた両親を昏睡させて追放したら、有能領主になってました。破滅フラグを叩き折り贅沢三昧な暮らしを目指す~
第135話 ユリアンヌも自分の体を使うことを覚えなさい
第135話 ユリアンヌも自分の体を使うことを覚えなさい
「家のためになるなら、どんなことでもやれ。私は、そう教育したよね?」
「それと、先ほどの行為に何の関係が……?」
「私たちが死ねば、フロワ家は終わります。ですから、どんな手を使っても生き残る道を探していたのですよ」
若い男を誘惑していたというのは私の勘違いで、グイントだけが知っている隠し部屋がないか聞き出そうとしていたってこと?
自らの体で男を誘惑して?
お家を断絶させないように?
どうしてそこまで家にこだわるのか、私には理解できない。
お父様は「家なんてどうでも良い。幸せに暮らせ」なんて言ってたのに。
「貴族の女として、これが正しい道なのよ。ユリアンヌも自分の体を使うことを覚えなさい」
体を使うって、時と場合によっては、他の男と寝て都合良く操れとでもいうの!?
旦那様以外の男に触れられてしまうと想像しただけで、身の毛がよだつのに、そんなの無理!
私はお母様のような生き方はできないと、ハッキリと分かってしまう。
反論しようとしたら、通路から複数の足音が聞こえてきた。
次第に大きくなっているので、近づいているみたい。
警備をしている兵なら、鎧がこすれる音とかが聞こえてくるはず。
でも、そんな音はしないから、屋敷に忍び込んだ侵入者という線が濃厚です。
「ここは僕が時間を稼ぐので、窓から――!!」
グイントの口が途中で止まった瞬間に、私は後ろを向きながら短槍を向ける。
窓を蹴破って転がり込んでくる黒ずくめの男が見えた。
侵入したのは一人みたいで、後続はなさそう。
「はっ!」
魔力で身体能力を向上させながら、短く息を吐いて短槍を突き出す。
侵入者の腕にかすったけど、横に転がって避けられてしまった。
普段なら絶対に外さなかったのに!
訓練を中止して花嫁修業ばかりしていたから、体が鈍っていたみたい。
部屋の出口から剣戟が聞こえてきたけど、グイントなら耐えてくれると信じて、立ち上がろうとしている侵入者に再び短槍を突き出す。
キィンと、硬質な音がこだました。
侵入者がショートソードで受け止めたみたい。
刀身を折る代わりに軌道をそらされて、穂先は床に突き刺さる。
好機とみたのか、布で顔を隠しているのに侵入者が笑ったように見えた。
腰からナイフを取り出すと、私にめがけて投擲する。
戦う術を持っていない貴族の子女なら脅威になったかもしれないけど、この程度の危険は魔物退治で何度も経験してきている。
私を馬鹿にしないで!
空いている左手でナイフの刀身を叩き、弾き飛ばすと壁に突き刺さった。
奇襲が失敗するとは思っていなかったみたいで、侵入者の動きが止まる。
旦那様のお屋敷に忍び込んだ罰を与えなきゃ!
床に突き刺さったままの短槍を軽く引きながら横に振るう。
侵入者の横っ面を叩いて吹き飛ばした。
「まだ生きているようですね」
頭を吹き飛ばすほどの力を込めていたんだけど、侵入者の顔は原形を留めているどころか、意識までしっかりあるみたい。
魔法か何かで、肉体の強度を上げているのかな?
だったら、直接攻撃の魔法も使える……っ!
『アイス・アロー』
侵入者から氷の矢が放たれたので、体をひねってかわす。
私の行動は読まれていたらしく、数秒遅れてナイフが二本迫ってきたので、短槍の柄に当てて弾く。
攻撃をしのいだと思ったけど、いつの間にか近づいた侵入者の拳が眼前に迫っていた。
このままだと鼻が折れてしまいそうなので、顔を下げておでこに当てる。
吹き飛ばされて意識を失いかけたけど、短槍だけは絶対に手放さない。
「カハッ」
背中を壁に叩きつけられて、肺から空気が抜けた。
侵入者は無力なお母様や戦闘中のグイントより、私を優先して排除しようとしているみたいで、追撃のために駆け寄ってくる。
手にはナイフがある。
突き刺して私を殺すつもりなんだ。
人質の価値すらないってこと?
旦那様は私が囚われても気にしないとでも思っているの?
侵入者ごときが、バカにして!
私は、絶対に大切にされているんだからっ!!
怒りに呼応するように魔力が湧き出て、身体能力がさらに強化される。
顔に迫っていたナイフの刀身を、左手で握った。
侵入者から動揺する気配を感じつつ、膝を突き出して腹を突き上げるのと同時に、刀身を握りつぶす。
金属片が宙に舞い、光を反射させてキラキラと光っていた。
「お母様から見れば、私は家のために動けない未熟者かもしれませんが……」
咳き込んでいる侵入者の顔面を蹴り上げると、仰向けに倒れた。
動かなくなったけど、絶対に油断なんてしないんだから。
「愛する旦那様のためなら、この身を血で汚す覚悟ぐらいはあります!! 武力で役に立つんだからっ!」
短槍を投げつけると、侵入者が横に転がって避けた。
指先が僅かに動いていたことから、意識が戻っていたことぐらいは気づいていたので、走り出していた私は、侵入者の顔を思いっきり踏みつける。
少しだけ抵抗を感じたけど、頭蓋骨を砕いた。
グシャッと果実を潰したような音がして、血が飛び散り、私の体や顔を赤く染める。
「ユリアンヌ……」
お母様、そんな心配そうな顔をしないで下さい。
私なりの方法で家族を幸せにしますから。
「残りの敵も殺してきます」
グイントは侵入者を一人倒したみたいだけど、数は三人に増えていた。
警備が薄いところをつかれたみたいで、侵入者の数は多いらしい。
旦那様の留守は私が守るんだから。
短槍を拾うと、侵入者を一人ずつ突き殺すことにした。
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