第14話

「ふんふんふーん」

 

「お兄ちゃん!ちゃんと美味しいご飯を作ってね!」


「うーん。まともな食材を使って料理を作ったの久しぶりだなぁ……」

 

 僕はフライパンの上で気分よく料理を行う。

 今作っているのは麻婆豆腐と餃子である。

 ダンジョンで稼いだお金で材料を買ってきたのである。

 なんか知らないけど、麻婆豆腐と餃子の材料だけが異常なまでに安かったので、これらを作ることにしたのだ。

 

 ふふふ。

 予想以上にダンジョンは稼げた。

 麻婆豆腐と餃子の材料を買っても未だ余りある。

 これを元手に株で大きく増やしてやろうじゃないか……!


「……それにしても、なんでこれらの食材だけが異様に安かったんだ?」


「別にそんなこと気にすることじゃないよ!お兄ちゃん!安くて美味しいのが食べられるんだから!」


「まぁ……そうだね!はい!出来たよぉー」

 

 僕が作った麻婆豆腐と餃子を机の上に並べていく。

 我ながらいい出来だと思う。

 麻婆豆腐の素は高く、スパイスは異様なまでに安かったため、素は使わないでスパイスを作ってお店顔負けの本格麻婆豆腐を作った。完璧な出来である!

 ちなみに餃子は冷凍の奴である。

 

「わーい!カタツムリじゃないー!」


「カタツムリも美味しいでしょ?」


「いや、美味しいけど……やっぱりアレだけじゃ足りないし……」

 

「え?」

 

 佐倉ってば5歳児だよね?……そんないっぱい食べるん?


「んー!美味しい!」

 

 僕は、僕以上に麻婆豆腐と餃子をかき込んでいる佐倉を見て首を傾げた。

 

 ■■■■■

 

 ダンジョン。

 亜蓮と佐倉が立ち去った後のダンジョン。

 

 佐倉が作り、亜蓮が作って魔物を斬り殺し、中に込められていた魔力がなくなったと同時にポイ捨てしていた刀。

 本来であれば露と消えるはずの刀。

 

 その刀は真っ赤な液体となって流れていった。

 ダンジョンという壁を超え、別のダンジョンへ。

 眠り続ける猛獣の元に。

 

「ぐるぅぅぅぅぅぅぅぅうううううううううううううううううううううううううう」

 

 目覚めのときは近い。

 萌芽のときは近い。

 紅のときは近い。

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