答え合わせ2
「でもなんだか大きいですね?」
人の姿はエスタルが魔法で作り出した幻影。
だからダンジョンの外にも出てこられたし人の姿でも作り出せたのだ。
本来のエスタルの姿はちゃんとカーバンクルなのであるがエスタルの姿を見たリンデランは首を捻った。
なんだか自分の魔獣であるメデリーズよりも二回りぐらい大きい気がする。
いや、それほどまでに大きいなら気のせいでなく本当に大きいのだ。
「そりゃあ僕は生きている年月が違うからね。
そこらのカーバンクルとは一味も二味も違うのだよ!」
「そ、そうなんですか……」
「話してるし、普通じゃないよね」
「ふふん、僕はトクベツ、なのさ!」
胸を張るエスタル。
そうするとフワフワとした胸毛が強調される。
「それより、どーして分かったのか教えてよ!
気になって朝も起きれなくなるじゃないか!」
「朝は起きろよ。
どうして分かったのか、何っていうと難しいな……
1つ何かがあったから分かったというよりも色々なことが1つになって答えになった感じかな」
「全部おせーて!」
「そうだね、やっぱりその額の宝石は大きいんだけどね。
きっかけは噂だよ」
「噂?」
「エアダリウスの宝物庫……」
「おおっと……聞かなかったら後悔するところだったかもしれないね」
「アカデミーには初代学長が残した宝物庫があるんじゃないかっていう噂があったんだ」
リンデランが不思議そうな顔をしている。
宝物庫の噂をアカデミーの学生であるリンデランも耳にしたことがなかった。
エもジと一緒に調査したけどそんな話は聞かなかった。
ならどこでそんな噂を聞いたのか。
実はそれは過去の話であった。
アカデミーに関する話といえば卒業したやつの話か、優秀な生徒のことぐらいしか噂にならない。
貴族の子供が多く通う場であるので情報が外に漏れ出てこないようにアカデミーも気を張って、学生たちも不用意にアカデミーのことは口にしないのだ。
調べれば出てくるのかもしれないが所詮は子供の話なので大人が酒の席で噂にするほどのものもないのだ。
そうした中で眉唾ものの噂が1つ。
エアダリウスの宝物庫の話だ。
取るにたらない噂、本来ならジも覚えていないような噂なのだけどたまたま覚えていたのだ。
過去の、今の年齢よりもはるか先の時代のこと。
傭兵だろうか、酒に酔った3人組が話していた。
最初は戦争で活躍した人の話でそれがアカデミー卒業者だったという始まりで、戦争で活躍できたのはアカデミーを主席で卒業できるほどの才能があるだけでなく、アーティファクトをもらえるからだと言っていたのだ。
いくら貴族の集まるアカデミーだからって卒業生に戦争で役立つほどのアーティファクトを与えるとは思えない。
しかし現実に何人かのアカデミー卒業者でアーティファクトを持っていて、活躍している人は実はいるらしい。
結局そいつらは1人がしたその話にそんなわけないだろと冷たく返したことで喧嘩になった。
酒の入ったコップが飛んできて1人の男に当たったのだけど、それがジだった。
人の話を肴に酒を飲んでいたのだ。
噂話はくだらなくとも恨みはなかなか忘れない。
文句の1つも言えずに逃げ帰ったジは喧嘩の原因となった噂話を覚えていたのだ。
それ単体ではなんてこともない話だが、今回のダンジョン騒動と合わせてみるとどうか。
結びつけられないこともない。
それをイコールだとすることはできなくても不自然にならない程度の説明は出来る。
エスタルがご褒美をくれると言ったので何かしらの物品的なものもあるのだろうとさらに確信が深まった。
「……僕はアカデミーの中のことならなんでも知ってるからね、外の話かな。
そんな噂をしている人もいるんだね。
古い話なのに……」
「とりあえずそんな噂を聞いたから気になってオロネアに初代学長であるエアダリウスのことを調べてもらったんだ。
そこでカーバンクルが魔獣で、お前の額にも同じような宝石があることにはすぐに気づいたよ」
ダンジョンにいるなら入り込んだ人か魔物かのどちらか。
エスタルは入り込んだ人じゃないので魔物だとジは当然なように思っていた。
「さらにこのダンジョンの異常さ。
魔物がぬいぐるみや人形みたいなもので置き換わってる不思議な現象。
オロネアが教えてくれたドールハウス計画だっけか?
あれもやっぱりエアダリウスが提案したものだったみたいだしな」
全部が繋がってくる。
エアダリウスが死んでいる人間で魔物でもない以上ジの中ではエスタルがダンジョンのボスなのではないかと考えていた。
「どうだろうな、俺の推測だけど……」
エアダリウスのことを調べてもらい、当時の記録がいくらか残っていた。
死ぬ間際にエアダリウスは魔獣であるエスタルを元に戻さなかったとある。
人が魔獣よりも早く死ぬ時、その余裕があるならあらかじめ魔獣を逆召喚して元いた場所に返すのが普通である。
呼び出したまま死んでしまえば契約は切れて魔獣はただの魔物になってしまう。
だから死に魔獣が立ち会うことはないのだ。
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