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side. madoka





「ここ、は…?」



説明も何もないままに。

無言でスタスタ前を歩く晃亮クンに、ひたすらついて行くと────…


薄水色の壁の、如何にも高級そうな…マンションの前へと、辿り着いた。





「あっ…────!」



口を開けて建物を見上げていたら、

思い切り手首を掴まれ引き摺られる。


抵抗なんて無駄な位、晃亮クンの握力は強くて。

手首から先が赤黒くなるくらいの激痛に、

オレは堪らず顔を歪めた。






「ちょっ…────!?」



いくらなんでも納得がいかなくって、

口を開いたんだけど…。



見たこと無いくらい据わったまなこで睨まれてしまい、


出かけた言葉は、

思わず飲み込んでしまった。







背中に冷たい汗が伝う。


最上階の角部屋。

有無をいわさずズルズルと中へ連行される。



靴も脱ぐ間すら与えられず、

なんとか足を振って脱ぎ捨てだけど…

彼は止まることなく、

また室内へと引き摺られていった。


そのままリビングを素通りし、

扉の中へ押し込まれる。







「つッ!…たぁ……」



家具もベッドもほぼ黒一色の、

殺風景な部屋。

灰色のカーテンは閉まってはいても、外はまだ明るい筈なのに…。


ここは何故か異質な空気を、漂わせていた。





フカフカの高級そうなラグに尻餅をついたオレを、


その影で覆い尽くし見下ろす晃亮クン。





先の読めない彼の、圧倒的なその姿に…



恐怖に駆られ、

オレはヒュッと喉を震わせた。









「コウ、スケく…ん…?」



殺気にも似た、彼の放つ毒にあてられ。

今頃になって身の危険を感じる。



最初出会った当初は、

静かでぼんやりしたコだなぁとか思っていたけど。

昨日のキスといい、今の様子といい…


普通じゃない何かを、

抱かずにはいられなかった。







「いッ────…!!」



突然馬乗りにされ、

床に叩きつけられる。


年下とはいえ、

体格はオレの一回り以上大きく逞しいから。

力で勝てる見込みは無く、抵抗すら出来ないまま、


片手ですんなりと捕まえられた。







「まどか。」



その様は、まるで狩りをする獣。

発情期のような、妖艶さと野性的な色を含んだ声音で、


彼は名を呼ぶ。



雌でもないのに、

射抜かれる眼差しはオレを貫き


離してはくれなかった。






「ああッ…!!」



無理矢理にシャツを引き千切られ、肌が露出する。

裂かれた生地が食い込んでしまい、


そこに痛みが伴った。







「────…!!」



それから休む間もなく唇を奪われ、

肌を大きな手が這い回る。


獲物を貪るかのような…

お世辞にもキスとは言い難いそれと、乱暴な愛撫に。


オレの思考は状況下に追いつけず、

真っ白になっていった。







「ンッ、ふ…ぁ!」



息継ぎも許されず、

口内を彼の舌で掻き回される。


混ざり合う、互いの唾液を飲み込む事も出来ないから…。


それは顎を伝い、

だらしなく首筋まで溢れ出していった。

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