第114話・知識の宝庫

「ケルピーって……部長(ドライアド)と同等って言っていたけど?」

「そうですね、普通に戦ったら完全に互角です」

「マジか。めっちゃ強いじゃんか、それ」

「でしょでしょ!」

 ……なんかハーピーが嬉しそうなんだけど。いまのはドライアドを褒めてる話と違うぞ。

「馬マスクのムキムキ兄さんか。強敵だな……」

〔何故そうなるのですか……〕

「って、あれ?」

〔どうしたのですか? 八白亜紀〕

姉ちゃん(メデューサ)が『こっちに来ている魔王軍は十一人』って言ってたけど、数合わなくないか? ケルピーって十二人目だぞ? あそこの小さいの入れれば十三人じゃないか」

 ……やはり何かおかしい。誰かカウントされていない者でもいるのかな?


「何をこそこそしているんだっぺ。ドライアドを助けに来たんじゃないっぺか?」

「そうですよ。ドライアド様!」

 言うが早いか、いきなりドライアドに近づこうとするハーピー。慌てて手を掴んで制止したけど、勢いに少し引っ張られてしまった。よほど尊敬しているのだろうね、盲目的に。それはわかる。だけどさ……

「亜紀さん、何故止めるのですか」

「罠、あるぞ」

「……そんなものどこにも見えませんよ」

「落ち着けって」

 いくら何でも、見える様に罠を設置する奴はいない。もしわかりやすく設置してあるのなら、それはそれでまた別の意味があるんだよな。


部長(ドライアド)達さ、一言もしゃべってないだろ?」

「それが何か?」

「この状態で黙らせる意味って何があると思う?」

 首をかしげるハーピー。助けたいって気持ちだけでいっぱいいっぱいなのだろう、そのせいで行動が空回りしている感じだ。ドライアド達はと言えば、ウチの姿が見えた時に反応して頭を上げているから、意識はあるし少しは身体も動かせるみたいだ。それでも一言も発しないのは、魔法か何かで声が出せないか、もしくは声が遮られているかのどちらかだと考えられる。


「ウチ達に“何かを伝えられては困るから”って事なんだよ」

「はあ……そういうものなのですか」

 そういうものなのです。古い映画でこんな感じのトラップがあったんだよね。ルカを囮にしてスーを隠す作戦も他の映画で見た作戦。映画もアニメも漫画も小説ラノベも、とにかくサブカルチャーは知識の宝庫なんだ。

を舐めるなよ」

〔また微妙なパワーワードが出ましたね〕


 ……微妙言うな。一億五千万年も時代を先取りしているんやで。

 

「なあ、毛玉(グレムリン)。どうせその辺りからゴーレム出てくんだろ?」

「な、なんでわかったっペ……」

 アンジーは『かなり狡猾なヤツ』って言っていたけど、目の前のグレムリンは言う程ではない感じがするのだが。


「やっぱりゴーレム兵かよ。君らホント好きだね~。ワンパターンだ・け・ど!!」


 でも実はこれ、敵のやる事とは言えすごく理にかなっている手段でもあるんだ。普通の下っ端兵士とかを連れてくるには当然魔力を消費するんだけど、現地でゴーレムを作れば“その何十分の一程度の魔力”で兵士をバンバン作れてしまうという事らしい。おまけに材料の土や岩は無限に転がっている。

 スケルトン兵は身軽で小回りも利くけど、この時代には人の骨なんて埋まっていないから、結局転移させて来なければならない。ゴーレムとどちらを兵士として使うかはその指揮官の好みって事なのだろうね。……と、アンジーが解説していた。


「ムムム、かまわんやっちまえっぺよ!」

 グレムリンが合図を出すと、後ろに控えていたゴーレム兵がゆっくりと動き出した。直後、更に後方で“地響きを伴って低い爆発音”が響く。ルカがオーラを放出したのだろう。

「レックス……」

 このタイミングを待っていた、カルカロドントサウルスのルカ。レベルの上がったレックス・インパクトは、自身を中心にした範囲攻撃としても運用が可能だ。恐竜のオーラを纏いながら高く飛び上がり、五体のゴーレムの中央を狙って打ち下ろす!


「インパク……」

「待っていたっペ。お前様が攻撃してくるのを」


 ――突然、五体のゴーレムの足元が盛り上がった。


「ゴーレムって言っても色々あるんだっぺよ」

「え……なんスかこれは!?」


 そしてルカは。そのまま盛り上がる砂から出て来たのは、五本の指がゴーレムの形をした巨大な岩の手であった。


「捕まえたっぺよ……」






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