第101話・希望の糸
妹の話になると途端にムキになるアンジー。溺愛していた妹と引き離されて十年以上、その上安否もわからない。それを解決するために
「あ、そうそう、恐竜さんもさ、ライズ化しないで魔王軍にぶつけたら強いんじゃない?」
なんか話題を変えようと思って考えなしに口を開いてしまった。愚問だったな、これは。いや、判ってんのよ、それじゃダメな事は……
「確かに力だけなら恐竜のままが強いと思うけど、その使い方を考える知能を持てるライズ化の方が、全然良いと思うな」
「……だよねえ」
答えがわかっている事をなんで聞いたんだ、ウチは。連携を取るにしても作戦を実行するにしても、それを理解する頭が無ければ駄目だ。見境の無い力は単なる暴力でしかないからな。
それに、あの巨大な恐竜のパワーを凝縮して人間サイズになっているんだ、当然弱いはずがない。
「話戻るけど、八白さん」
「あ、ああ、はい」
「この先、出来たら私は魔王と闘うまで力を温存した方がいいと思うんだ」
「だね。ウチもその方がいいと思う」
「だからさ、八白さんの悪知恵とブラフで『私の悪名』を上手く使ってくれないかな?」
なるほど、この先“アンジュラ・アキ”の名前を上手く使って、出来るだけ戦闘を回避していく方向に話を持って行かないとって事か。実際、メデューサもアンジーの顔見て戦意喪失していたし、作戦としては使いやすいかもしれない。
でもまあ……欲を言えば、最後までアンジーが戦わなくて済むように出来れば、とも思う。生き残って妹と現代に帰って欲しいし。
「そしたら、ドラゲロ以上の肩書を考えなきゃな……」
「それは謹んで遠慮する!」
「遠慮しなくていいって。ウチにまかせとき、なんかスゲーの考えとくから」
「……『不安しかない』って言っていた八白さんとこの女神ちゃんの気持ちが良く解るわ」
話がひと段落した時、タイミングを計った様にティラノが声をかけて来た。
「ジュラっち~、ちょっと相談があんだけどいいか~?」
「私? 八白さんじゃなくて?」
「そうそう、ジュラっちに頼みたいんだ」
ウチじゃなくアンジーを指名するって事は、多分あの技を完成させるためのヒントが欲しいって事なのだと思う。ティラノも“戦闘技術そのもの”に関してはアンジーに聞くのが良いと考えたか。ちょっと寂しくもあるけど、しっかりと自分の立ち位置を見ているって事なんだろうな。
「アンジー、ウチからも頼むよ」
♢
〔危なかったですね〕
ティラノと広場に歩いていくアンジーを見ながら女神さんが口を開いた。
「ああ、マジでヤバかったよ……」
ウチは、アンジーの
〔妹の安否は、アンジュラ・アキが
つまり、ウチが“話した時点で”アンジーが妹と再会するという希望の糸を断ち切ってしまう事になる。
「こういうの、めちゃモヤモヤするわ~」
〔ですが、最大限の注意を払わないとなりませんよ。あなたのミスで二人の少女が不幸になるかもしれないのですから〕
「プレッシャーかけんなって。ウチだって怖いんだぞ。間違って口滑らせたらと思うと……」
〔口から産まれましたからね、あなたは〕
……ほっとけ。
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