第155話・我が血族……?

 ウェアウルフの“もふもふさわさわ”に、たまらず音を上げたデスマトスクス。ダスプレトサウルスに文句を言われながらも、“本物の”タリスマンをティラノ達に渡し、次の部屋へと続く巨大な扉を開いた。

 一行は先へと進む。『その尻尾置いて行ってくれ、犬コロ』『出来るが、アホが!』と言う別れの言葉を残して。


 そしてその先は、またもや恐竜サイズの洞窟が延々と続いている。『俺を残して先に行け!』というロマンを打ち砕かれた近接アタッカーの三人は、競って走る必要がなくなりのんびりと歩いていた。

「ところでティラノさん。あの声の主、ダスプレトサウルスとは一体何者ざますの?」

「俺様のご先祖様……だと思うんだけど」

「なんだティラノ。自分の事なのにあやふやではないか」

「ミノっちさ、そうは言っても何百万年も前の爺さんだぜ? 本当かどうかわからねぇって。でもまあ、俺様達の初代総長って事だけは確実だ」

「総長って……訳わかりませんわ」

 メデューサは、ダスプレトサウルスに何か思惑があると確信していた。スキピオニクスもデスマトスクスも、一行を止めるのではなく“試している”と感じたからだ。しかし、いまの彼女にはそれを確かめるすべはなく、それ故どんな小さな情報でも欲しかったのだが。


「うむ、一言で言えば変態という事であろう」

「いやいや、奇人だと思うでヤンスよ」

「単にアホどいう場合もあるぞ」

「その場合はどれも“独創的な考えの持ち主”というのです。あのタイプはすぐにねますから、言葉を選ぶ必要がありますわね」

 流石にここまで言いたい放題言われては黙っていられなかったのだろう。ダスプレトサウルスは少しイラついた口調で話しかけて来た。  

〔おい……。お主ら、聞こえておるぞ。言いたい事を言いおってからに〕

「あら、聞いていらしたのですね」

「……総長。あんたって俺様のご先祖様なのか?」

〔もちろんじゃ。我が血族ティラノサウルスよ!〕


 ――血族。その一言を聞いたティラノは目を輝かせた。


「なあ、何百万年も前の爺さん」

〔なんじゃ、何百万年も後の孫娘〕

「なんかつえー武器くれ!」

〔こら孫、もうちょっと言葉を選べ。あからさますぎるじゃろう〕

「え~、いいじゃんよ。あからさまで何か悪いことあんのか? くれよ~!」

 

 ……図式としては完全に“おじいちゃんにおもちゃをせびる孫”であった。


〔ふう、本当に落ち着かない奴じゃのう〕

「あら、最初からダスプレトさんがきちんと情報の提示をしていれば、もっと会話がスムーズだと思いません事? ご自分の不備を、何百万歳も年下の子孫のせいにするのは大人気ありませんわ!」


〔……〕


「逃げましたわね」

「うん、逃げやがったな」

 ダスプレトサウルスとの会話からは、メデューサの求めるヒントは得られなかった。しかし、同じ光景がずっと続いている巨大洞窟において、気を紛らわすことが出来たのは、精神的にプラスになっていた。

 

「この、先……か……」

「どうじだ? ミノ」

 オーラや気と言った名目で語られる生体のエネルギー。それを直接察知する能力を持つミノタウロスは、行く先に巨大な力が溜まっているのを感じていた。もちろんその能力は野生生物であるティラノにも備わっており、意識せずとも自然と気合が入っていった。

「なんかスゲー武器がありそうだな」

「お二人が察知しているのであれば、間違いはなさそうざますが……」

「よし、走るか!」

 その一言が引き金となり、竜牛狼のアタッカー三人が動き出そうとしたその時。


「皆さんお待ちになって。重要な話があります」

「え~、姉っち~。後じゃ駄目なんかよ」

「駄目ざます。ティラノさんもミノも、“課題”に勝ちたいのなら今から言う事を肝に銘じておいて下さい」

 真剣な表情のメデューサを見て、三人の動きが止まる。

「キピオと戦った時、絶対的なスピードと触れない身体に騙されました」

「恥ずかしいポーズをさせられた事しか覚えてねぇぞ」

「デスマトと戦った時は、攻撃しない事がクリア条件でした」

「うむ、なめた小僧であったな」


「無駄に煽ってきて正常心をなくさせ、その上で正攻法の戦い方ではクリア出来ないという戦いばかりでしたわ」

 

 考察するには情報もテストケースも少なく、確証のない話ではあったが……。次が最後という事であれば、伝えておかなければならないとメデューサは感じたのだろう。


「ティラノさん、ミノ。今までのあなた方の様な“正面からの戦い方”だけでは、次で負ける事になります」






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