第19話 同性の友人とプレゼント

 子供時代の瑠香るかのお小遣いは、一か月五百円だった。

 毎月読む少女雑誌を買って、駄菓子をいくつか買って終わりである。

 しかし、友人の誕生日が近づくと、買いたいものを諦め、友人の誕生日プレゼントにそのお金を使うのだった。


 しかし、瑠香がプレゼントをあげると、

「なんか、変なの~。」

と言われたり、

「私これ、あんまり好きじゃないな、あげる!」

と、隣にいる子にすぐに渡されたりした。


 看護師になってからも同じであった。

 急に退職が決まった、仲の良かった同僚が居た。

 最後だから、とプレゼントしたスカーフを、退職した同僚と仲の良かった、別の看護師が身に付けて通勤してきたのを見たのだ。

 そして、そのスカーフをした看護師が、いきなり瑠香に

「いつもお世話になっているから。」

とお茶のセットをくれたりした。


 スカーフの柄が気に入らなかったのだろうか。

 それとも、瑠香のことを、好きではなかったのだろうか。


 本来、プレゼントとは、渡した相手が品物を気に入るかどうかはわからない、というのが前提であるから、このようなことが起こったとしても仕方がないのだが、瑠香が友人や知人にプレゼントした物というのは、必ずこのようになってしまい、しっかりと受け取られた試しがない。瑠香は悲しかった。


 そのような経験が度重なったため、瑠香は友人にプレゼントをあげることが出来なくなってしまった。


 「左様でございましたか。悲しいし、寂しかったですね。」

 「もう二度と、他人にプレゼントなんてしないわよ、私は。・・・って、もう死んでしまったけれどね。」


 「どのように致しましょうか?」

 「彼女たちが誰かからプレゼントをもらって、受け取ったら、そのプレゼントによって、トラブルが起こるようにして頂戴ちょうだい。」

 「かしこまりました。」



 小学校時代の友人が、プレゼントを受け取った。

 「このマグカップ、欲しかったのよね!このキャラクター、大好き!」

 友人はそのマグカップで、紅茶を飲むことにした。

 「まだ茶渋のついていない、真っ白なカップ!」


 トポトポ・・・と熱湯を注ぐ。

 すると、


 パリーン!


 「わっ!」


 突如、マグカップが割れ、破片が友人に向かって飛んできた。

 スリッパをいておらず、咄嗟とっさのことだったので、素足で破片を踏んでしまい、出血した。


 「まあ、プレゼントを素直に受け取ったとしても、このようなことがある、という教訓になるのかしら。仕方ないわね。」

 「瑠香様、これは、女帝になるための道程どうていなのですよ。あなたに悲しい思いをさせたり、不快な思いをさせることが罪なのです。その罪に対する罰なのですよ。」


◇◇◇


 また別の瑠香の友人が、プレゼントにTシャツをもらった。

 新品なので、デートに着ていくことにした。


 「あれ?またやせた?」

 友人は彼氏に嫌われたくなくて、野菜中心の食事を摂り、ダイエットに成功していた。

 腕もかなり、細くなっていた。

 プレゼントでもらったTシャツは、袖ぐりがゆったりしていてかなり余裕があった。


 彼氏の家の中での『お家デート』であった。

 彼氏は一人暮らしで、GWの暑い日、であった。

 「パスタでも作ろうか?」

 友人が彼氏に声を掛けた。

 「上の開きの戸棚に入ってるよ。」


 脚立に乗って、友人はパスタを取り出した。

 「はい。」

と彼氏にパスタを手渡すときに、ゆったりし過ぎたTシャツの袖の奥から、友人の白いブラジャーのベルトの部分が丸見えになった。

 彼氏はそれを見て、欲情してしまった。


 彼氏は、脚立から降りた友人の両腕を掴んで、無我夢中でソファに押し倒した。

 「やめて!何するの!」


 友人はソファの上で犯されてしまった。


 後でわかったことだが、この男はとんでもないプレイボーイであり、彼女と呼べる女性が十三人もいた。『お家デート』を仕掛け、やりたい放題をして遊ぶだけで、結婚前提で付き合って欲しいと言っておきながら、結婚をしようなどとは全く考えていないような男だったのだ。

 この友人は、この情事が原因で妊娠してしまった。


 「受け取ったプレゼント品がきっかけで、とんでもないことになったわね。」

 「瑠香様を軽んじたのですから、重い罰を与えてみました。」


◇◇◇


 看護師時代、瑠香がスカーフをプレゼントしたが、瑠香があげたプレゼントを開けることなく、すぐに他の看護師に渡した元同僚が、男性からブランド品のバッグのプレゼントを受け取った。


 「フェンディのバッグ、好きなのよね~。ありがとう。」

 「君のためなら。少し、高かったけどね。お誕生日、おめでとう。」


 元同僚は、気さくな美人であった。

 瑠香は、男性の交友関係までは知らなかったが、恐らく、男好きするタイプではないか、とは思っていた。


 「しかし、この男性には、家庭がございます。」

 「え?じゃあ、不倫ってこと?」

 「はい。しかし、瑠香様の元同僚には、独身と偽っているのです。」

 「あらら。」


 「ふふふ、こんな体をしているのか。」

 男は、フェンディのカバンに仕掛けた盗撮カメラの映像を、自室のパソコンで見ていた。

 元同僚の、着替えシーンである。


 「ははは、こんな男がいるのね~。」

 「この男は、この動画を、インターネット上で売りさばいております。見た目のセクシーな女性と付き合って、プレゼントに盗撮カメラを仕込んで渡して、商売をしている男です。」

 「私があげたスカーフを、他人に渡した罰ね。」

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