11 犯されざる禁忌
◆
――ぐゎん、ぐゎん、ぐゎん、ぐゎん
不思議とその方向に茂みが主張をしていることはなく、今まで通ってきたものと
それでも、一人で行くには長い道だし、先程より雲が薄くなって道は見やすく、勢いがやや軽くなったとはいえ雨粒がレインコート越しに
そんな状況、どうしたって自然と心細さが出てくる。
その時だった。
「待って」
後ろから、声がした。
女性の声。少女の声。
どちらかといえば、愛らしくて甘くて柔らかい声。凛と固く通る声の
振り向くなという
「ねえ、あなた、待って」
足音はしない。
それ以上に、今、
なのに、まるで、耳元で
「一目でいいから、あたしを見て」
笑みを
もし、
だがしかし、そんなのは
「ねえ、こっちを見て」
くすくすと笑い声が聞こえる。
――
振り向いてもいないのに、まるで視界に入れたかのようにその冷たく甘い気配を感じる。
雨で巻き上げられた湿った土の
――うぉん
低い犬の一声と共に、何かが
同時に、これ以上動かせないほどに
後ろを、振り向いてはならない。
「なんて、ひどいの。ねえ、あなたもそう思わない?」
きゃははははははは、と後ろからの声が
その声の主と
「きゃはは、あの女、こんな、首輪をつけたまがいものなんて、
振り向いてはならない。絶対に、振り向いてはならない。
けたたましく笑う
耳に突き刺さるその狂ったような
ついに、道の先に、ぽっかりと茂みが口を開けているのが見えた。
きゃらきゃらきゃら、と
「いいわ、いいわ、見逃してあげる。こんなまがいものをつかうほど必死なんだもの、振り返らなかったのだもの、あわれんであげるわ」
負け
それを
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