6 光陰は百代の過客なり
「そういう前提を踏まえた上で、だ」
ごそごそと、ロビンが自分のリュックを探り、スティックパッケージのチューイングキャンディを取り出した。チューイングキャンディの代表格とも言えるポピュラーなそのお菓子の中でも、
そのパッケージをぴりぴりと開けると、一粒を
「……ええと、これで帰れる?」
「ことはそこまで簡単じゃない」
言いながら、包み紙を開いてロビンは中身を口に放り込む。
慣れ親しんだお菓子らしいぶどうの味に少しホッとする。
その様を見届けたロビンが口を開いた。
「とりあえず、これで
「つまり?」
「キミが帰れないなら、ボクらも帰れないってこと」
一人よりマシだろ、とロビンが言う。
一方、
「まあ、いざとなれば強行軍です! 少なくとも、
なんとも言えない視線でそれを見たロビンだが、ため息をついて頭を横に振った。
どんどんこの二人の力関係が透けて見える。
「で、また最初に戻ろうか。タケル、君は自分が両親とはぐれてから、どれぐらい
「え……えーと」
そういえば、この情況になってから
だが、体感からして言えば。
「一時間とか、二時間とか、それぐらい?」
「これは幸いですね。この様子から短い方と
うんうん、と
なんというか、その言い方はまるで――
「……なあ、ひろねーちゃん、実際はどれぐらい
「……」
「さ、三週間……です」
「うそ!?」
せいぜいが一日、二日じゃないかと思っていた。
そもそも、
ロビンが当然と言わんばかりの表情で口を開く。
「竜宮城での三年が地上の七百年になる浦島太郎を考えれば、ないこともないだろ」
「ええ……そんなんでいいの?」
そりゃ、浦島太郎ぐらいなら
でも、そこまで当然として話されるのは別である。
「ケルトのオシアンだって妖精の国での三年が三百年、妖精系の伝承だと一晩、妖精の踊りに合わせて、一晩バイオリン弾いてただけと思ってたのが百年で、聞いた瞬間、
「ロビンの場合、経験者は語るですしね。数分が半日でしたっけ」
それでも、
「さんしゅうかん……三週間……」
「前後を
納得と同時に悲哀を感じる言葉だった。
「……オレ、今後似たようなことあったらロビンにーちゃんみたいなの頼るし、オススメするわ」
「……おや、それはどうも」
同情と敬意と感謝が入り混じった
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