2 山と神隠し
side A
序 静謐
――今まで「無音」と呼んでいたものは、まったくもって別物だった。
そう感じながら、
道を
そこに
虫の声。虫の羽音。
本来するはずのそうした音が何一つない。
まるで、この場に
見上げた空は生い茂った木の葉の
たとえどんなに低くとも山は山、と大学時代に登山サークルに所属していた父にこの程度の山を登るには十二分の装備を与えられていたとしても、
大の大人でも、食料、水分、さらに雨具が
むしろ、こうして音を立てている
実際、こうして音を立てれば立てるほど、この静かな空気がねっとりと自分を取り囲み、包み込んでくるように思えてならない。
だから、
が、こういう時に不安という指向性は悪い方に転がしてくるもので。
ふっと
ドライフラワーやプリザーブドフラワー――
一般的小学五年生の
だから、
別に
――こんなにも音がしないのは、これらが全て死んでいるからではないだろうか。
そんな考えが、頭をもたげたのだ。
鮮やかな色のまま時を止めた植物を、ピンセットで
そうして
母がそうして増やしたハーバリウムを
だから、自然とそんな考えが思い浮かんだのだ。
この重苦しい空気はそうして
――そして、自分はただそれらを引き立てるために入れられたビー玉や貝殻のような異物なのではないか。
こうして立ち尽くす自分を、何者かが
自然と浅くなった呼吸が
自分が勝手に思っただけなのに、そこから湧き上がる恐怖が振り払えず、
そうして
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