8 真か嘘か、瓢箪から駒か
「んー……でもさ、センセイ、例の先生が『頭から落ちた』って語ってたんだから、そこって確かに推進力にはなったけど、事実なら、そこまで意味はないんじゃ?」
ロビンの眼鏡は
ロビンにとって、嘘は聞くにも見るにもノイズでしかない。
そのノイズを例の依頼人側の先生からは感じなかったのだ。
ロビンの指摘に、きょときょとと
「実際には一瞬だし、四十年ばかり
ロビンは本人が嘘と自覚していなければ、それを嘘と見抜けない。
嘘と自覚している事が視界を介してわかるから、ロビンは嘘だと見抜くことができる。
「いくら本当にそれを目撃したからって、それがどれだけ衝撃的だからって、いや、衝撃的だからこそ、
そうだろ? と
「人はあくまで現実の
「……そうだね。それはそう」
――人は現実の観測者に他ならない。
現実の実像は誰にも分からない。
結局のところ、感覚器官で
――じゃあ、その
電気信号からの
そうした結果を受けて、心が
ロビンはひっそりと、今日何度目かのため息をつく。
見ようと思えば見えるものもあるし、望めばそれ以上もできるかもしれないが、そこまでいっては恐らく
それがきっと、祝福の範囲の限りなのだろうとロビンは認識している。
「
「反省できてえらーい」
ロビンの重くなった心を
「……センセイもちょっとは反省すれば?」
「何を? 僕はいつだって自分の最善を尽くしてるから、後悔はしても、反省すべき点はないんだよなあ」
そう
「普通、逆じゃない?」
「んー、その場の最善を尽くすから、あれがあれば、とか、これがあればっていうもしもの後悔があるんだよ。たとえば、キミと会うのがもうちょっと早かったら、なんて」
――ばさり
そう、音を立てて、ロビンが手にしていた資料が床に落ちた。
それを拾い上げる事もなく、ただ
「……でも、それは
表情に
「どうせ、
怒るのではなく、からからと笑いながら
「先に行ってるよ、ロビン」
「……」
――なんで、どうして、そんなこと。
「……はあ」
口元を
服越しにそうと知らねばわからぬほどまで薄くなっている、真っ赤に焼けた鉄の
とりとめもなく思考が流れるままに、
――そんなこと
「
どう流れても、ロビンの思考の帰結はそこだ。
少なくとも、ロビンの
――だから、あれが、遅かったなんて、ロビンは
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