6 逆さまと呪い
「逆さまであるべきだった?」
「うん。逆であること、それが文化的に持つ意味、ロビン、キミ、とっくにわかってるだろ?」
「……
「うわ、ロビン、よく『日本書紀』なんて覚えてるね……」
自分から振っておきながら、予想外の答えでそんなに
そういう非難を込めた視線をじっとりと
「ロビン、目が怖い、目が」
「怖くしてるから」
「キミの場合、時々うっかりそれだけじゃないから困るの」
「それは昔の話」
そうすっぱりと切り捨てて、
「で、センセイの言いたかったところは、
「そうそう、それそれ。普通である常に対して、逆さはその反対だから、常ならずで異常なんだよ」
「……普通、そこで引き合いに出すなら、ハレとケじゃない?」
裏の裏の裏は裏というような少し回りくどい論理運びに、数瞬考える時間を取って理解してから、ロビンは自身の知る中で一番わかりやすい概念を取り出す。
しかし、
「ハレとケで言えば、確かに異常なのはハレの方だけど、ハレはどうしてもいい方向に捉えがちだろう?」
「ああ、うん、そういえば、そこは諸説あるもんね」
「だったら、常か常ならずで分けた方が手っ取り早い」
けろりと言ってのけた
――こういった所が、やっぱりセンセイの難だ。
よぎったその考えを頭の
「つまり、逆さまの幽霊っていうのは
「そう。加えると、逆さまの亡者という図自体がその亡者の未練の強さだとか、恨みの強さを表すと考えられるものでもあるんだ。『
そんな言い方をされたせいで、ロビンの頭の中で、一瞬、幽霊絵とアシカとオットセイが並ぶ。
たとえとしてわからなくはないけれど、まずあってはならない
というわけで、そう判断したロビンは表情を変えることなく、頭の中からアシカとオットセイを叩き出した。
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