変な数字が見えるようになったオレ氏、ヤンデレハーレムに飲み込まれる

第42話 わがまま

「……」

　花崎さんは分け隔ての無い優しさを振り撒く女性であり、そんな彼女が積極的にコミュニケーションを取りたいという気持ちがあるのは当然のことだ。

「沈黙は肯定……嬉しい。私、頑張るね」

　花崎さんはオレの顔を見てニッコリと微笑むと、そのまま唇を重ねてこようとする。

「ちょ、ちょっと待ってくれ！」

　花崎さんの勢い余った行動に、思わず叫んでしまう。

　それなりの素振りを見せていたとはいえ、いくらなんでも積極的過ぎやしないか。花崎さんはオレのことを好きと言ってくれたが、だからといってこんな風に迫られても困ってしまう。

　しかし、花崎さんの表情には余裕のようなものが見て取れた。

　彼女はニヤリと笑みを浮かべると、人差し指でオレの口を塞いでくる。

「慌てちゃって、可愛い」

　そのまま妹にやられた時と同様に、オレは口の中を弄ばれてしまう。舌先で歯茎をなぞられ、頬の内側を舐め回される。

「橘くんの唾液、美味しい。あんなガキに独り占めさせるなんて、もう耐えられない」

「花崎さん？」

「あ、え、ううん？　こっちの話だよ」

　さっきまで花崎さんは怖い顔をしており、そこにオレが心配して声を掛けると、彼女は慌てて表情を取り繕った。

　だが、それはオレを騙そうとしている後ろめたいものではなく、むしろ照れ隠しに近いものを感じる。

「ごめんなさい。橘くんのこと、本当に好きなの。でも、妹ちゃんに負けたくないって気持ちもあって、それで……こうすればわたしも追いつけると思ったから！」

　ソファの上に押し倒されたオレは花崎さんとの第二ラウンドに興じることになり、花崎さん主導の下、彼女と愛し合うことになった。

　花崎さんは積極的にオレを求めてきた。妹のように強気なところはあまり無く、あくまでも優しくリードしてくれる。

「はぁ、はぁ……。どうだったかな？ 初めてで下手かもしれないけど……」

「う、うん……良かったよ」

「そっか、ならよかった」

　花崎さんはオレの言葉を聞いて癒され、嬉しさのあまり抱きついてきてくれた。

「橘くんとキスできただけで満足していたはずなのに、いつの間にか他のスキンシップまでしちゃった」

　彼女はそう言いながらオレが着ているパジャマに顔を埋めた。そのまま蠢くと、オレの胸に向かって何度も接吻してくる。

「花崎さん、今日は大胆だね……」

「えへっ、そうだよね。でも、橘くんも悪いんだよ。わたし、どんどん橘くんに惹かれていっちゃってるから」

　花崎さんは恥ずかしがりながらも、それでもなおオレへの好意を口にしてくれた。

　花崎さんがオレに好意を持っている。成り行きで知ったことだが、その事実がオレを安心させてくれる。

「花崎さん、これからもよろしく頼むよ」

「もちろん。こちらこそお願いします」

　妹に引き続き、オレは花崎さんともスキンシップをしていると、背徳感が湧き上がってくる。

　オレはクズだ。妹とあれだけ楽しんだ後、性懲りも無く次の美少女とお楽しみをしている。

　そんな自己嫌悪に陥る中、オレは花崎さんに抱きしめられる。

　オレが嫌がっていないことを察したのか、花崎さんはオレに甘えるように頬ずりした。

「浮気だとか不誠実だとか考えているのかな？　そんなことわたしは気にしていないから安心して良いよ」

　花崎さんに求められてオレは彼女の頭や背中を撫でると、彼女は猫撫で声を出す。

「ふわぁ〜。橘くんの手、優しいね〜」

「妹も似たような反応をしていたけど、花崎さんはこういうのが好きなのか？」

「大好き！ もっと触って欲しいな」

　花崎さんはそう言ってオレの手を自分の胸に誘導する。そのまま揉んでみると、彼女は甘い吐息を出した。

「んぅ……」

　花崎さんは目を閉じて感じ入っており、とても幸せそうな表情を浮かべていた。

　花崎さんの胸はそこらの女性よりも大きく、手から溢れ出てしまいそうになる。それを必死に押し留めようとすると、花崎さんはクスッと笑った。

　オレはしばらく花崎さんのおっぱいを堪能していた。その感触は柔らかく、いつまでも触れていたい気持ちにさせられる。

　全体的にすらっとしている妹とは対照的に、花崎さんの体にはマシュマロのような弾力があり、オレはその柔らかさに溺れていく。

　そして、そのまま花崎さんとソファの上で少しの間寛ぐ。

　そんな光景を妹が目にしたらと思うと恐ろしいが、案の定いちゃついている真っ只中にリビングの扉が開き、お風呂上がりの妹が入ってきた。

「ねえお兄様、あたしを放ってしまったと思いきや、また花崎先輩とスキンシップをしているのですか？」

　妹の剣幕を見て、先程の悪夢が次第に甦る。

「怜……これはその」

　弁明なんてできるような状況ではないが、オレは慌てて花崎さんの上から退き、妹に土下座をした。

「花崎さんとは付き合っているわけじゃないんだ！ ただ、花崎さんがオレのことを好きだと言ってくれて、それでこんな風に」

「へぇー、そうだったんですか。はぁ……はぁ……あたしをぞんざいに扱って……んぅ……そんなに楽しいのですか？」

　決して許されないと思い、殴られるのを覚悟で謝っているが、どうにも彼女の様子がおかしいことに気付く。

「花崎さん……？」

「橘くん、わたしもう我慢できない！」

　妹との修羅場の最中だというのに、花崎さんがオレを押し倒し、今度はオレの方が彼女に組み敷かれる形になる。　

「ちょっと花崎さん！？」

「ごめんなさい、妹ちゃんとキミが話しているのを見ていると胸が苦しくなって、居ても立っても居られなくなって……」

　花崎さんはそう言うなり、再びオレを求めて唇を重ねてきた。

「あ、あの、えっ？ なにこれ？」

　花崎さんの行動に困惑していると、彼女はオレの耳元で囁いた。

「橘くん、実はわたしはわがままなんだよ。だから、今度からはわたしを優先して欲しいな」

　すると花崎さんは小悪魔のような笑みを、えらく息の荒い妹に向ける。妹は苦しんでいるのかと思いきや、妙に違うようで顔には引き攣った笑みが張り付いている。

　空元気とも何か違い、その顔はなぜか喜びに満ち溢れているようであり、同時に身に背負った不快感を自分の心のバケツに抱え切れず、無理矢理に蓋をして抑え込んでいるように見えた。

　妹がなぜこのような状態になっているかは分からないが、とりあえず花崎さんを引き剥がす。