第38話 着替え
オレは覚悟を決め、ゆっくりと瞼を開く。
すると、そこには綺麗な肌色が映える際どい下着を着た妹がいた。
胸元は谷間が覗いているどころか、胸の大部分が見えている有様だ。
股間部分は大事な部分が辛うじて隠れるくらいの丈しかなく、彼女の白い太腿が露出していた。
オレの視線が釘付けになっているのを感じたのか、妹は妖艶な笑みを浮かべた。
そして、そのままオレを押し倒し、馬乗りになってくる。
「おい、ちょっ!?」
「ふふっ、このお店はあたしの味方。今なら誰も来ませんよぉ」
彼女は両手をオレの顔に添えると、強引に唇を奪う。
「んっ、ちゅぱっ、れるっ」
「んんっ、やめ、ろ……」
なんとか引き剥がそうとするものの、その細い腕からは考えられないほどの力強さであっさり押さえ込まれてしまう。
「んっ、ぷはぁ、お兄様の味ですよぉ」
「この変態!」
「あら? まだ元気そうですね」
彼女は楽しそうな表情を見せると、今度は舌を絡ませるような濃厚なキスをする。
「れろっ、じゅるっ、んあっ、お兄様の唾液、美味しい」
「やめっ!」
オレは妹の肩を掴み押し退けようとするも、全く動かない。
一体どこにこんな力が眠っているというのだろうか。
妹はオレに抱きつき、更に激しく口内を貪ってくる。
そして、遂にオレの理性は完全に崩壊した。
オレは本能のままに行動した。
気がつけばオレは妹の身体に手を這わせていた。
「んっ、はぁんっ」
妹は色っぽい声を出し、身を捩らせる。オレの手が動き、ボディラインをなぞるたびに彼女は甘い吐息を漏らす。
やがて、彼女はオレから口を離すと体を起こす。
「お兄様ったら、激しいですね」
「お前が悪いんだろうが」
「ふふっ、そうですか。でも、いいんですよ。あたしが欲しいのは、こういうことじゃないですから」
「どういうことだ?」
「それは……すぐに分かりますよ」
妹は勢いよく立ち上がり、オレの身体を突き飛ばした。
「イテッ」
「あたしが目指すのは、お兄様とのはるか先の未来です。お兄様に相応しい女性になり、そしていつかお兄様と……」
妹はそこで言葉を切ると、顔を赤らめる。
「まぁ、今はお楽しみの続きをしましょうか。あたし、もう我慢できなくなっちゃいました」
際どい下着姿の妹が倒れたオレに覆い被さる。その際にオレにかかる彼女の金髪は、まるで天使の翼のように美しく見えた。
「えへへ、せっかくの勝負下着なんです。イチャイチャしましょうよ」
妹の好感度は170に増えていた。好感度の上限はたったの10なのに、妹のそれはルールをあっさり超えてきている。オレには、妹が何を考えているのか分からなかった。常識を超越した存在に、一般的な考えをぶつける方が無粋というものだ。
結局オレ達はその後、たっぷり一時間ほど店内でイチャつくことになる。
「うひひひひっ」
その時の妹は薄い本に出てくる竿役のおっさんみたいな笑い方をしていて、正直ちょっと引いた。
だが、妹の力が圧倒的に強いのもあり、抵抗することは諦めた。
「お兄様とラブラブ人生、楽しみです」
帰り道、げっそりしているオレとは真逆に、妹は頬をてかてかに輝かせている。オレと妹の仲は、より一層深まったように思える。
元気があり余る妹が持っている袋には、店で買った際どい下着や露出の多い服が入っている。
「マジでこんなの着るのか?」
「うん!」
妹は元気に返事をし、軽快にスキップする。そんな姿を見ていると、妹に性的なことをされても何だかどうでも良くなってしまうのだ。
オレは溜息をつく。妹の将来が心配だ。
そうこうしているうちに家に着き、オレは妹と共に家に入る。
「あ、橘くんお帰り。遅かったから心配したよ」
鍵を掛けていたはずの家の中に、なぜか花崎さんがいた。花崎さんはそんな異常事態などどうでも良いと強調するように、妹を睨んで牽制した後、オレを玄関からリビングへ引きずり込む。
「あの、先輩! 不法侵入ですよ!」
間髪入れずにオレたちを追い掛けてきた妹は家に侵入した花崎さんに対して怒りをあらわにする。オレは花崎さんが犯罪を犯すなど信じたくないが、目の前の現実がオレに反論する隙を与えること無く黙らせる。
「え? ちゃんと橘くんから許可取ってるもん。合鍵だってほら」
オレは今日花崎さんに家に入る許可を与えた覚えは無い。合鍵なんて以ての外だ。それにセキュリティ的に、花崎さんに自宅の鍵を託すなんて論外だろう。オレが許しても他の家族が許さない。
妹は怒るのが確定的だし、現にかなり怒っており、今にも花崎さんに噛みつこうと虎視耽々と機会を狙っていた。
「とにかく、あたしとお兄様の愛の巣を荒らすのはやめて下さい。お兄様に嫌われますよ」
「大丈夫だよ。橘くんはわたしを嫌いになったりしないから。それより、君こそわたしの邪魔をしたら、いくら可愛い後輩でも容赦しないからね」
二人はバチバチと火花を散らして睨み合う。この二人をこのまま放置していたら、家がどうなるかわかったもんじゃない。
「二人ともちょっと待った!」
オレが制止しようとすると、これを隙と見たのか、花崎さんがオレを壁に押し込める。
「ねえ、合鍵、渡してくれたよね」
「いや、そんなことしてな……」
「渡してくれたよね」
「はい」
花崎さんはオレに口裏を合わせるように求めてきた。雰囲気による圧力だけでなく、彼女の頭上に浮かぶ170の数字がとんでもない圧力を生み出していた。
オレはこの数字が完全には何なのか分からないし、そもそもこれが本当に好感度かどうかも怪しいと未だに思っているが、それでもオレの本能が彼女の言うことに従えと言っていた。
オレが屈すると、彼女は満足そうに微笑む。
「お兄様が渡したのですか?」
「う、うん、最近花崎さんはこっちに結構な頻度で来るからさ」
「だからって静かな空間が好きなお兄様が家の自由な出入りを許しますかね。怪しい……」
妹は普通に怪しんでおり、誤魔化すなんて無理そうだ。一方の花崎さんは根拠不明の自信を顔に浮かべており、謎に余裕たっぷりだった。
「とにかくだ。花崎さんの言っていたことは事実だよ」
「お兄様、何か弱味を握られているんですか?」
「そんなこと無いよ」
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