第33話 変化する日常

「お兄様はあたしのことを嫌いなんですか? だったら、どうしてキスしてくれたんですかぁ? 教えてください」

「い、いや……。それは……」

「ほらぁ、答えられないじゃないですかぁ」

「うぐっ……」


 オレは言葉を詰まらせる。確かに彼女の言う通りである。キスしたのは妹に対する愛情故の行為であり、決して恋愛感情があった訳ではない。

 だが、それを口にするのは憚られる。それではまるで変態みたいじゃないか。

結局、オレは何も言えなかった。

 すると、怜は目を細める。そして、再び口づけしてきた。


「ちゅぱ……。んふぅ……」


 そのまま舌を入れられ、絡め取られる。唾液を混ぜ合わされるような濃厚なキスが続いた。

 しばらく経ってから怜は口を離す。お互いの間に銀色の橋が架かった。

 オレは今、実の妹とディープキスをしていたのだ。クズ過ぎるその事実に背徳感を覚えてしまう。同時に美少女と恋愛する現実に興奮もしている。

 妹も似たような動機から満足げに微笑んでいた。

 彼女はオレの頬に手を当てながら、妖しく囁く。


「戸惑うお兄様も、可愛い」


 オレの理性は限界を迎えつつあった。上で四つん這いになっている怜はとても色っぽい。そんな彼女を前にして、平常心を保てる訳がなかった。


「なぁ、怜……」

「何でしょうかぁ?」

「やっぱりこんなこと、間違ってるんじゃ……」


 オレの言葉に怜は首を傾げる。

 それから不思議そうな表情を浮かべて尋ねてきた。


「なんでですかぁ?」


 その声音はどこか冷たいように感じられた。少なくとも、先ほどまでの甘い雰囲気など微塵もない。

 彼女の目は漆黒に染まっていた。その視線には有無を言わせない迫力がある。


「だって、兄妹でこういうことをするなんて……」

「お兄様はあたしとキスするのが嫌だったのですかぁ?」

「い、嫌とかじゃなくて……」

「あたしはお兄様のことが好きで好きで堪らないんですよぉ? だから、こうして愛し合ってるだけなのに、どうしていけないんですか?」

「……」


 どうしよう。完全に正気を失っている。こうなった彼女は何を言っても通じないだろう。

 怜は再び、オレに覆い被さってくる。それから耳元で甘く囁いた。


「あたしの愛を受け止める覚悟が出来ましたか? 出来ていないなら、無理強いするつもりはありませんけど」

「……」

「でも、もし出来ると言うのであれば……」


 彼女は少し身体を浮かせてパジャマのボタンを外していく。

 やがて、上半身が露わになった。

 彼女はそのままオレの手を掴んで自分の胸へと導く。


「お風呂に入る前は能動的に触ってもらえなかったので」


 怜は小さく吐息を漏らしながら、指先に力を込めていく。すると、彼女の口から艶やかな声が上がった。

 柔らかな感触と温もりが手を通して伝わってくる。

 さらに彼女はオレの手を掴み、ゆっくりと動かしていく。

 オレはされるがままになっていた。抵抗すれば、きっとこの行為は終わるだろう。だけど、出来なかった。目の前にいる妹に対して、性的なことをすることに対しての嫌悪感を抱くことが出来なかったからだ。

 むしろ、このまま受け入れたいという気持ちすら芽生えていた。


「ふぅ……んっ……」


 怜は身体をビクビクさせながら、刺激に耐えている。やがて、彼女はオレの手首を掴む力を緩めた。そして、潤んだ瞳を向けて告げる。


「お兄様、もっと強く揉んでもいいですよ」

「えっ……」

「お兄様に気持ち良くなって欲しいんです……。お兄様の手であたしのおっぱいを虐めて欲しいのです……」

「……」

「お願いしますぅ……!」


 切なげに懇願され、オレは思わず固まってしまう。そして、ゆっくりと右手を動かし始めた。

 最初は優しく、徐々に激しく。

 その度に怜は大きく喘いだ。


「ああっ! いいっ! 気持ち良いですぅ……。お兄様の愛を感じます」

「怜……」


 オレは無心になって、妹の胸に手を這わせ続けた。彼女の胸の柔らかさは極上のものであり、ずっと触れていたいという欲望に駆られてしまう。

 だが、彼女の方はそろそろ限界のようだった。呼吸を荒くし、身体を震わせる。

 それでも構わず、ひたすら弄り続ける。すると、怜は涙目になりながら最後に体を大きく弾ませる。


「んんっ! はぁ……、はぁ……。ああぁぁんっ!!」


 次の瞬間、彼女は背中を仰け反らせた。満たされたような顔を見せる彼女はそのままオレの上に倒れ込む。それと同時にオレも脱力した。

 しばらく経ってから怜が口を開く。


「お兄様、とても良かったです。また今度もいっぱい可愛がってくださいね」

「う、うん……」


 返事をするだけで精一杯だった。その後、勢いのままに自室のベッドに倒れ、眠りにつく。

 翌朝、オレは普段より早く目が覚めた。カーテンを開けると、まだ薄暗い空が見える。時計を見ると午前五時を指していた。

 自室で寝たはずなのになぜか隣にいる怜はまだ眠っている。幸せそうな寝顔をしており、起こすのは忍びない気がしたが、今日は学校があるのでそうも言っていられない。


「起きろ」

「はい、おはようございますお兄様」


 以前と違って敬語で話すようになった妹は満面の笑みで挨拶してくる。

 オレはそのことに戸惑いつつも朝の支度を始めた。

 朝食を食べた後、オレたちは家を出て登校する。


「兄貴、今日もするわよ」

「……」


 外に出るなり、怜はいつも通りの態度で接してきた。ただ中身はそのままと言わんばかりにあのイチャイチャの話を持ち出してこようとする。

 オレはそれを何とか回避しつつ、通学路を歩いた。これまでの通学と違い、今日からはおそらく妹がくっついていくのはほぼ確定だろう。

 オレのルーチンは、妹の変化と共に大きく動き出そうとしていた。


 授業を経て昼休みになり、オレはまたもや花崎さんに連れられて屋上に行く。


「兄貴たちならここに来ると思っていたよ」


 これまでと違い、そこには積極的に動くようになった怜の姿があった。彼女は嬉しそうにこちらを見つめてくる。

 妹の好感度はどんどん増える。昨日の交わりがきっかけの一つなのは、まず間違い無いだろう。


「兄貴、昨日は楽しかったね」

「まぁ、そうだな……」

「じゃあ、今度はいつデートしてくれるの?」

「それは……」

「ねえ、橘くん、そこの女に何されたの?」

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