壱 黒揚羽
――ひらり。
誰も居なくなった夜の校庭。
パキリと空間がひび割れて、その亀裂から崩壊する隠り世が顔を覗かせる。
――ひらり、ひらり。
そこから、一羽の
――ひらり、ひらり、ひらり。
その瞬間、ぐわりと空間が歪んで、顔を覗かせていた隠り世が消え去った。まるで、その
――ひらり、ひらり、ひらり、ひらり。
****
■■■、■■■にて。
辺りは枯れ木で埋め尽くされている。よく見れば、枯れたそれは桜だと分かる。この桜はいくら季節が巡れども、その枝に蕾をつけ、それを開かすことは無い。
この桜は死しているのだ。死して尚、永遠にこの場に根差しているのである。
――ひらり。
死した桜が立ち並ぶ中、何処からか一羽の
それならば、
――ひらり、ひらり。
悠々と羽ばたいて、目指すのはその場の中央。
そこには
――ひらり、ひらり、ひらり。
しばらく
「……そう、あの哀れな
その者――女は首を横に振り、小さく息を吐き出した。その声には惜しむ色が滲んでいる。余程、孤独な
「まぁ……いいわ。あの程度の力、
しかし、その色もすぐに薄れた。居なくなってしまったものは仕方がない。女は、
「嗚呼、恨めしや、恨めしや――安倍緋月、安倍の一族。待っていなさい、すぐにでも私たちが滅びへと導いてあげるから……」
くすくすと、女は小さな笑い声を上げた。ふい、と蝶が止まった指を振る。
――ひらり、ひらり、ひらり、ひらり。
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