〜STAGE1.生命の巨塔を修復せよ〜
1.不摂生がたたって
「うぎゃあああああああああああああああああッッ!」
【
朝、目が覚めると同時に突然、脇腹に激痛が走ったからだ。
脇腹を押さえながら息を整え、周りを見る。
京都府宇治市にある安アパートの2階の、自室だということを確認。服や雑誌、食べた後のカップラーメンの容器が、床に散乱していた。
12月15日の朝。ヒンヤリとした空気が、体に突き刺さる。掛け布団がベッドの下に落ちてしまっていた。
居酒屋チェーン店に勤務する飛田は、残業を済ませ深夜2時30分に帰宅。アパートの自室に戻るなり、あまりの疲労に体から力が抜け、スーツを身につけたままベッドに倒れ込んだ。暖房をつけるのも忘れ、眠りに落ちたのだった。
「……はぁっ、はあ……出勤の……支度せねば……!」
ベッドの中で腹を押さえながら歯を食いしばる飛田。内臓をヤスリでこすられたような脇腹の痛みが、断続的に襲ってくる。
「はぁ、はぁ……、う、うぉぅ……うああああッ!?」
痛みが一度おさまったので少し体を起こすが、再び突き刺すような痛覚が、腹の中を電撃の如く走り回る。
1分ほどのちに、また痛みが和らいでいった。飛田は軽く深呼吸して気持ちを落ち着け、慎重に体を起こしベッドに座った。また痛みの発作が起こるのを恐れながら。
飛田は、多少の体調不良でも仕事を優先していた。
今日もいつも通り、朝にシャワーを浴びてから出勤するつもりだった。だが、さすがに痛みのレベルが我慢できる
いつ来るか分からぬ発作に怯えながら、勤務先の居酒屋に、休む旨の連絡を入れた。
「……はい、体調不良のため、今日は大事を取って……はぁ、はぁ、休みます。……はい、ありがとうございます」
何とか了承を得て、この後どうするか考える。
ギリギリ耐えられるか耐えられないかという程度の痛みだったため、救急車を呼ぶか、あるいはタクシーですぐ病院に行くか、迷っていた。
ボーッとする意識の中、ふと昨夜の記憶——ログハウス調の小屋で老人に言われた、【勇者】やら【魔王】やら【生命の巨塔】やら——が、飛田の脳裏をよぎる。
あれはきっと、昨夜見た夢だったのだろう。そして夢の中でも、脇腹の痛みが増悪したのを自覚した。
その激しい痛みが、現実世界へとしっかりと引き継がれている。否、元々患っていた脇腹の痛みが睡眠中に悪化したから、夢の中でも痛みが出た、というのが正確なところかもしれない。
職場での人間関係のストレスに加え、ジャンクな食生活、昼夜逆転の生活、極度の運動不足——。最近の飛田は、病気の温床を築くような生活ぶりだった。
そこにきて、暖房をつけずに2℃の部屋で、着替えもせず眠ってしまった。そのせいで体が冷えたのも、痛みが増悪した一因だろう。
何か深刻な病気だったら——。嫌な考えが脳裏をよぎった時。
再び飛田の脇腹に、電撃が走る——。
————————
※お読みいただき、ありがとうございます。
飛田優志よ、どうか無事で!
病魔の正体が気になる!
飛田優志と勇者の関係が知りたい……!
と思ってくださいましたら、
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