第18話 シェダー、階段を登る

「わぁ! 綺麗な服が沢山! 着ていいの?」


「はい」


「クリアさんが買ってくれたの……?」


「いえ。マオさんが買ってくれたんです。私とマオさんで選びました。気に入って頂けると嬉しいのですが」


 魔王討伐の決意をしたクリアは次の日、密かな願いであったシェダーの服を買いに行った。クリアは無一文なためマオに相談したところ「私のところに住む子どもがボロ布着てるのは困るからね」と言いながらノースンで一番人気のある服屋に出向きポンと金を出してくれたのである。


 流石に無条件で買ってもらうのは気が引けたので貸しにして欲しいとクリアは交渉したが「端金だしいらん。お前もその服以外ないなら余所行き用の買いなさい」と逆に自分の分の服代まで出してもらってしまった。世話焼きなツンデレお婆ちゃんである。


(世話になりっぱなしだな。……でもシェダーも喜んでるし相談してよかった)


 シェダーに対し思うところがあるようだがそれを差し引いても破格の待遇だ。色々申し訳ない気持ちはあるが何もかも足りない現状、クリアは甘えさせてもらうことにした。


「そっかありがとう。マオさんにもお礼言ってくる!」


 両手いっぱいの新品の服を抱えたままシェダーは駆け足でマオのところにレイをしに行った。その微笑ましい姿にクリアは胸があたたかくなる。


(……シェダーは『生贄』としてルプスに捧げられていた。それが偶然なのかそれとも意図的なものなのか……それ次第で今後の方針が変わるな)


 クリアにとって守るべき存在であり心の癒やしであるシェダー。しかし彼には謎が多い。何故彼は村で虐げられていたのか。何故彼は『生贄』にされたのか。何故彼は傷の治りが異様に早いのか。彼の探す両親とは何者なのか。どれも今答えを出すことが出来ないものだ。


(シェダーが魔王に狙われているなら一緒に行動すべきなのか……それとも安全なところに避難させるべきなのか。でも安全なところなんてあるか……?)


 一緒に両親を探そうと約束した手前離れるのは躊躇われるが魔王討伐にはどうしても危険が伴う。それにシェダーを付き合わせるのは、とクリアは迷っていた。どうしたものかと悩んでいると新品の服を着たシェダーが帰ってきた。


「着てみたんだけど……似合う?」


 上質な白いシャツと紺色の半ズボンに身を包んだシェダーは活発的な印象でとても可愛らしい。外見と中身が可愛いんだからまあ可愛らしいのは当然なのだがボロ布時代に比べると儚さよりも健康的な愛らしさが増したのだ。


 くるくると回り正面と背中両方の姿を見せてくれる仕草はもう犯罪的なまでにキャワワであった。


「とてもよくお似合いですよ」


「えへへ……」


 クリアが心から褒めるとシェダーは嬉しそうにはにかむ。はい可愛い。クリアの中の萌えゲージがギャン上がりである。


「私も服を買っていただきました。着替えてきますので今日は街を探索しましょう」


「はーい」


 探索というワードが少年心にヒットしたのかキラキラと瞳を輝かせ頷くシェダー。そんな彼が愛しくて頭を何度も撫でた後「では着替えてきますね」とクリアは隣の、自分の部屋へと戻った。


 街の探索のため露出を控えつつ動きやすいものをチョイスする。選ばれた黒の縦セタと紺のスキニーパンツをベッドに置く。


(まさか縦セタやジーンズが存在するとは……侮れんな異世界)


 時代背景は不明だがよくある中世ヨーロッパ風な雰囲気の街並みなのに普通に日本でも取り扱っているような馴染みのある服を見つけ思わず買ったクリアである。巨乳×縦セタは正義という謎の信仰もあった。


(と、その前に下着つけねえとな)


 実は下着付けてない設定であったためスースーさせながら今まで活動していたヤベー女なクリアだが魔女衣装はともかく普通の衣装でそれはマズイよなとマオに買ってもらった下着をベッドの上に置く。


「でっか……」


 ふつーに存在するブラジャーを手に取り思わず感嘆の声が漏れる。ナニコレ。小さめのスイカ掬えるんじゃね?なサイズのブラに圧倒されていた。


(えっとこれがホックで……)


 元男子高校生のクリアは当然ブラジャーを装着した経験はない。あと彼女もいなかったので実際着けるところを見たこともない。そのため二次元的知識を総動員して装着しようとしたのだが……。


(おおおおお……!! 何度見てもすげぇ!!)


 昨晩風呂場で見て一頻り大興奮したとはいえまだ女体に慣れていないクリアは自身の神が創造したのではと見紛うほどの抜群のプロポーションな自身の体に感動していた。まあ実際神が創造した体なのだが。


(うわぁ柔らかいしハリあるし形が全く崩れてねえしピンクだしすんごい……いつまでも見てられる……が、シェダー待たせてるからな)


 思う存分堪能したい気持ちを抑えクリアは下着を身につける。履くだけのパンツはともかく胸を収めて背中のホックを留めるブラジャーには多少苦戦したがどうにか装着する事が出来た。そこからスキニーパンツと縦セタにコートを羽織れば街中ファッションの完成である。


「髪も括るか」


 そのまま下ろしていてもいいがせっかくだし、と鏡とにらめっこしながら髪を梳かし首の後ろ辺りに纏め、紐で一つに括る。ファンタジーな魔女から休日のOL的な大人のお姉さんへの変貌にクリアは満足そうに頷いた。


「お待たせしました」


「ううんそんなに待ってないから大丈夫……」


 そわそわしながら待っていたのかクリアが部屋に入ってきた瞬間にくるりと振り向いたシェダー。しかし着替えたクリアを見てピタリと固まった。


「……変でしょうか」


 シェダーの反応からやっべ、ちょっと世界観無視しすぎたかなとクリアが反省しているとフリーズしていたシェダーがぶんぶんと首を横に振る。


「う、ううん! とってもよく似合ってるよ! 綺麗!」


「そ、そうですか。ありがとうございます」


 頬を紅潮させつつ賛辞の言葉を述べるシェダーにつられクリアもちょっぴり照れる。熱くなる頬を押さえるクリアに対しシェダーはというと。


(クリアさんが凄く綺麗でびっくりした……でもなんだろう……いつもの格好より色々隠れてるのにもっとドキドキする気がする……!!)


 普段の肩や胸の上部分、そして太ももが豪快に露出した格好からしっかり隠れつつも体のラインが分かる服装にとてつもない色気を感じドギマギしていた。特に縦セタのラインを歪める胸部分を見ると謎の高揚感が生まれていく。


 露出よりも隠された女体の方がエッチと感じる事もある。シェダーはその心理に気づき別に登らなくてもいい大人への階段を登り始めたのだった。





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