第15話 言葉は掌で語られる

「そんな危険です! 灰の魔王でないとしても身元が分からぬ者達ですぞ!?」


「だからこそだ。分からんからこそ私が面倒を見る。案ずるな。ダテに長生きしとらん」


 マオの提案に危険すぎるとリデルは異を唱えるがそれを受け流し逆に押し切る。完全に力関係がマオ>>>>リデルだ。超えられない壁のようなものまで見える。


「皆の者。この者達の身柄は私が引き取る。少なくともこの者達と灰の魔王は無関係だ。魔王の復活で不安な気持ちなのは分かるが今は収めてくれ。この者達が何かを問題を起こしたら……私が責任を取ろう」


「マオ様……そこまでこの者達に……」


 年老いながらもはっきりと明瞭な声でマオは宣言する。それはギルドの面々に対し恨みで視野を狭めるなという忠告とクリア達に対し何も問題は起こすなよと牽制するものであった。


 表立って反対をしていたリデルもマオの頑なさに折れたようで何かあったらすぐ連絡してくだされ、とマオに呼びかけていた。


「……クリアにシェダーだったか。わしは灰の魔王とその配下と言って騒ぎ立て捕らえ……始末しようとした。しかしマオ様がここまではっきりと無関係と断じるのならそれは間違いじゃったのだろう。申し訳ない……」


 そしてクリア達に手荒な事をしようとした事を心から謝罪した。頭を下げられクリアは……取り敢えず無言でいた。


(若干頭下げられて溜飲は下がったが婆さんが助けてくれなかったら最悪冤罪で殺されてたからな……こっちが怪しすぎるの差し引いても「いえいえ、いいんですよ」、で済ませたくねえ……)


 聖人君子なイイヤツならばここで頭を上げてください……と清らかな笑顔を向けていたのだろうがクリアは俗物でありそこそこにゲスい。とはいえ悪人とまではいかないのでこちとら死にかけたぞどうしてくれるんだおらぁん!?!?と脅すまではいかない。


 誤解で下手したら殺されかけましたおこなんですけど!! という感じの不機嫌オーラを出しておく。長身美女の迫力ある冷たい視線にリデルは僅かに震える。死を覚悟しているのかもしれない。そこまでの怒りではないが周囲にはそう見えているようで孫娘のレセが私も謝ります!ごめんなさい!とペコペコと謝りだした。


 すると他のギルドメンバーも同様に頭を下げはじめクリア、シェダー、マオ以外の全員が謝罪の意を示す。


(……うーん。まだ許しませんよポーズしてみたけどこれイジメてるみたいでやだなー。なんだかんだ被害はないんだしなあなあで済ませたほうがいいか?)


 俗物ではあるが半端に良心も持ち合わせているため全員からの謝罪に逆に罪悪感を抱き始めるクリアは同じ当事者であるシェダーに話しかける。


「どうしますか?」


「へっ?どうって……?」 


「皆さん謝ってくれました。私としては思うところがないわけでもありませんがこちらに直接的な被害がなかったわけですしいいかなと。シェダーはどう思いますか?」


「……うん。ぼくも疑われて怖かったし悲しかったけど……いいと思う。怪我も無かったしごめんなさいされたらいいよって言いたいよ」


 大人達の殺気に当てられ囲い込まれ怖かっただろう、小さな子どもの健気な言葉に団員達は「こんないい子に自分達はなんて事をしようと……っ」と次々に涙ぐんでいた。


 ピュアな心がササクレた大人達の傷を癒やしつつ罪悪感で塩水ぶっかけるある意味お辛い仕打ちである。それを計算でしていないあたり恐ろしい子……とクリアは戦慄するのだった。 


「とのことですので頭を上げてください。誤解はあれど私達は同じギルドに所属する仲間……でいいんでしょうか?」


 シェダーに続きいい感じのセリフを言おうとするクリアだがふとあれ、なんだかんだ有耶無耶になったけど結局ギルドに所属したんだっけ?とリデルに確認を取るクリア。どこまでも締まらない女である。


「……ああ。身元が分からんのは少々アレだがマオ様が面倒を見るということなら問題ない。受理しておこう。むしろいいのか?わしはお前達を迫害しようとしたのじゃが」


「……謝らず紛らわしいお前達が悪いと開き直られたら考えましたがきちんと頭を下げていただきましたし。シェダーの両親の手掛かりを探すためにも大手のギルドの方が安定しそうですし。なので……これで仲直りということで」


 クリアは申し訳無さそうに項垂れるリデルに手を差し出す。それが握手を求めているものだということはリデルにも理解出来た。リデルは涙を一筋流した後、ああよろしく頼むとクリアの手を握る。その後屈んでシェダーにも握手を交わした。


 その後クリア達は他の団員とも握手を交わしなんだかんだ和解を果たした。


 この事は後に灰の魔王騒動として戒めと美談が折り混ざったエピソードとしてノースンに語り継がれる事になるのであった。

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