第13話 冤罪だめ、ぜったい

「貴様、灰の魔王ヴァイスか!」


「違いますが!?」


 そんな雑な、共通点とも言い難いもので関連付けられてはたまらないとクリアは首を横に振りつつ手を左右に動かす。その動揺っぷりはクールビューティーさの欠片もないものである。それが逆に怪しむ要素になったのかギルド長は更に険しい顔になる。


「その動揺っぷり……怪しいわい。仮に違うとしても村の近くにいたんじゃろ? シミナを滅ぼした犯人の可能性は極めて高い。しかも村の住人と共におる」


「いえ、それは偶然で……それに私が犯人なのだとしたら理由は?」


「魔王は気まぐれに殺戮を繰り返す。常識など通用せんわ」


「……まあ魔王ならそうかもしれませんが。そんな大規模な事件を起こしたら呑気に近くの街のギルドに足を運ばないと思うのですが……バレますよ。あとそこまで恐ろしい存在なのでしたらこうして対話せず問答無用で灰にしているかと」


「そう思わせ違う奴と油断させるためかもしれんじゃろうが!」


「それ言ったら何も弁明出来なくなるのですが」


「違うよ!クリアさんは灰の魔王なんかじゃないよ!ぼくが大きな狼に襲われているところを助けてくれたんだ!」

 

 クリアとギルド長の問答に縮こまっていたシェダーであったが勇気を振り絞りフォローの言葉を投げかける。その言葉にギルド長は一瞬瞳を揺らがせるもののぐっと下唇を噛み拳を握る。


「……手下の魔物に襲わせ助けた可能性だってあるわい! その子どもも眷属にされているかもしれん!両方捕らえるのじゃ!」


 よほど灰の魔王とやらは恐れられているのか緊迫した空気に包まれる。


「えっ、確かに可能性はありますけど確実にそうと決まったわけじゃ……もう少しよく調べた方が……」


 有無を言わさず拘束しろと言うリギルに孫娘であるレセは少しだけ冷静になれたのか恐る恐るではあるが意見する。リギルも思うところはあるのか一瞬だけ瞳を揺らがせるが唇を噛み締め首を横に振る。


「半年前、娘と義息子は……お前の両親とわしの妻は無惨にも灰となっていた! その時から決めたのじゃ! わしはギルド長として、そしてノースンを守る者として灰の魔王と配下である可能性がある者は容赦せぬと!

少しでも、ほんの僅かでも可能性があるならば生かしておけん!」


 ギルド長の激高に騒ぎを聞き駆けつけた周囲はそうだったのかと同調し捕えようとする者といやそれは無理があるんじゃと思いながらも口を挟めずオロオロする者が大半であった。


(え、まさかこのまま犯人として捕えられて前科持ちになんの? あるあるなギルドイベントをノリでやっただけで? 実力隠しとかした方がよかったのか!?)


 しかもたった今知った魔王とやらにされてヘタしたら処刑される可能性まで出てきた事にクリアは絶句した。下手に抵抗すれば疑惑が深まりそうであるしなんとか逃げ出せたとしても指名手配され国中から追われるかもしれない。


(嘘だろこんなガバい疑惑で捕まった挙げ句最悪殺されるとか最悪だろ。シェダーだけでも逃がせねえかな……)


 自分で設定した超ツエーチート能力&容姿がこんな事で足を引っ張るのは完全に想定外であった。ギルド長が魔王に家族を殺されているらしい事もマズイ。さきほどまでなんだかんだ言いながら親切だった人柄も消え失せ冷静な判断が出来なくなっているようだった。

 

 そんな祖父に孫であるレセはおろおろしながら涙を滲ませる。捕らえろ、抵抗したら殺せと叫ぶ場の雰囲気に呑まれているのかもしれない。


(……家族殺されればそうなるか……俺は無関係なんだがどう信じてもらえればいいんだ……? この場は説得を諦めて足元を凍らせて逃げるのも手だが逃げたら逆効果だろうし)


「……ク、クリアさん……怖いよ……」


「……静かに。今は刺激してはいけません。私がきっとなんとかしますから」


 灰の魔王に恨みを持っているであろう人々に囲まれクリアは冷や汗をかきながら周囲の殺気に震えるシェダーを抱きしめる。この理不尽な展開にどう打破すべきか頭を悩ませていると。


「騒がしいね。なんの騒ぎだい」


「マオ様!」


 扉が開くと同時にしがれながらも威厳のある声が喧騒としたギルド内に響く。現れたのはエルフ耳の老婆であった。

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