第7話 べ、べつに目覚めてなんかないんだからねっ

 互いに手を取り合いその場から去る時、クリアは念の為自分で凍らせた狼をチラリと見る。分厚い氷に包まれているため生きているかも分からないが少なくとも氷が溶けるまで襲いかかってくる事は無いだろう。そう思い離れようとするのだが……。


「魔女さん? どうかしたの?」


「いえ……何か違和感があるような……」


 クリア=オロスウィーニーの能力の一つに魔力探知というものがある。具体的に言うとその場にある魔力を感じ取りその性質を見抜いたり同じ魔力を纏うものを察知するといった事が出来る地味ながらも便利な能力だ。


(んん……? なんか妙な気配というか魔力を感じるんだよな……しかも………)


 神経を研ぎ澄ませないと分からないがこの狼とシェダーの魔力の波長がほんの僅かに一致した気がしたのだ。


(……この世界についてはよく知らねーし…………猿と人間だって遺伝子学上は99%同じって言われてたりするしな。魔力だって一部分が一致してもおかしくない……のか?)


「……一応お聞きしますがこの狼と面識は?」


「へ? うーん……無いと思うけど……」


「そうですか」


(嘘ついてる感じでもねーし……まあいいか)


 まだこの世界に来たばかりでよく分からん、他に考えるべきことがあるだろう、シェダーは見るからに弱そうだし無関係だろうと目の前にいるショタが好ましいという理由だけでクリアは狼とシェダーの関係性について考えるのを止めた。


「あの……どうしたの……?」


 心配そうに声をかけてくるシェダーの方に視線を送る。するとクリアとしての体がシェダーよりも40cm以上高い事もあり一生懸命背伸びをしながら見上げるイジらしい姿にクリアは今まで感じたことのない衝動に突き動かされる。


(か、可愛いなこいつ…………おかしい……俺は綺麗な年上のお姉さん単品とショタを可愛がるお姉さんが好きなだけであって別にショタ自体に萌えを感じていたわけでは……まさか俺に母性が目覚めたというのか……!?)


 魂が体に引っ張られ困惑するシチュエーションを割と好んでいたクリアだが自分にその疑惑が生まれ激しく動揺する。


「……いえ。それよりも情報収集がしたいですね。この辺りで大きな街はないでしょうか」


「それならノースンかな。この辺りで一番大きいところだよ」


「ノースン……分かりました。それはそれとして……シェダー。貴方の住んでいた村に何か心残りはありませんか? 大切な物が仕舞ってあるとか……」


「ないよ。ぼくにはこれだけあればいいんだ」


 誇らしげに服の中から出したのは赤い宝石が埋め込まれたネックレスだった。キラキラと光るその宝石の輝きにクリアは目を奪われる。


「すげぇ……………こほん。とても綺麗なネックレスですね。どこでそれを?」


 思わず素が出そうになりクリアは咳払いして誤魔化しつつ訊ねる。そのネックレスはとても高価そうで質素な衣類を纏うシェダーには不自然なものだからだ。クリアの問いにシェダーは「赤ちゃんの僕と一緒に籠の中に入ってたんだ。だからお父さんかお母さんが入れたんだと思う」と宝石のような赤い瞳を輝かせて答えた。


 そんなシェダーにでは大切にしなくてはですね、と優しく頭を撫でると照れくさそうにはにかむので母性本能(?)を刺激されまくるクリアなのだった。

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