第3話 死んだら思い描いた理想の姿になっていたよ不思議だね

(……まじかー)


 神による謎の光に包まれ次に目を開けた時、最初に映ったのは一面に広がる積もった白い雪。氷の張った池、ファンタジックな角の生えた兎。そして日本と相違ない青い空であった。一つ違う点を挙げるとすれば浮かんでいる太陽に似た光体の近くに四角い箱のような物体が浮かんでいるところだろうか。


(なんだありゃ。異世界なの分かりやすいな……)


 吐く息は白く常人であれば凍えるであろう寒々しい気候にも関わらずまるで寒気を感じないどころか心地よいとすら感じる体の変化に恐る恐る下を向く。するとマントと黒のボディコン衣装に身を包むド迫力の豊満なボディが見えた。


 胸は盛ってウエストは細すぎず、でも太すぎず尻太ももは気持ちボリューム多めに! と性癖と情熱を注ぎ込んだ理想の肉体がそこにある。


 内心ビビり散らしながら氷の貼った池に顔を映すと……そこには思い描いていた美貌が映っている。ちょっとしたこだわりで付けた口元の艶黒子もちゃんと付いている。神の言っていた事は本当なのだと判明し透はぺたりと尻もちをつく。臀部からひんやりと伝わる冷たい感触にこれが夢ではないと実感させられた。


(……本気にすんなよあんな戯言…………しかも周りに誰もいねえし……)


 転生なら普通赤ん坊から意識があるか途中思い出すパターンで親や家族がいるもんじゃねえの?


 と愚痴を零すが同時にホッとしていた。いきなりはい、新しい家族ですと言われても多分受け入れられなかっただろうからだ。


(見知らぬ世界で身寄りのない女と考えるとハードモードだけどな……女……そうか俺、女になったのか……『青山透』じゃなくて『クリア=オロスィーニー』に生まれ変わったんだ)


 そう認識すると青山透として生きてきた感覚が薄まっていく。自分は透ではなくクリアなのだと肉体が告げているように思えた。それは神が何かした結果なのかそれとも魂は肉体に宿る云々の与太話が本当だったのか。透もといクリアには分からない。ただ中身がVtuberとして設定したクリアそのものに挿げ替えられたのではなく『自分』のままである事は救いであった。


 周囲を見回し人がいない事を確認した後、(元)男子高校生として一番興味があった胸に触れる。むにゅんと指先に伝わるその柔らかい感触に興奮しつつも今まで感じたことのない『胸を揉まれている』という感覚にゾクリとする。服越しにこれなら直接触ったらヤバい事になってしまうのではと思いながらもそのボリュームのある膨らみを揉みしだくのを止められなかった。


(……『下』も女なんだよな……スカートってこんなスースーするもんなんだな……ヤバ……これはなんかヤバい……)


 失われた男の象徴を惜しみつつも新しく製造された女の部分を意識してしまい息が荒くなる。その異様な様子に近くにいた兎はなんやこいつ関わらんとこ……と逃げていった。賢明な判断である。


「──うわぁっ─!!」


 透改めクリアが謎の背徳感と高揚でアレな方向に目覚めそうになっている時にどこからか小さな男の子らしき声が聞こえた。その声は和やかなものではなく悲鳴に近い。緊急事態であると分かる。


「何だ今の……浸ってる場合じゃねえ!」


 自分から初めて発せられる透き通るような美しい声に驚きつつも急いで悲鳴のする方へと向かったのだった。

 

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