姉と妹に血が繋がっていないことを知られてはいけない

第74話 女の子からの良いことに期待しない奴はいない

「リウトお兄さんお待たせ～」

　まずは先頭を走ってきたのは紬ちゃんだ。紬ちゃんは黄色を主としたノースリーブタイプの水着を着ている。

「お兄さん、私の水着どう？」

「うん。紬ちゃんに似合っているよ」

「えへへ⋯⋯ありがとう」

　水着は紬ちゃんに似合っていてとても可愛いが、可愛いなんて口すると、バスの中のように女性陣がロリコン扱いしてくる可能性があるので言わないことする。

「ふふ⋯⋯なあに。リウトが水着の批評（レビュー）をしてくれるの？ それなら私はどうかしら？」

　アリアはそう言うと両手を頭の後ろに持っていき、まるでグラビアアイドルのような扇情的なポーズを取り始める。

　アリアの水着は、黒の肩紐がないビキニタイプの水着だ。胸も大きくスタイル抜群なので、この姿を見て否定的な言葉を出す奴はいないだろう。

「最高だ。まるでアリアのために作られた水着だな」

「ふふ⋯⋯ありがと。リウトの水着姿も素敵よ」

　アリアはコト姉のように自分の身体を見せつけてくるので、息子の制御が大変だ。ここは親父の水着姿を浮かべて、血の気を引かせるしかない。

「リウトも大変ね」

　ちひろは俺の心情を察したような言葉を吐き、ニヤニヤと笑っている。

　そんなちひろの水着はシンプルな赤色のビキニだ。

「な、何よ。こっちの方をジッと見て。まさかちひろちゃんの水着姿に悩殺されちゃったとか？」

　ちひろは冗談っぽく茶化すように言うが、頬はうっすらと赤くなり、照れているのが俺にもわかる。

「悪くはない⋯⋯いや、よく似合っていると思うぞ」

「そ、そう⋯⋯ありがと」

　いつも見ている同級生の違う姿に、俺は目を奪われてしまう。悔しいが男友達のように思っていたちひろの水着姿は俺を悩殺するには十分だった。

　そして次に現れたのは⋯⋯。

「暑いですね。肌が日焼けしてしまいそうです」

　神奈さんだ。

　神奈さんは黄色を主とした花柄の水着で、上はビキニ、下はロングスカートのセパレートタイプのものを着ていた。

　さすがは羽ヶ鷺のヒロイン。スタイルが良いのも勿論だが、何と言うか神奈さん自身からオーラのような物が出ており、俺の視線を釘付けにするには十分だった。残念ながらセパレートに隠れて脚は見えないが、それでも彼女の魅力が落ちることは全然ない。

「神奈さんの水着⋯⋯似合ってるね」

「そ、そうですか。ありがとうございます」

　神奈さんは少し照れた様子でお礼を言ってくる。

　正直今までの経緯があるため、口に出して褒めるかどうか迷ったが、やはり素敵な物は素敵だと素直に言葉にしたい。

　神奈さんも少なくとも嫌悪感を出している感じではなかったので、とりあえず安心する。

　そして最後に現れたのはアリアのメイドであるソフィアさんだ。

　俺のスカウターで紬ちゃんを除いた胸の大きさランキングは、ソフィアさん＞瑠璃＝ユズ＞アリア＞神奈さん＞ちひろ≫≫≫コト姉なので普通なら否が応でも期待が高まるが⋯⋯。

　残念ながらソフィアさんはメイド服だった。

「何ですか？ その邪悪な視線は？ 残念ですが私はお嬢様を悪漢から御守りする任務があるので、水着は着ませんよ」

「悪漢ってここはプライベートな場所じゃ⋯⋯」

「いえ、１人害虫がいるので」

　それって絶対俺のことを言ってるよな。

「だけどその害虫からアリアを護るためにも、プールに入って近くで護衛した方がいいんじゃないか？」

　俺はソフィアさんの水着姿がみたいという１０代の欲望に負けて、説得を試みる。

「確かに天城様の仰ることも一理あります。ですが水着姿になってしまうとこのようにすぐにナイフを取り出すことができませんから」

　そう言ってスカートの下に手を入れ、瞬時にナイフを右手に装備する。

　この人絶対俺がアリアの身体に触れたら容赦なくナイフを投げるつもりだ。

　俺は高温のプールサイドにも関わらず、恐怖で身体の震えが止まらない。

「そ、そうなんだ⋯⋯」

　俺はソフィアさんの言葉に対してそう答えるのが精一杯だった。

　みんなの水着姿を堪能した後、ソフィアさんに植え付けられた恐怖による寒さを暖めるため、俺は準備運動を始める。

　とにかくプールの中ではみんなとの距離に気をつけよう。

　ラッキースケベでも発動したら、ソフィアさんのナイフが俺の命を容易に狩り取るのは間違いないからな。

「リウトリウト、あんたそんな所で何をしているの？」

　少しみんなから離れた位置で準備運動をしていると、少し恥ずかしげに身体をモジモジとしているちひろが声をかけてきた。

「何をしているって準備運動だ。身体を暖めてからプールに入らないと怪我するからな」

「それはそうだけど。まずは他にやることがあるよね？」

「やること？」

「ほら、さっきプールで良いことをさせて上げるって言ったでしょ？」

　そういえばそういう約束だったな。皆の水着姿が素晴らしくて忘れてた。

　はっ！ ちひろが言う良いことってまさか！

　プールの時に準備運動の前にやることと言えば１つしかない！

「ほら、あっちの方でしてほしいな。さすがにみんなの前だと恥ずかしいから」

　ちひろが今までにない程顔を真っ赤にさせている。

　こ、これは期待していいよな？ 俺が頭の中で思い浮かべているアレで間違ってないよな？

「ほら、早くしないと肌が痛くなっちゃうからさ。こっちに来て」

「わ、わかった。すぐに行く」

　そして俺はちひろの手に引かれ、プールサイドのはじっこの方へと向かう。

「跡がつくと嫌だから脱ぐね」

　するとちひろはシートの上にうつ伏せに寝て、上のビキニの水着をおもむろに外す。

「そ、そんなにこっちをジッと見ないでよ。恥ずかしいよ～」

　俺と同じちひろもテンパっているのか、口調が何だかいつもより女の子らしい。

「そ、それじゃあリウトお願い⋯⋯」

　そして俺はちひろから銀色の缶を渡されるのであった。

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