第65話 優勝したクラスは・・・

「第3位は⋯⋯」


 俺の予想が正しければたぶん3位は2ーAだ。


「2ーAクラスのカレーです」


 やはりそうか。4位以下はないと思ったが、1位、2位には及ばないと思っていた。


「3位かあ!」

「でもまあ手間の割には検討した方じゃない?」

「そうだね。当日はほぼ接客しかなかったし、良い順位だよ」


 3位と聞いてガッカリした者もいるが、クラスメート達は概ね結果に満足しているようだ。


「2ーAのカレーはまるでお店に売っているような出来でとても美味しかった。店員さんの服装がとても可愛かったなどの意見が上げられました。お姉ちゃんもカレーを食べたけどすっっっごく美味しかったよ。またお家でリウトちゃんに作って貰おうかな」


 コト姉、めっちゃ素でしゃべってるんですけど。クラスメート達がこっちの方を見て笑ってるから。


「3位のクラスには各個人に10,000スコアが送られます。それでは次に第2位⋯⋯」


 ここに来て呼ばれていない1ーAクラスの子達は、コト姉の言葉に集中し息を飲む。

 お客さんはたくさん来てくれた。ケーキも美味しかった。もしかしたら⋯⋯という気持ちがあるのだろう。


 正直な話、1位、2位は1ーAと2ーDの一騎討ちだた思う。下馬評だと2ーDの方が有利だったが、学園で絶大な人気があるコト姉がケーキを作りに加わったことにより、勝負はわからなくなった。


「ユズユズ⋯⋯勝てるかな」

「きっと勝てます。兄さんとお姉ちゃんが手伝ってくれたから」


 ユズと瑠璃は目を閉じて祈るようにコト姉の言葉を待っている。


「1位と2位は例年にない程の僅差でした。まずは第2位から⋯⋯」


 この教室にいる全ての者がコト姉の言葉に耳を傾ける。

 ユズに⋯⋯1ーAクラスに勝たせて上げたい。

 絶望から始まった新入生歓迎会。だけど俺やコト姉、そしてクラスの力でトップを狙える位置まできた。ユズや瑠璃、楓さんの頑張っている姿を目の当たりにしているから1位になってほしい。


「2位は⋯⋯2ーDクラスのメイド喫茶で~す。メイドさんのクオリティーが高い。接客が完璧だった。本当にご主人様、お嬢様の気分を味わえたなどの意見が上げられました。そんなにすごかったんだ。お姉ちゃんも行ってみたかったよ。2ーDクラスには各個人に30,000スコアが支給されます」


 最大のライバルである2ーDが第2位。この言葉を聞いて1ーAの子達はいやが上にも期待が高まる。


「ユズユズ⋯⋯もしかして」

「う、うん⋯⋯」


 ユズも瑠璃もワクワクした表情でコト姉の放送を待つ。

 実は意外なダークフォースがいた可能性もあるが、たくさんのケーキの注文があった事実が、1ーAクラスの子達の自信になっており、誰もが優勝を疑っていない様子だった。


「それでは第1位を発表します。第1位は⋯⋯⋯⋯」


 コト姉は最後の発表だからなのか溜めを作り、こちらを焦らしてくる。


 そして⋯⋯。


「1位は1ーAクラス出来立てケーキのお店です」


 コト姉の言葉が耳に入ると、この教室にいる者達は喜びを露にし、狂喜乱舞する。


「やったねユズユズ!」

「はい! 瑠璃さんやりましたね!」

「うぉぉぉ! まさか1位になれるとは!」

「これもリウト先輩と琴音先輩のおかげです!」


 1ーAのクラスは誰もがはしゃぎ、喜びの声を上げていた。

 普段冷静沈着なユズでさえ、笑顔でクラスメート達と喜びを分かち合っている。


「良かったな! おめでとう」

「ケーキとっても美味しかったから納得だね」

「材料も人も足りない所からのスタートでよく巻き返したね」


 そして2ーAのクラスメート達も悔しいとかではなく、純粋に1ーAクラスの勝利を祝福しているように見えた。

 自分達の順位が下がった原因を1ーAに行かせないように、ケーキを差し入れしたかいがあったな。

 人と言うのは簡単に敵とか味方を作りやすい。それならば早いうちに味方につけとけば、何か問題が起きてもこちら側になってくれる可能性が高く、少なくとも後輩からケーキを差し入れされて悪い気になるやつはいないだろう。


「え~と投票してくれた意見の中には、新入生歓迎会で出来立てのケーキが食べれるなんて思いもしませんでした。とっても美味しかったです。それと1年生にトラブルが起きて、そのクラスの子のお兄さんとお姉さんが手伝っている姿が尊かったです。柚葉ちゃんと琴音会長のケーキが食べれて最高でした⋯⋯ってそんなこと言われるとお姉ちゃん照れちゃうよ」


 俺とコト姉がケーキ作りを手伝っていたことはみんなに知れ渡っていたんだな。おそらくそうじゃなきゃ2ーDクラスに勝つことは出来なかった。


 俺の予想通りだ。

 実は俺が休憩している時、ちひろに1ーAの現状を周りに広めるよう頼んでいた。

 2ーDクラスとは接戦になることはわかっていたので、少しでも勝率上げるために動いてもらったかいがあったというものだ。


「1位になった1ーAクラスには各個人に50,000スコアが支給されます。ちなみに新入生歓迎会は今年で5回目になるけど1年生が2年生を破って優勝したことは今までで1度もなかったんだって。1ーAクラスは歴史を作ったね。けどたくさんのスコアをもらったからって使いすぎちゃダメだよ」


 確かにコト姉が言うように、毎年スコアが入ったからといって散財する奴がいたりするんだよな。今回は順位が悪くてもスコアがマイナスになることはないけど、いざという時のためにスコアは残して置いた方がいい。


「この後は校庭に作られた野外ステージで後夜祭があるから、みんな最後まで楽しんでいってねえ」


 こうして新入生歓迎会で2ーAは3位に1ーAは1位を取り、後夜祭へと時は移るのであった。

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