第4章〜白草四葉センセイの超恋愛工学Lesson1〜③

 そんな壮馬をよそに、竜司は会話の立て直しを図るべく、語る。


「と、ともかく、だ……ウチの母親には関わらない方がイイぞ! 白草が、ミンスタグラマーとして有名人と知ったら、間違いなく、『SNSで商品を取り上げてちょうだい!』って、絡んでくるから……」


「そう言えば、昨日言ってたよね。このマンションの一階は、黒田クンのお母さんのお店だって……どんな商品を扱ってるの?」


四葉の問いには、壮馬が答える。


「輸入品のインテリア用品全般だよ。ツカサさん……竜司のお母さんは、主にオーナーとして海外に商品の買付に行ってることが多いから、お店には居ないことの方が多いみたいだけど……」


 壮馬の解説に、「ヒトの身内のことをあまりペラペラ喋るな……」と、友人をたしなめつつ、竜司は、


「今月もパリに出張中だよ……一年のうち日本に居るのは、半年くらいだしな」


と、ぶっきらぼうに語った。


「そうなんだ! インポートのインテリアショップか〜。カワイイ物がたくさんありそう! あとで、お店を見に行ってもイイ?」


 輸入品のインテリア用品という言葉を耳にし、『カワイイ』を追求するクローバー・フィールドの主宰者として、四葉は興味津々といった感じでたずねる。


「いいんじゃないの? マナミさんも、白草さんが来てくれたら喜ぶんじゃない?」


 オーナーである竜司の母親・黒田司に、店舗とインターネット販売の運営を任されている大西真奈美の名前を出して壮馬は、答える。

 しかし、


「まぁ、店をのぞきたいと考えるのは、白草の自由だが……」


と、あくまで、白草四葉と母親の経営する店舗との関わりを避けたい、と考えているのか渋い返答の竜司に、


「ナニ言ってんの? 新しいクッションも、ツカサさんとマナミさんの好意で用意できたんでしょ? 新しい友だちを紹介しておくのは当然じゃない?」


 壮馬は、淡々と正論めいたことを語り、友人の説得にあたった。

 その一言に、四葉は、足もとを確認し、クッションに目を向ける。《竜馬ちゃんねる》の編集スタジオには、昨日の夕方から、クッションが一つ増えていた。


「このクッション、お母さんのお店のなんだ!? へぇ〜、生地もカワイイし、フカフカで座り心地もイイよね!?」


彼女が感想を述べると、壮馬が反応し、


「でしょ? お値段もなかなかのモノらしいよ。ね、竜司?」


と、友人に回答を求める。


「あぁ……今どきクッション一つに、数万円も払ってくれるブルジョアな皆様のおかげで、ウチの親の会社も経営が成り立っているみたいだからな……ちなみに、その生地は、パリで買いつけてきたんだってよ」


 またも、素っ気なく答える竜司の言葉に、四葉は、目を丸くして答えた。


「そんなにイイ物だったんだ!! それじゃあ、より一層お店に行って、キチンとお礼をしないとね!」


 彼女の一言に、壮馬は微笑みながら、「……だ、そうだよ」と、竜司に声を掛ける。


「…………あ〜、わかったよ!今日は、土曜だから、昼間は来客が多いかも知らん。邪魔にならない時間に店に行かせてもらう、と真奈美さんに伝えとくよ」


 彼から引き出した満額回答に、「ありがとう! 楽しみにしてる!!」と笑顔で答えた四葉は、


「さて、それじゃあ、今日の本題に入りましょうか?」


と、話題とともに、表情を変える。

 恋愛アドバイザーとして、講師然とした面持ちの転入生の様子に、準備が整ったことを察した壮馬が、前日と同じように、クロームブックを持ち出す。


「昨日と同じように、今後のために、記録を取らせてもらうよ」


 そう語る壮馬に、うなずきながら、白草四葉は、「では……」と、一言発してコホンと可愛く咳払いをしたあと、


「まずは、黒田クンが最初に取るべき行動について話していこっか」


と、切り出した。

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