庭の柘榴 ― 腸詰の花 ―
腸詰の花
「いつもは、何をして
「えゝ、何だか――することも御座いませんの。
「
「えゝ、お洗濯をしたり、まかなひさんのお手つだひでお掃除をしたり…… それからね、看護婦さんやまかなひさんと一緒に、お庭をお散步したり…… こゝのお庭はずいぶん
「
「えゝ、お祈りがある時には、患者さんでもね、看護婦さんに連れて行つていたゞく方もあつてよ。――私はまだ行つたこと、ありませんけれども――」
「散步にはよく行くのかい?」
「さうね、二、三日置きくらゐかしら―― 一人であちこちには
「さうかい。――少し
「えゝ…… あの…… それより、あなたの
ぎくりとなつた。
「喜いちやん」とは、
娘は半年前にチブスで世を去つた。
あれは非常に寒い冬の日であつた。何日も高熱で苦しんでゐるのを、喬子は必死になつて世話をした。
始めの頃は、見てをられない程に
自分達に他に子供は居なかつた。喜代乃にしても、一緖になつて五年目にやつと出來た娘である。產れて來た時は、自分も
田舎から自分の母に出て來て
病院に入れたのは、
仕事も少し落着いて
「
「
「――あゝ、さうだね」
「今日は一緖には來なかつたのね?……」
「――まあね……」
「學校がありますものね。それに…… それに、――こんなところ……、連れて來たら、きつと怖がるでせうね?」
「――うむ。まあ、どうだらうね……」
其から
「あなた……」
「うん?」
さう云ひさして、
「――どうしたね?」
「あなた――」と突然に
「今日は、もうおかへりになつて――」
「……ん? どうしたね?」
「支度がありますの。だから、あなたはおかへりになつて」
「
「それでも……」
「
「
「出掛けるつて、
「御嫁に行くのです。極まつてゐるわ」
さも
茶を
目頭が熱くなり、
花〻は、ぼつてりした肉厚の
自分には、
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